NHK仙台の記者が徹底取材! "えさ代高すぎ!"畜産に迫る危機

日本の牛肉や豚肉が危機に直面していること知っていますか。

理由はえさの値上がり。
日本の家畜が食べるえさの4分の3は輸入もので、この2年で価格は1.5倍に高騰しています。
コスト上昇を価格転嫁するのは難しいのが実情です。

焼き肉やすき焼き、ジンギスカン…。
私たちの食卓を彩ってきた肉料理の将来はどうなるのでしょうか。

(仙台局記者 伊藤奨)


 

牛のえさが高すぎる!

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登米市の畜産農家、佐藤健さんです。
最高級にあたるA5ランクの牛をはじめ、宮城・岩手でおよそ1万頭の牛を飼育しています。

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日高見牧場 佐藤健 社長
「牛に与える配合飼料にすごいこだわって(メーカーに)作ってもらっているので、さらりとしていくらでも食べられるような、甘い肉質の牛になっている」

いま佐藤さんを悩ませているのが、コストの7割を占めるえさ代の高騰です。
特に値上がりが激しいのが、輸入しているとうもろこしです。

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国内の家畜のえさの平均価格です。
2020年は1トンあたり6万5000円から6万7000円ほどで推移していましたが、世界的な天候不順で徐々に上昇。
そこに、ロシアによるウクライナ侵攻が追い打ちをかけ、ことし8月の時点で10万186円で、2年前の1.5倍に高騰しています。

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そこに輪をかけたのが、歴史的な円安。
新型コロナの影響で需要の回復が遅れる中、佐藤さんの法人では利益はほとんど出ていないのが実情だといいます。

日高見牧場 佐藤健 社長
「えさの一部を国産の稲わらに変えたり、子牛に与えるえさを変えたりして、コスト削減に努めているが、利益を出すのは大変」

 

農家、えさの国産化に動く

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農家の経営に重くのしかかる、えさの値上がり。
国産への切り替えを加速させる決断をした農家も出ています。
およそ170頭の羊を飼育する南三陸町のNPO法人です。

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えさとして使うのは、地元特産のわかめの「茎」。
出荷されず廃棄していたものを安く買い取ってえさにしています。

さとうみファーム 金藤克也 代表
「わかめを使ったきっかけは地域で採れるわかめの未利用部分をえさとして使うことで、羊をブランド化できないかなということで始まった。お客さんに食べてもらうと、羊独特のくせがない、ジューシーでやわらかい、おいしい肉だと言われる」

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ただ、えさの半分近くはまだ輸入したとうもろこしや牧草を使っていました。
えさの値上がりが目立ったこの春以降、輸入のえさの代わりに、県内の農家から羊のえさとして、コメや稲わらを仕入れています。
輸入したえさを使うよりも3割ほど、安く仕入れられるといいます。
来年には大豆のくずも使って、100%国産の原料のえさにしたいと考えています。

さとうみファーム 金藤克也 代表
「畜産農家にとってはえさ代の値上がりは死活問題。値上がりをきっかけに、知り合いの酪農家が事業をやめたという話も聞く。これから輸入のえさの価格がさらに上がるかもしれない。だったら国産の値段が安い原料をつかった方がいいし、安定的な調達も可能になる。消費者の人にも安心で安全なえさを使って飼育しているというアピールで商品の差別化もできる」

 

えさ用とうもろこし 国産化の動きも

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えさ用のとうもろこしの生産を目指す農家も出ています。

これまではコストで輸入に太刀打ちできず、国内の生産は進みませんでした。
しかし、輸入価格の高騰で国産が割安になったこともあり、JA全農などはことし、試験栽培を始めました。

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10月に大崎市で行われた収穫作業。
92ヘクタールに作付けられたえさ用とうもろこしは夏の大雨で小粒のものが多くなりましたが、収穫量はまずまず。
農協では出来を確認しながら、来年以降さらに規模を拡大することも検討しています。

栽培に手間や人手が比較的かからないというとうもろこし。
水田に植えることで土を肥やす効果もあるといい、コメ農家にもメリットがある取り組みとして注目されています。

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全農宮城県本部 大友良彦 本部長
「これまでえさの原料というと粗飼料含めて輸入が大半を占めていたが、えさが高騰する状況からすれば、えさのもとになるとうもろこしなども国産化をするのが大きな方向性だ。安全安心で信頼できるえさとして、地元でできたものを畜産農家が安心して利用できる仕組みを作りたい」

 

専門家“えさの国産化は日本の食料確保でも重要”

農業経済学に詳しい専門家は、国産のえさを増やすことは、世界情勢が不安定になる中、日本が安定的に食料を確保する上でも重要だと指摘しています。

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農業経済が専門 東北大学の伊藤房雄 教授
「日本の食料の供給構造が、国産と輸入、両方組み合わせてもリスクの高い、海外に依存しているのが大きい、それを改めて感じるような事態になっている。輸入の依存を低めて国産の比率を高めていき、できるだけリスクを低くする取り組みが重要だ」

 

取材を終えて

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「日本の食料自給率は低い」
学校で学んだことですが、それがどういうリスクがあるのか、今回の取材で初めて肌で感じました。生産現場では家畜のえさの国産化が進められていますが、専門家は、私たち消費者もできる限り国産の食材を買うことで国内の農家を支援していく必要があると話していました。ふだん意識することのない食卓の裏側。これからも課題を深く取材していきたいと思います。

 


itou2.jpg伊藤奨
2020年から仙台放送局(経済取材担当)

毎月29日(ニクの日)にあわせて
ステーキを食べる楽しみのため日々頑張る

 


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