NHK全国首長アンケート 1788人のホンネ
NHK全国首長アンケート 1788人のホンネ

NHKでは、4年に1度の統一地方選挙を前に、全国1,788人のすべての自治体トップ(知事、市区町村長=首長)を対象に、初めての大規模一斉アンケートを行いました。調査は今年1月から2月に実施し、回答率は93%でした。

人口減少や高齢化が想定を超えるスピードで進む今、私たちが暮らす街の自治体のトップはどんな課題に直面し、住民とどう向き合おうとしているのでしょうか。少子化対策やふるさと納税に象徴される自治体間の競争、人口減少や財政状況、国との関係のありかたなどについて、寄せられたホンネを掲載しました。

※調査概要の詳細は⽂末にあります
※「政令市長」は政令指定都市の市長、「市長」は政令指定都市の市長を除いた市長、「特別区長」は東京23区の区長を示します
※「大いに」と「ある程度」を合わせるなど、選択肢を足し上げる場合は実数を合計して再計算するため、単純な%の合計と一致しない場合があります

注目の記述回答

ご紹介する3問は、記述回答のうち、(1)あなたの街の⾃慢のイチオシ政策、(2)「どんな自治体間競争が激しくなっているか」(回答者=競争が「激しくなっている」と答えた⼈)、(3)「新型コロナウイルスへの対応で国や都道府県、市区町村の連携の課題や今後の教訓になった経験」(回答者=連携や情報共有が「できていない」と答えた人)です。
回答内容をそのまま掲載しています。

地方分権

地方分権一括法の施行から四半世紀近くになります。あなたの自治体では、地方分権をどの程度活用できていると考えますか。

地方分権を活用できているかどうかについては、「大いに活用できている」が3.4%、「ある程度活用できている」が63.3%で、およそ3分の2が「活用できている」と答えました。「活用できていない」と答えたのは「あまり」と「まったく」を合わせて3割あまりでした。

自治体規模別に見ますと、知事と政令市長では9割を超える大多数が「活用できている」と答えています。また、市長と特別区長では7割台半ば、町長でもおよそ6割が「活用できている」と答え、いずれも「活用できていない」を上回りました。これに対し、村長では「活用できている」と「できていない」がほぼ半々で割れ、自治体の規模によって差がみられました。

あなたは、地方分権をさらに進めるべきだと考えますか。それとも国の権限をもっと増やすべきだと考えますか。

地方分権をさらに進めるべきかどうかについては、「今のままでよい」が51.3%と半数を超え、「さらに進めるべきだ」の46.1%をやや上回りました。「国の権限をもっと増やすべきだ」は1.1%でした。

自治体規模別に見ますと、「さらに進めるべきだ」と答えたのは、政令市長では回答した20人すべての100%、知事や特別区長でも9割前後に上り、地方分権に積極的な姿勢がうかがえます。一方、市長で「さらに進めるべきだ」と答えたのはおよそ半数で、「今のままでよい」と意見が割れました。また、町村長を見ますと、「さらに進めるべきだ」は町長で4割程度、村長で3割程度と、自治体規模が小さくなるほど少なくなり、「今のままでよい」のほうが半数を超え多くなっています。

あなたは、首長として与えられている権限の大きさについてどう考えますか。

自治体トップとして与えられている権限の大きさについては「適切だ」が77.6%の多数を占めました。「小さすぎる」は19.7%、「大きすぎる」は0.6%でした。

自治体規模別に見ますと、政令市長では「小さすぎる」が65.0%と多く、「適切だ」の25.0%を上回っています。対照的に、市長、町長、村長では「適切だ」が7割から8割の多数を占め、「小さすぎる」は1割から2割台にとどまりました。知事と特別区長では「適切だ」と「小さすぎる」で意見が割れています。

自治体間競争

あなたは、今、自治体間の競争が激しくなっていると思いますか。

自治体間の競争が激しくなっているかどうか尋ねたところ、「そう思う」が42.6%、「どちらかといえばそう思う」が36.4%で、「激しくなっている」と考える自治体トップは合わせておよそ8割に上りました。

自治体規模別に見ますと、いずれも6割から9割の多数が「競争が激しくなっている」と考えています。特に特別区長では95.2%、知事や政令市長、市長でも9割前後を占め、大きな自治体ほど競争激化を強く意識している様子がうかがえます。

