選挙を知ろう
【世界選挙紀行】イギリス②
選挙がやってくる!ヤァヤァヤァ!
- 白鳥浩さん
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法政大学大学院教授。「現代政治分析研究」担当。2015年1年間、研究のためイギリス滞在。
午後の訪問者
あるうららかな日の午後、私は自宅のフラットで午後の紅茶を独りでたのしみながらくつろいでいた。英国は、世界的な紅茶メーカーも多く、種類も豊富である。ひとりで過ごす私の密かなたのしみは、多様な紅茶の味比べをすることであった。すると、「ピンポーン!」ドアのチャイムが鳴った。「この平和な時間を乱すのは誰だろう。今日は訪問予定はないはず…?」
ドアを開けると、そこには見知らぬ美しい若い金髪の女性。後ろには、何人かの若者が立っている。「はて?郵便配達の人ではなさそうだけれど、なにか用だろうか?」女性は伏し目がちに話し始めた。「あの~。」
ちょ、ちょっと待ってくれ。ひょっとすると愛の告白!?シャイな彼女の告白に、親しい友人が付き合っているという感じだろうか。「私には(片思いではあるけれども)日本に残した大切な人が・・・」と、どう切り出したらよいのだろうか。
疑惑の男「エド」
そう逡巡していると、彼女のほうが口火を切った。「エドの言っていることって、すばらしいわ。」なに?この見知らぬ美女は、私だけならず、エドという男性にも想いを寄せているのだろうか。国際的な「三角関係」…何だかややこしいことになりそうだ…などと思いをめぐらせているところで、彼女は続けた。
「…だから、労働党に投票してほしいの。」
そう言うと彼女は、紙を一枚私に渡して、若者たちと去っていった。「労働党に投票しよう!」ビラの真ん中には、労働党のエド・ミリバンド党首(当時)が、こちらにむかって微笑み、選挙区の労働党の候補者の写真と名前が並んでいた。なんのことはない労働党への支持をうったえる「戸別訪問」だったのだ。
戸別訪問と「民主主義の距離」
日本では公職選挙法によって禁止されている戸別訪問だが、イギリスでは認可されている。家への訪問は、英国における政治と有権者との「距離」を示したものであろう。英国人にとって、民主主義は「近いもの」、そして政治自体も非常に「カジュアルで、普通なこと」なのだ。戸別訪問を行うのは、政党や候補者の運動員だけでなく、候補者自らも家々へと赴き、有権者と語り合う。政治家にとっても有権者のリアルな意見を聞けそうだし、有権者も親近感がわきそうだ。
戸別訪問をするミリバンド党首(当時)
多様な紅茶の風味を理解し、その中で、自分の現在の気分に最もあっている紅茶を選んでたのしむ、そんな紅茶のたのしみ方と同じように、政党を選んで投票する。そんな英国人にとって身近な政治感覚は、日本でも見習うものがあるかもしれない。
国情報
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- 国名:イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
- 首都:ロンドン
- 人口:約6411万人(2013年)
- 投票権:18歳以上
- 国王:エリザベス2世
- 首相:テリーザ・メイ
- 有名なもの:英国王室、ストーンヘンジ、紅茶、フィッシュ・アンド・チップス、ジェームズ・ボンド、シャーロック・ホームズ、ウィリアム・シェイクスピア、ビートルズ、ハリー・ポッター
(掲載されている情報は2016年7月現在の内容です)