イチオシ!"かき殻のアクセサリー"
宮城が誇る、いまが旬の海の幸…かき。
そのおいしさは多くの方が味わったことがあると思いますが、
食べ終わったあとに残る“殻”はどうなるのか…みなさんご存知でしょうか。
松島湾の漁港ではかきの出荷で大忙し。
かきむきの作業では大量の殻が出ますが、実はほとんど廃棄されています。
その殻にいま、新たな命が吹き込まれているのです。
それが“アクセサリー”です。
真ん中の白いかけらが、かきの殻。
その色や風合いを生かして、ヘアゴムやイヤリング、指輪などに生まれ変わっています。
作っているのは、七ヶ浜町に住む加藤里衣さん。
4年前から手探りでかき殻を使ったアクセサリーの制作を始め、
加工からアクセサリーに作り上げるまで、すべて1人で行っています。
殻は、塩分を抜くために煮沸や天日干しなどを繰り返し
材料として使えるまでには1年ほどもかかります。
ほかの貝殻に比べてもろいというかきの殻。
加藤さんは1つ1つ殻の特徴を見ながら慎重に作業を進めていきます。
表面を削って磨いていくと、美しい淡い白い色が見えてきました。
加藤さんは「白くて柔らかい光がかき殻の魅力。松島の月のほのかな明かりのように、
そっと心に明かりを灯してくれるような色だ」と話します。
その後、アクセサリーにしやすいように殻を細かくして、
自然の風合いを生かしてデザインします。
「松島の美しい景色を閉じ込めたい。これを見た時に松島を思い出してもらいたい」
という思いから、かきが育った“松島”にこだわって一筆一筆描いていきます。
アクセサリー作りには、加藤さんの地域への思いが込められていました。
11年前の3月11日。
加藤さんは自宅が津波の被害を受け、およそ4年間避難生活を送りました。
「助けてくれたたくさんの人たちに恩返しをしたい。
地域の人たちを元気にしたい。自分にできることはないか」と考えていたときに
目にしたのが、大量のかきの殻でした。
ほとんどがゴミとして処分され、再利用できないか課題になっていました。
加藤さんは「かきはせっかくの宝物だから、殻にもう1度命を吹き込んで
みんなに喜んでもらえるものにしたい」と感じたといいます。
加藤さんの思いに協力する人も出てきました。
東松島市の鳴瀬地区でかき養殖を行う齋藤裕さんと阿部裕子さんは、
3年ほど前から殻を譲ってきました。
齋藤さんは「普段は処分するものだから何かの役に立ててもらえれば
かきのイメージアップにもつながる。頑張ってください」と声をかけていました。
加藤さんの手で生まれ変わったかき殻は
アクセサリーとして松島町の観光施設などでお土産として販売されています。
加藤さんのアイデアは尽きず、もっとかき殻を有効に使おうと
砕いた殻をたくさん練りこんだ皿にコースター、ペン立ても作りました。
これなら、アクセサリー作りで出た端材などどんな殻でも余すところなく使えます。
また、子どもたちにかき殻のキーホルダー作りを通して、環境について楽しく学んでもらう取り組みを行いました。
加藤さんは「より一層地域の元気につながる作品になりたい。そしていつか、
松島の魅力を伝える1つのツールのようなものになったらいい」と話していました。
再び命を吹き込まれた「かきの殻」。
加藤さんが思いを込めた手作りの品々は、
美しく優しい輝きを秘めていました。
【取材:岩間 瞳キャスター】