2021年6月11日放送
「もっと市民と考える“あの日”朗読会」
NHK仙台では2020年2月から、あなたの東日本大震災の経験を教えてほしいと、問いかけてきました。これまでに寄せられた投稿は1300件以上。私たちは、それらを3冊の本にまとめました。感じたこと。大切な気づき。ひとつひとつの投稿に、思いが詰まっていました。今回、投稿を寄せてくれた方がそれぞれのあの日を語りあう朗読会を開きました。ピアノの即興演奏とともに寄せられた投稿も朗読で紹介します。
- 秩父英里さん
- なおさん
- メタボなおじさんさん
- かんちゃんさん
- 星力丸さん
- 霜ばしらさん
- キキさん
- みっちーさん
- テトママさん
- 関美穂子さん
-
谷本奈々
ディレクター -
森田茉里恵
アナウンサー -
津田喜章
アナウンサー
あの日からの広がり
(津田)テトママさんはいかがですか? 何かご自身の中で違いは生まれましたか?
(テトママ)違いというより広がりかな、というふうに感じる場面が増えました。
(津田)広がり。
(テトママ)はい。実際に福島の方々とかが広島に、放射能のその後の対応の仕方を学びにたくさん来られました。役所の方も医療関係の方も、被ばくに立ち向かうとか廃墟にされてしまった町から立ち上がるという思いは一緒で、気持ちが変わったというよりも本当に頑張ろうって思う人が増えたと思いました。
(津田)広がったというのはいい表現ですね。どうもね、何か変化ありましたかって言われるとなきゃいけないんじゃないかと思うけど。
(テトママ)「何も変わらない」って先ほど力丸さんがおっしゃられて。「自分のことで精一杯」って。それは何も恥ずかしいことでも情けないことでもないです。自分のことで精一杯の先に、隣の人のこともっていつか見えてくるし、と思っています。
(森田)広がったっていうのに私今すごく共感したことがあって。個人的なことになるんですが、私小学生小学6 年生のときに父親を亡くしていて、それが突然だったんですね。普通に行ってきますって言って、次見たときは病気で死んだ状態で会って。震災の体験はしていないので揺れの怖さとか避難所の大変さとかは分からないんですけれども、愛する家族とか大切な人が一瞬にしていなくなってしまう、家族を失う大変さ、つらさということだけは、そこだけは分かるんじゃないかなって。ある一点で通じ合える気がする。すごいそう思ったんですよ。星さんのお話聞いていても、遺体と対面したときすごいおつらい気持ちだったのかなとか、勝手に共感しているんですけれども、そういうのってどうですか?
(星)父の遺体を見ていたときはですね、つらすぎて涙出なかったですね。辛さがもう体とか頭とか考えのところをばーんと突き抜けちゃって。いきなり父親がいなくなったって仰られてたじゃないですか。自分も確かにそうで、さよならを言う間もなかったので。だからやはり大事な人がいきなりいなくなるというようなところの悲しさとか、苦しみであったりということを分かっていただける方がいらっしゃるというのは、自分自身はとてもうれしいです。
(森田)今星さんに「そういうのを分かってくれてうれしいです」って言っていただけたのが私もうれしかったです。すごく個人的な話で、勝手に共感するとか、何となく気持ちが分かる気がすると言ってしまっていいのかなという遠慮とかがすごくあったので、そういうのを口にしていいんだなというか、そう思いました。
この日の対話を記録したグラフィックレコーディング。
感じたことを1本の線で自由に表現しました。
(関)変化ではなく広がりじゃないか、みたいな話があったときに、少しずつ少しずつ広がって、なんか広がったら「あっ」てちょっと気づいたりとかすごく共感したので、ここはこういう絵を描いて記録しておきたいなと思って描きました。
(かんちゃん)ここが3.11 の日。でこの辺が今っていう感じで。気持ちの受け皿が十年たって広がっているていうふうに感じたので。
(なお)この会に参加させていただいて、芽がでた今の私の気持ちで誰かにつながっていったらいいなと思ってぴょろぴょろっと。
(霜ばしら)これ、たき火を囲んでいる人みたいなのを描きたかったんですけど、別に熱いと思って目をつぶってもいいんだなと。ただそこには同じくたき火の方向を見ている人がいて変わらないのだって全然いい方向につながるし。
(星)いずれ輝かないといけないだろうと思って。やっぱりいまは自分のことで手一杯ですから、他人に何かをしてあげれるようになれたらいいかなと思って。でも今自分のことで手一杯だということを認めてくださった方が今日たくさんいらっしゃったから、それがとてもうれしかったし、名前のまんまですけど、とりあえず星になります。