仙台 子育て支援がママ・パパの新たなキャリアに!? 岩野吉樹アナが取材

 仙台市の「子育て支援のための事業」が、出産・転居・育児などでキャリアを中断したママ・パパが再び仕事や活動を始めるきっかけにもなっている!という話を聞き、取材しました。

2月下旬。まず訪ねたのは、仙台市太白区の西多賀児童館で開かれたフォトカレンダーづくりの講座。

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(成田由香里さん)

教えているのは、県内各地でアルバムづくりに関する講座を開いている成田由香里さん。
大手写真関連機器メーカーの「アルバム大使」で、仙台市の「子育て支援活動サポーター」でもあります。
この「子育て支援活動サポーター」というのが、今回の取材テーマ!
仙台市泉区の子育て支援施設「のびすく泉中央」が行っている事業です。

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(のびすく泉中央)

子どもたちが自由に遊べる広場や、子育て支援に関する勉強会などを開いている「のびすく」。
仙台市内各区に1か所ずつあります。その中の1つ「のびすく泉中央」には、幼稚園や児童館などから、「イベントで講座やパフォーマンスができる人を紹介してほしい」という問い合わせが、多い時で年に70件ほどあるそうです。そこで始めたのが「子育て支援活動サポーターズバンク」。
子育て支援に生きるスキルを持ち、幼稚園などでの活動に協力してくれる市民に登録してもらい、ニーズに合わせて紹介する事業です。

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いまでは道化師パフォーマンスや手遊び、絵本の読み聞かせや歌、親子でできるフラダンスやヨガ、防災や子供のための靴選び講座…などなど様々なスキルを持った個人や団体が57組登録していて、(2023年2月末現在)児童館などから相談があると、「のびすく泉中央」が内容に適した人を選んで紹介しています。
年に1回、児童館や保育所などの担当者を招き、直接パフォーマンスを披露したり名刺交換したりする「見本市」も開くなど、この制度に力を入れている「のびすく泉中央」。館長の小川ゆみさんです。

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(のびすく泉中央 小川ゆみ館長)

「幼稚園や保育園などは予算も人員も限られ、イベントなどをやりたいけれど準備時間もない。
そのため、様々なスキルを持つ外部人材のニーズが高い」と、小川さんは話します。
実際、児童館などのイベントに参加した際の謝礼は、実費程度。実質ボランティアです。
私が「それでもなぜこんなに多彩な人材が登録し、活動しているんですか?」と尋ねると、もともと子育て支援活動をしているNPOのほか、出産や子育てを機に仕事やキャリアを中断した人が、「自分にできることで社会に貢献したい、活動の場が欲しい」と登録するケースも多いのだそうです。
小川さんは「子どもや教育施設にとっては得難い機会になる一方、出演者にとっては活動の場が得られる。ウィンウィンの関係になっている」と話しています。


さらに取材を続けると、このサポーターズバンクへの登録をきっかけに、キャリアや活動をどんどんと広げている方もいる、ということがわかりました。

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(満園依李さん)

満園依李さんです。仙台市を拠点に、バレエを基にしたエクササイズ「バレトン」を教えています。
いまはオンラインも含めてほぼ毎日、レッスンを開いている満園さんですが、サポーターズバンクに登録する前は、子育てに追われて仕事ができず、悩み、「社会と断絶されたような気分」だったと言います。

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夫の転勤にともない、8年前に神奈川から仙台に転居してきた満園さん。2人目の出産直後でした。
「友達もいない、土地勘もない。毎日のように『のびすく』で子供を遊ばせながら、スタッフに悩みを聞いてもらっていた」と当時を振り返ります。
のびすくに通うなかでサポーターズバンクのことを知り、「見本市」を見学した満園さんは、生き生きと活動する先輩サポーターの姿に感銘を受けたと言います。
そして、自分も何かしたいという気持ちが高まり、産後取り組んできた「バレトン」で登録。
見本市で披露すると、多くの施設から問い合わせが相次いだそうです。
サポーターとして活動するにつれて“親世代のファン”が増え、「大人向けレッスン」を有料で開始するようになりました。さらに!

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仲間と共にNPO法人を立ち上げ、自身の経験をもとに「転居に伴う仙台ビギナーズ」「子育て中」の親を対象にした冊子を制作したり、イベントを開いたりするなど活動を広げています。

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「バレトン」のレッスンの最後は、必ず参加者と車座になり、「今ちょっとだけ頑張っていること」を発表する時間を設けています。「子育てに追われると頑張ることが当たり前になるから、気持ちが追い込まれてしまうんだと気づいたんです。だから、せめてこの場では、その頑張りをお互いに褒めあうことにしているんです」と笑顔で話す満園さん。自身も「サポーターズバンク・活動見本市をきっかけにいろんな人とつながり、いまの活動ができている。こうした縁をもらえたことにとても感謝している。
今は社会と断絶されているなんてまったく思わない」と話していました。

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(「見本市」で交流するサポーターと幼稚園などの担当者)

「のびすく泉中央」によると、いまでは個人で直接児童館などとやり取りして、活動を広げる人も増えている一方で、「私もなにかやりたい!」という新たな登録希望者も絶えないと言います。

ここ数年、子育てをする親の孤立に関するニュースをNHKでも報じています。
(NHKホームページ「#これからの育児」)
 
「サポーターズバンク」を通し、近所の児童館などで楽しいイベントが増えれば、子供たちにとって有益な機会になるだけでなく、引きこもりがちになってしまった親も行ってみたいと思うかもしれない。
さらに、子育てでスキルを断念した親にとっては「再び活躍する場」を持つことができるし、やがて、満園さんのように新たなキャリアを切り開くきっかけになるかもしれない…。
1人の取材者としても、父親・夫としても、大きな可能性を秘めている取り組みだと感じました。


<子育て支援サポーターズバンクの問い合わせ先>

  • 「のびすく泉中央」(仙台市地下鉄 泉中央駅前 泉図書館と同じ建物の3・4階)
  • 022-772-7341