選挙を知ろう

【世界選挙紀行】アメリカ①
大統領選を目前に、全米「投票機」に大トラブル!?

クリストファー・ファミゲッティクリストファー・ファミゲッティさん

ニューヨーク大学法学部 ブレナン司法センター研究員。選挙と投票を専門に研究。

アメリカの投票スタイルは?

アメリカでは、地域ごとに投票スタイルが異なる。日本では紙に鉛筆で書き込んで投票箱に入れるスタイルで統一されている(※)が、アメリカは50の州、何千もの行政、管轄区で、使用する投票機材がそれぞれの裁量と予算に委ねられている。

最もよく使われている機材は、「光学スキャナー」。記入したマークシート用紙を挿入すると読み込まれる。

投票にきた女性

もう一つは、「DRE(直接記録装置)」。タッチスクリーンやボタン、ダイアルを使って投票。投票データは、装置内のメモリーカードやディスクに記録される。

タッチスクリーンの投票端末

日本のように、人間の手を介した投票・開票が行われている地域は、ニューハンプシャー州やマサチューセッツ州の小さい地域など、限られているという。さすがアメリカ!と思うけれど、実は・・・。

その機械はすごく古い!!

なんとアメリカ50州のうち43州で、10年以上も前に購入された投票機材が使われているのだ!

【2016年時点で“10年以上経過”】

2016年時点で“10年以上経過”

ファミゲッティさん「15年以上前に購入した機材を使っている州が14州もあります。これらの機材が購入されることになったのは、2000年の大統領選挙の際、フロリダ州で投票・開票に大きな問題が起きたことがきっかけです。」

フロリダ州で、2人の候補者の得票差が0.5%未満の接戦となり、票の再集計が行われることになった。当時使われていた投票システムは、「パンチカード投票」。投票用紙に穴を開け、集計機械に通すシステムだ。
しかしパンチカードの穴が完全に開いていないと機械は自動的に読みこまず、再集計に手間取った。開票結果が分かるまでに長い時間を要し、最終的には法廷に持ち込まれる事態となったのだ。

再集計の様子

再集計の様子

ファミゲッティさん「この騒動を受け、アメリカ政府は古い投票機材を交換するため20億ドル(日本円にして約2,189億円)を費やしました。多くの地域が、その後2006年までに『新しい』投票機材を購入しましたが、その時の新品も、いまや年代物です。」

機材に入っているOS(オペレーションシステム)は、Windows2000やXP。両方とも、メーカーのサポート期間は終了している。部品を交換するにも型が古すぎて、インターネットのオークションで中古品を買っているという地域もある。オハイオ州アレン郡選挙管理委員会の投票機材のメモリーカードは、512キロバイトしか記録できないのに1つ$100もするという。

今、そこにある危機

実際、これらの古い投票機材には問題が起き始めている
「選んだのとは逆の候補に票が入る」、「エラー」、「シャットダウン」、・・・そして「長蛇の列」。
【※2012年の大統領選挙では約73万人の有権者が長過ぎる列が原因で投票しなかったといわれている。フロリダ州では102歳の女性が3時間以上も待たされた。】

ファミゲッティさん「この問題に対する対応は、地域に委ねられています。新しい機材を買う予算を捻出できるところと、できないところがあります。」

すぐに新しい機材を購入できない地域は、今の投票機材を使用するしかない。メンテナンスを行い、トラブルを最小限に留める予防策を講じるなどの対応が求められている。古い機材が同時に全部壊れてしまうことはないというが・・・?

※ 郵便等投票や南極投票など一部例外あり。

国情報

アメリカ合衆国
  • 国名:アメリカ合衆国
  • 首都:ワシントンD.C.
  • 人口:約3億2327万人(2016年4月)
  • 投票権:18歳以上
  • 大統領:バラク・オバマ
  • 有名なもの:ハリウッド、グランドキャニオン、シリコンバレー、ブロードウェイ、自由の女神、ハンバーガー、コーンフレーク

(掲載されている情報は2016年5月現在の内容です)

参照
・“America’s Voting Machines at Risk”  Lawrence Norden, Christopher Famighetti
・“Managing Polling Place Resources” Caltech/MIT Voting Technology Project