選挙を知ろう

【世界選挙紀行】特別編・日本②
南極投票 どうやって選ぶ?

塚本健二塚本健二さん(40)

茨城県つくば市職員。第55次南極地域観測隊隊員として、2013年12月~2015年2月、南極昭和基地に滞在。

南極の候補者選び・・・

南極投票制度により、南極からでもファックスで投票できる。しかし、選挙ポスターも街頭演説もないし、選挙カーも来ない。テレビもつながっていないから、政権放送も見られない。一体どうやって、投票する人を選ぶの?

塚本さん「南極ではインターネットを使って、情報を収集します。南極投票を行う隊員は、選挙の前にあらかじめ、それぞれの選挙区の政党や候補者のウェブサイトを見ることができます。」

常時、研究データを日本へと送信しているため、インターネットの通信幅をとってしまう「動画」の視聴はできないが、政党や候補者のサイトを見ることは可能。塚本さんも、休憩時間を利用し、ニュースサイトで日本の情勢をチェックしていたという。

南極の写真

塚本さん「日本から南極の昭和基地まで、直線距離で約14,000kmも離れていますが、外国にいるという感覚はあまりありませんでした。日本の基地ですから、周りは日本人、やりとりも日本語だし、日本食も食べられる…常に、日本の一部に居るという気持ちがありました。しかし、ファックスで行う『南極投票』はなかなかできない貴重な体験でした。」

団欒

南極での食事

美味しそうな料理ばかり・・・だが、食料の補給は1年に1度、「しらせ」が来る時だけ。調理を担当する隊員が、量や栄養を計算して工夫を凝らす。曜日感覚がなくなってしまいがちなので、毎週金曜日はカレーにしたり、年越しそばなどの季節の行事を大切にすることで、メリハリをつけるのだという。周りになにもない昭和基地において、食事は隊員たちにとって大きな楽しみだ。

あなたも、いつか「南極投票」?

塚本さん「そんなことはありません。僕も3年前まで、まさか自分が南極に行くなんて思ってもいませんでした。研究者にならないと行けないというイメージを持っている人が多いのですが、隊は、観測を担当する『観測系』隊員と、生活の基盤を整える『設営系』隊員で構成されています。昭和基地での観測を続けていくためには、電気工事士、電気主任技術者、通信士、環境保全技術者、建築士、調理師、医師、その他さまざまなエンジニアなど、専門スキルを持った『設営系』隊員の支えが必要です。自分の仕事をしっかりやっていれば、南極に行くチャンスはあるはずですよ。」

実は、塚本さんは茨城県つくば市の職員だ。市庁内で、南極観測隊への参加呼びかけがあり、応募。その後、国立極地研究所へ派遣され、2013年12月から2015年の2月まで南極昭和基地で庶務・情報発信担当を務めた。帰国後は、子供たちを中心に地域の方々に南極での体験を伝えている。

南極条約と南極条約議定書により環境が保護されている南極は、いわば、地球のタイムカプセル。そのため、地球の過去と未来を知る手がかりをつかみ、地球環境の保護に役立てようと、様々な調査・研究を行っている。

南極調査の様子

南極調査の様子

塚本さん「南極には、雪と氷しかありませんが、地球の歴史や謎をひもといてくれるロマンがあります。」

もしかしたら、あなたも将来、南極で投票することになるかも…?

国情報

  • 施設名:昭和基地
  • 場所:南極
    (南極条約により、南緯60度以南の地域の領有権主張は凍結されている。そのため、南極は「国」ではない。)
  • 開設:1957年1月
  • 気温:年平均気温: -10.4℃
    最低気温記録: -45.3℃(1982年9月4日)
    最高気温記録: +10℃(1977年1月21日)
  • 行き方(第55次隊):オーストラリアまで飛行機。
    南極観測船「しらせ」でフリーマントル港を出港。海洋観測を行いながら、17日後、昭和基地西方約20kmの氷域へ。ヘリコプターや雪上車で、昭和基地へ。
  • 南極の有名なもの:雪、氷、隕石、オーロラ、コウテイペンギン、アデリーペンギン、ウェッデルアザラシ等

写真提供: 第55次南極地域観測隊 塚本健二隊員
取材協力: 国立極地研究所