選挙を知ろう

【世界選挙紀行】イラン①
「一票のラブレター」

杉田淳記者杉田淳記者 報道局選挙プロジェクト

「イランの映画?見たことない‼」という人、多いかもしれませんね。
でも、イランは、国際的な映画祭で数多くの賞を取り続けている映画大国なんです。
「世界選挙紀行」にぴったりの素敵な作品を紹介します。
タイトルは、「一票のラブレター」。

ちょっと興味が湧いてきませんか?

映画「1票のラブレター」より ©Payam Films/Fabrica Cinema

イラン映画「1票のラブレター」より ©Payam Films/Fabrica Cinema

ある日、投票箱が降ってきた・・・

舞台は、イランのある離島。
議員選挙のために、島にやってきた若い女性。選挙管理を担当する役人さんだ。彼女は、島に赴任している若い男性兵士とともに、ジープで票を集めて回る。「移動投票所」ってわけだ。そのわずか一日を描いたストーリー。
投票を呼びかける彼女に、島の人たちの反応はとても冷たい。投票して何の意味がある、候補者を全然知らない・・・・教育が行き届かず、文字が読めない人もいる。
それでも、彼女は訴える。選挙の意義を、自由な一票の大切さを。

理想の前に立ちはだかる現実の壁。もがき奮闘する彼女の姿に、はじめは理解のなかった男性兵士も少しずつ距離を縮めていく。最後の投票者となった男性兵士。彼が一票に託したこととは・・・?

「投票」とは、「思いを伝えること」

映画で描かれる島は、とてもひなびた田舎です。もしかしたら、何十年も何百年も同じように暮らしてきたのかもしれません。島の人たちが、選挙に関心を持てないのは、一見、当然のように思えます。
でも、果たしてそうでしょうか。投票者の前で、銃を持って見守っている若い男性兵士。彼は何の権限で、このように威圧しているのでしょう。これでは、「自由な意思」で投票することなどできない・・・。島の人は、選挙がやって来たことによって、普段気付いていなかった「不自由な暮らし」を知るのです。

「選挙なんて関心ない」。
イランの過疎の島と同じようなセリフが、情報社会の日本でも聞かれるのは面白いと思います。

「なんで18歳になったからって、投票に行かなくてはいけないのだろう?」。
きっと、この疑問は万国共通のものなのです。だから、恥ずかしがらずに周りの友達や大人と話をしてみては?
そして、想像してみてください。自分たちの生活が、どれだけ政治によって決められているかを。

映画「1票のラブレター」より ©Payam Films/Fabrica Cinema

イラン映画「1票のラブレター」より ©Payam Films/Fabrica Cinema

この映画のタイトル、直訳すると、「秘密の投票」というようです。でも、邦題として、「一票のラブレター」とつけたところ、ふるっているし、心憎い…。

「自分が住んでいる世界が、よりよいものとなるように」。
投票とは、その思いを伝えることなんです。思いは届かないこともあるかもしれない。
それでも、へこたれてはいけない。
思いを伝えなくては、相手に届くことはたぶんないのですから。

【映画データ】
「1票のラブレター」(2001年制作)
監督:ババク・パヤミ
ヴェネチア国際映画祭監督賞受賞

国情報

イラン・イスラム共和国
  • 国名:イラン・イスラム共和国
  • 首都:テヘラン
  • 人口:約7,850万人(2014年)
  • 投票権:18歳以上
    15歳(1981年)→16歳(1999年)→15歳(2000年)→18歳(2007年)
  • 最高指導者:セイエド・アリー・ハメネイ師(1989年~)
  • 大統領:ハッサン・ローハニ(2013年~)
  • 有名なもの:イラン映画、原油、ペルセポリス、ペルシャ絨毯、ペルシャ数字、キャビア、ピスタチオ、ローズウォーター(バラ水)

(掲載されている情報は2016年5月現在の内容です)