2022みやぎ新春ボイス(3)感染症専門家 賀来満夫特任教授
3回目は、感染症に詳しい東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授です。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからおよそ2年。変異ウイルスの広がりや、終息の見通し、そして、これまでの経験から何を学ぶかについて尋ねました。
【オミクロン株で急拡大のおそれ】
感染症の専門家、賀来満夫特任教授。オミクロン株が急速に広がる現状に危機感を募らせています。
「宮城県でも1月中にかなり感染が広がるおそれはあると考えたほうがいいです。今週から来週にかけては、年末年始に感染した方がだんだん報告されてくると思います」
この背景には、これまでと比べものにならない感染力の強さがあると指摘します。
「オミクロン株は、これまでのデルタ株と比べかなり感染力が強いです。人から人にうつる力が2倍から4倍ぐらいあるのではないかと言われています。ワクチンでもなかなか感染を防ぐことができないことが特徴なんです。多くの人が2回のワクチン接種を受けているわけですが、抗体が下がってデルタ株によるブレークスルー感染がちょうど起こりやすい時期になります。それとワクチンの効果がほとんどないオミクロン株による感染も起こってくる。この2つの感染が重なってくる時期になるので、非常にリスクが高まっているんです」
このままでは「医療崩壊」を招くおそれがあるとして、いま一度、感染対策を徹底するよう呼びかけています。
「確かにデルタ株に比べると重症化は少ないかもしれないですが、これが、リスクが高い、特に高齢者、基礎疾患を持っている方、そういった方に感染が広がると一気に重症化することが予想されます。マスクをしっかりつけることや、手洗い、換気、3密を避ける、そういった行動をこれからも継続してしっかりと行っていただきたいと思います」
【終息の見通しは】
長引く新型コロナの影響。終息への道筋は見えているのでしょうか。
「当初私は、ことしの4月ごろになると、ブースター接種もさらに進むので、感染状況はかなり落ちついてくるんじゃないかと考えていたのですが、まったく予想外のオミクロン株が出てきました。ただ一方で、ワクチンの3回目の接種が進んできている。それから非常に効果がある飲み薬が2月ごろに使えるようになる。そうした体制が整ってくれば、秋口以降、感染がかなり収まってくる可能性もあると思います」
【100年に一度の経験から学ぶこと】
世界中の人々の暮らしを一変させた新型コロナ。100年に一度と言われるこの経験から、私たちは何を学べばいいのでしょうか。賀来特任教授は、▼ヒトの健康だけでなく、▼動物との関係や、▼環境による影響なども総合して考える「ワンヘルス」という視点が重要だと訴えています。
「今回の新型コロナウイルスはたぶん動物から感染してきたんですね。動物が持っているウイルスは、それがどんなふうに人間に感染していくのかなどはまだまだ分かっていないのです。また、温暖化によって、熱帯地方でしかはやっていなかった感染症が温帯地域でもはやってくるかもしれない。人間と動物と環境といったもの、地球上で生きとし生けるもの、すべての健康という意味での「ワンヘルス」、それをみんなで注意し学んでいく活動をこれからやっていきたいと思っています」。
感染症の研究を40年以上続けてきた賀来特任教授。今思うことを尋ねました。
「この感染症がいかに社会を分断させ、人と人を離れさせるものなのか、それを改めて今回の感染症で経験しました。必ず感染は抑えることができる。そのことをしっかりとみんなで信じて立ち向かっていくという私たちの心、気持ちが最も大切ではないかと感じています」
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伊藤 奨
平成28年入局。仙台市生まれ。
福井局を経ておととしから仙台局勤務。
現在は医療・学術・経済などを担当。