あなたの自治体にとって、自治体間の競争はチャンスだと思いますか。

自治体間競争がチャンスと思うか尋ねたところ、「そう思う」が16.8%、「どちらかといえばそう思う」が43.0%で、合わせて6割が「競争は自分の自治体にとってチャンスだ」と考えていることがわかりました。チャンスだとは思わないと答えたのは4割弱でした。

自治体規模別に見ますと、自治体規模が大きいほど「チャンスだと思う」割合が高い傾向があり、政令市長と特別区長では8割を超え、次に知事が7割台半ば、市長が7割で続いています。また、町長ではチャンスと思うか、思わないかで意見が割れました。一方、村長では「チャンスだと思う」がおよそ4割にとどまり、「チャンスだとは思わない」と答えたおよそ6割が上回りました。

あなたは、政策決定に際し、ほかの自治体の事例をどの程度参考にしていますか。

「政策決定の際にほかの自治体の事例を参考にする」と答えた割合は、「大いに参考にしている」の11.8%と「ある程度参考にしている」の72.6%を合わせて8割を超えました。

自治体規模別に見ますと、いずれも8割から9割が「参考にしている」と答え、政令市長では95.0%に上りました。

あなたの自治体で行っている移住促進策は、どの程度成果を上げていますか。

移住促進策が成果を上げているかどうか聞いたところ、「大いに上げている」の5.2%と「ある程度上げている」の56.4%を合わせて「上げている」が6割を超え、「あまり」と「まったく」を合わせた「上げていない」のおよそ3割を上回りました。そもそも「移住促進策は行っていない」と答えたのは6.7%でした。

自治体規模別に見ますと、成果を上げていると答えたのは、知事で9割を超えて特に高く、政令市長では75.0%を占めました。また、市長、町長、村長も6割前後が成果を上げていると答え、いずれも「上げていない」を上回っています。特別区長では「上げている」が3割弱だった一方、71.4%が「移住促進策は行っていない」と答えました。

あなたは、あなたの自治体の人口減少に歯止めをかけられる自信がありますか。

自治体の人口減少に歯止めをかける「自信がある」と答えたのは、「とても自信がある」の3.8%と「ある程度自信がある」の47.3%を合わせて51.1%で、「あまり」と「まったく」を合わせた「自信はない」の43.3%をやや上回りました。「すでに歯止めをかけられている」は2.0%でした。

自治体規模別に見ますと、「自信がある」の割合は、特別区長で8割台半ばと特に高く、政令市長では8割、知事と市長では6割台で、いずれも「自信はない」を上回っています。一方、町長と村長では、「自信はない」のほうが半数を超えました。「すでに歯止めをかけられている」は、特別区長で9.5%、政令市長で5.0%でした。

「ふるさと納税」の制度は、あなたの自治体にとってプラスとマイナスどちらの影響が大きいですか。

「ふるさと納税」制度は自治体にとって「プラスの影響が大きい」と答えたのは69.1%で、「マイナスの影響が大きい」の15.0%を上回りました。「どちらともえいない」は15.4%でした。

ふるさと納税のマイナスの影響を指摘するのは都市部で目立ち、特別区長では95.2%、政令市長で55.0%に上っています。特別区では、回答した21人のうち、「プラスの影響」と答えた人は1人もいませんでした。対照的に、規模の小さい自治体では「プラスの影響」の割合が高く、市長と町長では7割前後、村長ではおよそ8割に上っていて、制度の受け止めは大きく分かれています。

財政

あなたの自治体の財源は十分ありますか。

自治体の財源が十分あるかという問いかけに対し、「十分だ」と答えたのはわずか0.8%で、「どちらかといえば十分だ」の11.5%を合わせても、「十分だ」は12.3%にとどまりました。一方、「どちらかといえば不十分だ」は46.0%、「不十分だ」は40.6%で「不十分だ」が合わせて8割台後半に上っています。

「不十分だ」という回答は、自治体規模にかかわらず7割から9割に上り、財政状況に対する厳しい認識は共通しています。知事では回答した46人のうち「十分だ」と答えた人は1人もいませんでした。

