宮城の子育て"無償化"広がる《医療費・学校給食費・保育料》

何かとお金の心配がつきない日本の子育て。子どもの医療費や学校の給食費、保育所の料金がかからないとすれば、大きな安心につながります。宮城県内の市町村では、今、こうした費用を独自に無償化する動きが広がっています。

(仙台放送局記者 井手上洋子・杉本織江)


【どうなっている?各市町村の状況】

NHKはことし3月、県内35市町村にアンケートを行いました。この中で以下の3点について、保護者の負担をなくす「無償化」の制度があるか尋ねました。

▼子どもの医療費 
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まず「医療費の無償化」の結果です。「オレンジ色」は所得制限を設けず、子どもが18歳になる年度まで医療費を無償化する自治体。仙台市と白石市を除く、33の市町村が、子どもが18歳になる年度まで医療費の無償化をすると回答しました。このうち塩釜市と富谷市はことし10月から実施します。白石市は中学校卒業まで医療費が無料です。

仙台市は4月から新たに所得制限を撤廃して小学校入学までの医療費を無料にしました。小学生から中学生までは初診に限り、500円の負担があります。

無償化の理由について自由記述で尋ねました。

「子育て世帯の経済的負担を減らすため」(石巻市・白石市・東松島市など多数)
「人口が減少するなか、移住定住を促進するため」(松島町)


▼給食費 

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続いて「公立小中学校の給食費無償化」の結果です。所得制限を設けない「完全無償化」を実施しているのが「オレンジ色」。栗原市や富谷市など7市町が新年度からスタートさせたほか、昨年度までに無償化していた大郷町、七ヶ宿町、大衡村をあわせると県内10の市町村で給食費が無料になりました。
一部の学校や学年、保護者の所得など、条件付きで無償化する4つの自治体は「黄色」で示しました。このほかは、現時点で「無償化しない」と回答しました。

公立小中学校を所得制限のない「完全無償化」する10市町村
  
○新年度から実施       
気仙沼市・栗原市・富谷市・丸森町・川崎町・大和町・南三陸町

○昨年度以前から実施
大郷町・七ヶ宿町・大衡村

条件付きで無償化する4市町

名取市(公立中学校のみ)
角田市(公立小中学校に通う第2子以降)
利府町(小6と中3のみ)
山元町(公立小中学校に通う第2子以降)

学校給食費無償化の理由です。

「物価高騰に対して、小中学生を育てる家庭を等しく支援するため」(丸森町)
「コロナで家計が苦しい世帯も多いなか、子育て世帯の負担軽減のため」(川崎町)


 ▼0~2歳児の保育料 

最後に「0~2歳児の保育料無償化」です。認可保育所や認定こども園の利用料は、国の制度で、3~5歳のすべての子どもと、0~2歳の住民税非課税世帯などの子どもが無償化されています。今回は、0~2歳児で、国の無償化の対象ではない子どもについて、市町村が独自に無償化しているかどうかを尋ねました。

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七ヶ宿町は7年前からすべての子どもを対象に保育料を無料にしています。
子どもの数や保護者の所得など一定の条件のもとで独自の無償化制度があるのは、新年度から始めた気仙沼市、角田市など6つの市と町でした。

すべての子どもの保育料無償化
七ヶ宿町

一定の条件をつけて0~2歳児の保育料無償化
○新年度から実施  
気仙沼市・角田市

○昨年度以前から実施
栗原市・白石市・丸森町・村田町


【無償化したい!でも・・・市町村の苦悩】

多くの市町村が独自の無償化に乗り出していますが、一足飛びには進められない事情もあるようです。医療費に加え、新年度から小中学校の給食費と、0~2歳児の第2子以降の保育料も所得制限なしで独自に無償化した気仙沼市を訪ねました。

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保育所を利用する保護者からは、無償化を歓迎する声が聞かれました。

「きょうだいがいると、何かと必要なものも多いので、とても助かります。子どもの習い事とか、必要なものに還元できればと思います」
「金銭面と、子どもがいても働きやすい社会。それがあると『もう1人』っていうのも考えやすいのかなと思います」

気仙沼市が独自の支援に踏み切った背景にあるのは、深刻な人口減少です。この10年ほど、年間およそ1000人のペースで減り続けています。合計特殊出生率は、2021年の市の推計で1.08。全国平均の1.30を大きく下回り、少子化対策は待ったなしの課題なのです。

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新年度、保育料と給食費の新たな無償化にかかる費用は概算で2億7000万円。厳しい財政状況の中、毎年毎年やりくりするのは簡単ではないといいます。そこで市が目を付けたのが「ふるさと納税」。返礼品の種類を増やして寄付の増加に力を入れ、集まったお金で基金をつくり、今後10年間の給食費などにあてようというのです。長く続けられるか課題は残りますが、早く始めることを優先しました。

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気仙沼市 けせんぬま創生戦略室 赤坂勇磨室長
「独自で財源をつけるのが 本当は望ましいと思いますが、なかなかそのような状況ではなかったので、ふるさと納税の寄付を活用し、全国から支援をいただきながら、何とかという形です」


【市町村が「消耗戦」これでいいの?】

財源に限りがあるなか、歯止めがかからない人口減少になんとか手を打とうと苦戦する気仙沼市。アンケートからは、同じような状況にある市町村の間で「競争」ともいえる状況が生まれていることも見えてきました。

医療費を無償化した理由についてー
「近隣の自治体が無償化を行う流れがあったため」(登米市)
「周りに遅れを取りたくなかった」(利府町)
「町民の負担を減らすことで移住者などを増やす狙いがある」(大郷町)

ふるさと納税を活用して支援拡大に踏み切った気仙沼市の菅原茂市長は、このように話していました。

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気仙沼市 菅原茂市長
「似たような境遇にある町がやっているのなら、同じくらいはやらなくちゃいけない。財源が乏しい中で、自治体がある意味、『消耗戦』を強いられていた。住む場所によって格差が出るということは、やはり公平ではないと思う。本来は国が責任を持って、日本のどこに生まれようと、同じような環境で育てるようにすべきだと思う」


【持続可能な子育て支援へ】

基本的な子育て支援策は、市町村まかせではなく、国が一括して行ってほしいという意見は、アンケートでも複数の自治体から出ていました。
専門家は「自治体によって財政状況は違うので少子化対策は国レベルで行うべきだ」と指摘しています。

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宮城教育大学 佐藤哲也教授
「子育て世帯の流入があまり期待できないなか、地方自治体にとっては住民サービスの改善が成長のカギになる。子どもを地域で育てていくためのひとつの取り組みとして無償化をとらえてほしい。子どもも保護者も幸せになる支援を行政に期待したい」

 


【取材後記】
物価の高止まりが続く中で、育ち盛りの子どもがいる世帯などは、食費や光熱費をはじめ、
家計の負担が大きく増えています。今回、アンケートで聞いた「医療費」や「給食費」「保育料」は多くの子育て世帯にとって欠かせない費用です。どの地域で生まれても、安心して子どもを産み育てられる環境の整備が求められていると思います。


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仙台放送局記者
井手上洋子
福島局・首都圏局などをへて
去年8月から仙台市政担当



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仙台放送局記者
杉本織江
仙台局・バンコク駐在などをへて
2019年から再び仙台局