【小野 卓哉】楽天の守護神・松井裕樹 進化への『欲』

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楽天イーグルスの守護神、松井裕樹投手。
6月9日現在、15セーブ、防御率1点台と、ここまでほぼ完璧な投球を続けている。ストレートの強さ、スライダーやフォークといった変化球の質、コントロール、どれも取材者から見ると常に高いレベルで安定していると感じる。楽天が4月から5月にかけて11連勝した際も何度も試合を締めくくるなど、首位を争うチームの立役者の一人。その好調の要因などについてインタビューした。

【「特段良い、悪いというのがないことが、いいこと」】

好調の要因について、こう切り出した松井投手。安定の要因と聞けば、コンデションがいい、コントロールが良い、ストレートがいい、変化球がいい、など投球を支える何かが良い、というのを想像するが、そういったニュアンスはない。

「好不調の波という所で、そんなにぐちゃぐちゃに荒れる試合がないので、自分の中である程度、常に思った所に基本、投げられているというのが、いいのかなと思います」と分析。特に良い試合があれば、そうでない試合も当然出てくるが、今年の松井投手はそれがない。常に及第点の投球ができているということが読み取れる。

松井投手というと、これまでクローザーとして安定した活躍をしてきたが、四球も多かった。抑えるもののランナーはある程度出すという印象も残る。荒れるとまではいかないが、それに近い中でも、ピンチを作りながら最後は抑えてきた印象だ。それが、今年はここまで四球の数が投球回に対して、1/3から1/4くらいという少なさ(6月9日現在)。
投球回の半分かそれに近い割合で四球を出してきたことを考えると、今年は四球が少ない。それが、本人の言う「好不調の波が少ない、荒れる試合がない」ということともリンクしているのではないかと感じる。

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【打たれても抑えても、毎日を同じように過ごす】

波が少ない要因は何なのか。

「同じように毎日を過ごすという所ですかね。打たれても、抑えても試合がなくてもあっても、カードごとにトレーニングを決めたりだとか、一年間通してやるための計画、プランニングで動いているので、それに沿ってやっている所かなと思います」

ある日の試合前の練習。軽くダッシュをして、ストレッチのような動きをして、ノック。その後キャッチボール。距離を取って投げると、最後は近づいて力を入れて投球をして締めくくる。間をおいて今度は短距離ダッシュを繰り返した。グラウンドでの練習はこれで概ね終了していたが、こうした決められた動きを同じように毎日繰り返すことが、松井投手にとっては大切なようだ。

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【160キロも、おばけフォークも投げたい!】

安定したパフォーマンスを続ける松井投手に今後の抱負について聞くと、エッジの効いた答えが返ってきて心が動いた。

「できないことは全部したい。それこそ、160キロも投げたいですし、千賀さんみたいなフォークも投げたいですし、欲は尽きない。現状に全く満足してないですし、何でも欲しい、何でも上げたいです」

160キロのストレートは、現状、日本人選手ではなかなかマークする人はいない。千賀投手のフォークは「おばけフォーク」と称されるほど、驚く変化を見せる魅力的なボールだ。究極のボールを常に追い求めている姿勢がうかがえる。
若くしてタイトルを獲得し、最年少で節目の数字をクリアしてきた松井投手だが、現状には全く満足していない。今後どれだけ球速を上げ、どれだけ質の良い変化球を手にするのか。楽しみは尽きない。


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