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【大衡村】2022年10月27日放送

大衡村の新しい土産物“村じまん”

宮城県唯一の村、大衡村に産官学の力を結集した新しい土産物が誕生しました。その名も「村じまん」。どんな土産なのか、徳本絵夢記者が取材しました。

その土産をつくったのは、大衡村でせんべいを製造する会社です。64年間、せんべい一筋にこだわり、関東地方にも出荷しています。

店を一代で築いた櫻井信治社長(82)は米どころ、大衡村を自慢できる特産品が作れないかと村から依頼されました。

大衡村は米作りが盛んな地域ですが、地元の土産は地酒しかありませんでした。村を訪れる人に大衡村ならではの土産物を持ち帰って欲しい。そして、村に増えている企業の従業員に出張で地元の土産を渡して欲しい。「村じまん」はそんな思いからつくられました。

櫻井社長「今、お米が余って 困っていると聞いている。残り少ない人生を村のために役に立てられたらこんなに幸せなことはないと 思って引き受けました」

若い世代にも愛される土産にしたいと開発には、県内の大学生も参加しました。学生たちから若者が好む味やパッケージなどをアンケートで回答してもらい商品開発のヒントにしました。

何度も試作を重ね、完成したのがこちらのせんべいです。大衡村産「ひとめぼれ」を100%使用し、しょうゆも海苔も宮城県産にこだわりました。

パッケージにもこだわりました。表面には村のかたちを表現し、裏面には海外の観光客にもアピールしようと英語で村の紹介などを掲載しました。

この「村じまん」をきっかけに新たな縁も生まれています。栗原市出身で23歳の三塚裕貴さんは、せんべいの開発に携わった大学のゼミ生でしたが、現在、櫻井さんのもとで働いています。ゼミの教授から櫻井社長が店の後継者を探しているという話を聞いて弟子入りを志願したのです。

三塚さん「社長が村おこしに取り組んでいるという話を聞き自分も関われたらうれしいと思いました。大変ですが、せんべい作りにやりがいを感じています」

せんべいの製造工場は毎朝7時から稼働します。夏には室温が50度にも上がる過酷な現場です。櫻井社長は、三塚さんに夏場にアルバイトで働いてもらい厳しい仕事に耐えられるか確認しました。というのは、これまでも夏場のアルバイトの厳しさでやめる人がいたからです。三塚さんは1か月のアルバイトを終えた翌日に、母親と一緒に社長のもとをたずね「続けて働きたい」と申し出ました。三塚さんの強い決意と、真面目にせんべいと向き合う姿が櫻井社長はうれしかったといいます。

櫻井社長「感無量で あんなうれしいことは最近なかった。三塚くんが入ってくれたし、“村じまん”を作り続けるためにももっと会社を 大きくしなければと思っています」

春には大衡村に移り住んだ三塚さんは10月、正社員として採用されました。毎朝早起きして夕方までせんべい作りに取り組み、現在は味付けも任されています。

三塚さん 「まずは会社がこれまで積み上げてきたものを自分が継いでいけるようになりたい。『村じまん』以外にも自分なりに村のためになるせんべいを作って大衡村をPRできたらいい」

櫻井社長 「せんべい作りには 季節に応じて 生地の状態を見極める必要があり、三塚くんがそこまでたどり着けるにはまだ時間がかかると思いますが1枚1枚気持ちを込めてつくり続けて欲しい」

村に誕生した新しい土産とそこから生まれた新たな縁。このせんべいが大衡村をPRするまさに”村じまん”になって欲しいと思います。


【取材:徳本絵夢 記者】