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【多賀城】2022年10月25日放送

スマホ利用の高齢者が急増
多賀城の社会実験

多賀城市では最近、スマートフォン操作を必死で覚えようとする高齢者が増えています。市が始めた社会実験が関係しているそうですが、どういう実験なのか徳本絵夢記者が取材しました。

《市役所がまるで携帯会社の店舗?》
10月中旬、記者が多賀城市役所を訪ねると、市の職員からスマホの使い方を教わっている高齢者の姿がありました。

〈職員〉
「名前と住所を入力します。画像のデータが届くのでそれを保存してもらって」
〈高齢者の女性〉
「(メールが)来たら保存というところを押せば大丈夫ですね?」

それは携帯電話会社の店舗で見るような光景でしたが、市役所には10月に入ってこうした高齢者が多い日に20人近くも訪れるそうです。

《スマホ操作でバス代が無料に!》
高齢者たちのスマホ意欲を駆り立てるのは、多賀城市が10月から始めた社会実験にありました。多賀城市内に住む65歳以上の高齢者と障害のある人は、なんとスマホ操作ができればバス運賃が無料になるという実験でした。実験の開始から20日間で850件の利用申請が寄せられていました。バス代が無料になるのは多賀城東部線と多賀城西部線の2つの路線です。なぜこのような実験を始めたのか、多賀城市の担当者に話きました。

《外出機会を増やしデジタル社会の恩恵を》
多賀城市都市産業部 阿部克敏次長
「スマホを使うことで行動範囲を広げてもらい、デジタル社会の恩恵も受けてもらえればと思って始めました。これをきっかけにスマホに切り替える高齢者もいて喜ばしく思っています」

《手続きもスマホで》
実験に参加するにはスマートフォンを使って専用のサイトから申し込む必要があります。市による審査の後、メールで届いた「無料証明書」の画像データを自分でスマホ画面に表示させ、バスを降りる際に運転手に提示します。実験期間は3年間の予定で、利用を続けるには半年ごとにスマートフォンでアンケートに答える必要があります。

《スマホを購入した人も…》
今回の実験を機にスマートフォンを新たに購入した人もいました。バスをよく利用するという80代の女性はバス代が無料になって助かっていると話し、取材した日もスマホの使い方を学ぶ教室に通うためバスを利用していました。

〈83歳の女性〉
「家の固定電話で間に合うと思っていましたが、スマホを購入しました。図書館に通うためによくバスを利用しますが、往復でも500~700円かかるので無料になって助かっています」

多賀城市では実験の成果などを調査して、今後のデジタルを活用して施策に生かしたいとしています。今回、取材でお会いした皆さんは新しいことにチャレンジしようという意欲にあふれる人ばかりでした。
デジタル社会の到来で受けられる行政サービスもスマートフォンを使える人と使えない人とで差が出てしまうことに少し不安も感じますが、こうした実験がその差を少しでも埋めるきっかけになればと願っています。
阿部克敏次長は「市でもできるかぎり手厚くサポートしたいのでこの機会にスマホに興味をもってもらいさらに楽しい人生を送ってほしい」と話していました。


【取材:徳本絵夢 記者】