あなたは、あなたの自治体の将来の財政について、どの程度危機感を持っていますか。

将来の自治体の財政について危機感を「強く持っている」と答えたのは55.7%と半数を超え、「ある程度持っている」の42.3%を合わせると、98.0%とほとんどの自治体トップが危機感を抱いているという結果となりました。

自治体規模別に見ても、「危機感を持っている」の割合はいずれも9割を超えています。

インフラ

国から「補修が必要」とされているにも関わらず、予算不足などのため補修が進んでいない橋やトンネルなどのインフラが全国に多くあることがわかっています。あなたの自治体では、老朽化が進むインフラを維持するための予算の確保に不安がありますか。ありませんか。

老朽化が進むインフラ維持の予算確保については、50.7%が「非常に不安がある」と訴え、「やや不安がある」の42.5%を合わせると9割を超える自治体トップが不安があると答えました。

自治体規模別に見ますと、「非常に不安」と答えたのは、知事と政令市長では15%程度にとどまるのに対し、特別区長ではおよそ3割、市長、町長、村長ではいずれも半数前後を占め、規模の小さな自治体のほうが不安が強いことがわかります。

「予算不足などのため補修できない橋やトンネルなどについては、一部を廃止することもやむを得ない」という考え方について、あなたはどう思いますか。

予算不足などで補修できない橋やトンネルなどは一部を廃止することも「やむを得ない」と思うかどうかについて、「そう思う」と答えた割合は10.0%、「どちらかといえばそう思う」が32.3%で合わせて4割を超える自治体トップが「廃止することもやむを得ない」と考えています。

「やむを得ない」と答えたのは、特別区長では1割程度、知事では2割程度にとどまるのに対し、政令市長では3割台半ば、市長、町長、村長では4割前後から5割近くに上っています。

国と自治体

新型コロナウイルスへの対応で、国や都道府県、市区町村の連携や情報共有がどの程度できていると考えますか。

新型コロナウイルスの対応で、国や都道府県、市区町村の連携や情報共有が「十分できている」と答えたのは8.5%、「ある程度できている」は74.3%で、合わせて8割超が「できている」と答えました。「できていない」と答えたのは、「あまり」と「まったく」を合わせて16.5%でした。

自治体規模別に見ますと、いずれも「できている」が7割台後半から9割の多数に上っています。このうち「十分できている」が特に多かったのは、政令市長の35.0%、知事の23.9%でした。

【知事】国から都道府県に権限を移したほうがよいと考えるものがありますか。
【市区町村長】国から市町村(特別区を含む)に権限を移したほうがよいと考えるものがありますか。

国から自治体に移すべき権限があるかどうか聞いたところ、「ある」と答えたのは知事と特別区長で7割を超え特に多く、政令市長も65.0%に上りました。一方、市長は3割弱、町長では2割弱、村長は1割程度と、自治体規模が小さくなるにしたがって少なくなっています。

地方自治体の権限のうち、国に移したほうがよいと考えるものがありますか。

自治体の権限で国に移したほうがよいものがあるかどうか尋ねたところ、「ある」は11.2%にとどまり、「特にない」が84.9%と多数を占めました。

都道府県と市区町村

【知事と市区町村長(政令市長を除く)】都道府県から市町村(特別区を含む)に権限を移したほうがよいと考えるものがありますか。

都道府県から市区町村に移すべき権限が「ある」と答えたのは、権限を移す側の知事で69.6%に上りました。一方、権限を移される側の市区町村長について見ますと、特別区長では「ある」が90.5%と高い割合だった一方、市長では3割弱、町長と村長では1割台半ばにとどまっています。

【知事・政令市長】都道府県と政令市の権限の重複で、是正すべきものがあると考えますか。

都道府県と政令指定市の権限の重複で是正すべきものがあるか聞いたところ、知事では「ある」が6.5%、政令市長は45.0%でした。

デジタル

あなたの自治体にとって、デジタル化は、費用対効果の面からどの程度有効だと考えますか。

費用対効果の面から見て、デジタル化が自治体にとって有効だと思うかどうか聞いたところ、「非常に有効だ」が26.6%、「ある程度有効だ」が59.6%で、合わせて86.2%の多数が「有効だ」と答えました。

