宮城の高校野球史に新たな1ページ ~仙台一高・二高・三高 初の交流戦~

「ナンバースクール3校がはじめて交流戦を実施する」と、野球部卒業生から情報が舞い込んだのは、ことし5月。仙台一高と仙台二高、そして仙台三高の野球部が、総当たりの大会を開催するというものだ。長い宮城県の歴史の中で、珍しい試みだったこともあり、当日の様子を取材した。

宮城県のナンバースクールの野球といえば、「仙台一高・二高の定期戦」を思い浮かべる人が多い。毎年5月に実施され、杜の都の伝統の一戦とも呼ばれている。定期戦の歴史は非常に長く、実に明治33年までさかのぼる。両校の応援合戦は呼び物の一つで、応援団がはかま姿で応援歌を歌いあげ、士気を高める。

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伝統は球場外でも繰り広げられる。定期戦前には生徒たちが仙台市内を練り歩いて定期戦をアピール。市内の公園では両校の応援団が試合への決意や対抗心をあわらした「げき文」を読み上げ、気勢を上げ、時に相手校へヤジを飛ばす。この時期の仙台の風物詩の一つだ。

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一高・二高の定期戦は、いわば学校同士の伝統の一戦だが、今回の交流戦は、野球部だけが集まっての対抗戦。それぞれ練習試合などは行っていたものの、3校で切磋琢磨(せっさたくま)しようと企画された。

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(仙台一高 去年春の県大会で準優勝)

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(仙台二高 75年前に甲子園でベスト4)

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(仙台三高 去年夏の宮城大会で準優勝)

交流戦当日はあいにくの雨。何とか小雨になったところで、「5イニング制、開会式はなし」という特別なレギュレーションでの開催が決定。特別に、試合前に3年生だけによるシートノックが行われた。

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3校合わせて30人以上の3年生がそれぞれのポジションに散らばってノックを受ける。一高のノックを二高が捕り、好プレーには他校からも声援が飛ぶ。どの高校にとってもこうしたノックは初めてで、選手たちの笑顔がとても印象的だった。3年生は新型コロナウイルスの影響を大きく受けた世代。かけがえのない時間となった。

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第1試合は、仙台一高 対 仙台二高。ことしの定期戦以来の対戦だった。このあとに試合を控える仙台三高もスタンドから試合を見つめていた。両チームとも3年生がメンバーの中心となった。試合は、2回裏、仙台二高は1アウト2塁1塁のチャンスで3年生の板橋選手が先制の3ランホームランを放った。

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(仙台二高 板橋央翔選手)

「夏に向け、自分の一打でチームが良い流れにのっていけばよい」という記念の試合でのホームランとなった。しかし、3回裏。雨足が強くなり、試合は中止に。結果的に予定されていた仙台三高の試合も実施できず、はじめての交流戦は幕を下ろした。幹事だった仙台二高の金森信之介監督は「なかなか自然には勝てない。幻の第一回というのも記憶に残って良いかなとポジティブに受け止めたい」と話していた。
しかし試合後には、3校で記念撮影。それぞれの主将からは、夏に向けて貴重な場になったとの声が聞かれた。

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仙台一高・岩槻翔太主将
「今まで感じたことのない雰囲気だった。本当に楽しかった気持ちが一番大きい」

仙台二高・丹野翔太主将
「ライバルとして、一緒に夏まで頑張ろうという気持ちになった」

仙台三高・藤原楽主将
「試合はできなくて悲しい気持ちもあるが、いつものノックより楽しそうに生き生きやっていて、良い雰囲気でできたと思う」

3つの高校による初の交流戦。
来年以降も長く続く、宮城の高校野球の伝統になって欲しいと強く感じた1日だった。

 

※こちらの内容は6月10日(金)放送のてれまさむねでもお伝えしました。
 NHKプラスで17日(金)午後7時まで見逃し配信しています。こちらからご覧ください。