いずれの自治体も「有効だ」と答えた割合が多数に上り、政令市長では回答した20人全員が「有効だ」と答えています。ただ、有効性を感じる程度は自治体規模で差があり、「非常に有効だ」と答えたのは、知事と政令市長で7割を超えた一方、特別区長ではおよそ5割、市長では3割余り、町長と村長では1割台にとどまっています。

あなたは、SNSで寄せられる市民の意見を、どの程度気にかけていますか。好意的なもの、批判的なものも含めてお答えください。

SNSで寄せられる市民の意見について「大いに気にかけている」と答えたのが19.2%、「ある程度気にかけている」が62.7%で合わせて8割を超える多数の自治体トップが「気にかけている」と答えました。

自治体規模別に見ると、いずれも「大いに」と「ある程度」を合わせた「気にかけている」の割合が7割から9割の多数に上りますが、このうち「大いに気にかけている」については特別区長が38.1%であるのに対し、知事、政令市長、市長では2割台半ば、町長と村長では1割台と、差が見られました。特別区長では、「大いに気にかけている」と「ある程度」を合わせて95.2%が「気にかけている」と答えています。

住民

あなたの自治体の住民は、行政にどの程度関心があると思いますか。

自分の自治体の住民が行政に関心があると思うか聞いたところ、「大いに関心がある」が8.5%、「ある程度関心がある」が78.8%で、「関心がある」と答えたのは合わせて9割近くでした。

自治体規模別に見ても、「関心がある」はいずれも8割台半ばから9割台半ばの高い割合となっています。このうち政令市長では「大いに関心がある」の割合が30.0%と高く、「ある程度」と合わせて95.0%が関心があると答えました。

あなたの自治体で、住民投票で決めたほうがよいと思う課題はありますか。

自分の自治体で住民投票で決めたほうがよいと思う課題が「ある」と答えたのは4.4%で、「特にない」が93.1%の大多数を占めました。

自治体規模別に見ても、いずれも9割前後が「特にない」と答えています。特別区長は「ある」が9.5%でほかに比べてやや高くなっています。

その他

あなたの自治体では、現在、宿泊税や別荘税といった独自の「法定外税」を導入していますか。

宿泊税や別荘税といった独自の法定外税の導入の有無については、「導入している」が3.8%、「導入する具体的予定がある」が0.4%、「導入を検討している」が2.3%でいずれも少数にとどまりました。

自治体規模別に見ますと、知事では「導入している」が69.6%、政令市長では15.0%でしたが、そのほかは1割未満でした。「導入を検討している」と答えたのは政令市長では15.0%でしたが、そのほかでは数%にとどまりました。

あなたは、首長の専決処分の権限の範囲について、どのように考えていますか。

専決処分の権限の範囲についての意見を聞いたところ、「広げるべき」と答えたのは11.7%で、「今のままでよい」が85.5%を占めました。「狭めるべき」は1.1%で、「専決処分は必要はない」は0.2%でした。

自治体規模別に見ますと、「今のままでよい」はいずれも8割以上を占め、特別区長では回答した21人全員の100%でした。「広げるべき」の割合は、市長、町長、村長では、1割程度でしたが、知事、政令市長、特別区長では1人もいませんでした。

調査概要

期間 2023年1月~2月
方法 WEB・郵送
対象 全国すべての知事、政令市長、市長、
町長、村長、特別区長1,788人

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回答率 全体 知事 政令市長 市長 町長 村長 特別区長
全体(人) 1788 47 20 772 743 183 23
回答数(人) 1664 46 20 708 698 171 21
回答率(%) 93.1 97.9 100.0 91.7 93.9 93.4 91.3

〔サンプル構成〕

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全体 知事 政令市長 市長 町長 村長 特別区長
構成比(%) 100.0 2.8 1.2 42.5 41.9 10.3 1.3

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年代 全体 30代 40代 50代 60代 70代 80代
以上
無回答
構成比(%) 100.0 0.8 7.9 17.9 45.7 26.2 1.3 0.1

※肩書き・年代はいずれも回答時のもの
※「特別区長」は東京23区の区長、「政令市長」は政令指定都市の市長、「市長」は政令指定都市の市長を除いた市長を示す