どうなる半導体工場 仙台銀行トップに聞く

宮城県内ではことし、最先端の研究施設「ナノテラス」の本格運用が4月から始まり、年内には「半導体工場」の建設も始まるなど、経済関係で大きな動きが相次ぎます。ことしの宮城県経済はどうなるのか。地元金融機関のトップを10年務める、仙台銀行の鈴木隆頭取に話を聞きました。

(聞き手・仙台放送局記者 吉原実)

【県経済は緩やかに回復 企業はさらなる経営改革を】
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(吉原)
「新型コロナが5類に移行したことで、街なかにはにぎわいが戻っています。個人消費が上向いている中、宮城県の経済の現状をどうみていますか?」

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仙台銀行 鈴木隆 頭取

(鈴木頭取)
「コロナの5類移行が進行し、宮城県でも景気は緩やかに回復しつつあるんじゃないかなという実感を持っています」

ただ、取引先とやりとりするなかで感じた課題も指摘します。

(鈴木頭取)
「1つは人手不足が非常に深刻。これからもしばらく続いていくだろうと、私たちも見ています。2点目としてはコストの上昇。仕入れの値段だったり原価があがったりしてコストが上昇し、大変になっている。価格に転嫁できた取引先は、なんとか一息つけているし、価格転嫁ができなかった取引先はまだちょっと大変だという感じがします」

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コロナ禍を乗り切った今、さらなる経営改革が企業には必要だと鈴木さんはいいます。

「いわゆるコロナ禍が進行する中で、ニューノーマルという新しい社会形態に向けて、取引先が事業転換をしたのが少しずつ功を奏していると思います。例えば、旅館業であれば、今まで団体客中心だったものがもう完全に個人客、リピーター、富裕層を狙ったような展開であるとか、あるいはグランピングやペットの宿とか、新しい展開に向けた業態の転換であるとか、設備の更新など、そういう動きがいろんな業態で出ていますので、それをしっかりサポートさせてもらおうと思っています」

【半導体工場“地方創生につなげたい”】
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去年10月SBIとPSMCの記者会見

宮城県の経済のことしのキーワードの1つが「半導体工場」です。ネット金融大手の「SBIホールディングス」と台湾の半導体大手「PSMC」は8000億円以上を投資して、大衡村に共同で半導体工場を建設します。工事はことし後半にも始まる予定です。

SBIと提携関係にある仙台銀行にとっても、大きなビジネスになる可能性があります。
半導体工場の進出が発表された翌月には仙台銀行も、プロジェクトチームを立ち上げました。半導体工場の運営会社に行員を出向させ、情報のやりとりを今以上に緊密に行う考えです。

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半導体工場の建設予定地

(吉原)
「半導体工場の進出が決まって以降、取引先の反応はどうですか。それに対してどう対応したいと思っていますか?」
(鈴木頭取)
「毎日のように宮城県内の各地からいろんな問い合わせとか依頼が来ていますので、そういった情報を有効に活用することが、まずは大きなテーマだと思っています。この事業を地方創生にどうやったらつなげられるかという観点では、当行のメリットの追求は二の次。まずは地方創生、地域活性化にどうつなげていけるかを主眼に動きたいと思っています」

【“SBIグループとの連携重視しさまざまな展開を”】
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(吉原)
「仙台銀行の親会社『じもとホールディングス』は去年、SBIグループから追加出資を受け、株式の3分の1以上を保有する大株主になりました。経営への影響がいっそう強まっていることを、鈴木さんはどう受け止めていますか?」
(鈴木頭取)
「じもとホールディングスとして ここ3年くらいはSBIグループとの連携が1つ大きな柱になってきました。その中で、DX(=デジタルトランスフォーメーション)の活用とか、あるいは新しい融資スタイルの追求とか、いろんな形が出ていますのでこれからもSBIとの連携を大事にしながら展開をしていきたい」

仙台銀行がSBIグループとの連携を通じて、実現したい事業とは。

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(鈴木頭取)
「例えば今、銀行の窓口で提供している事務は、7割ぐらいが入出金と振り込みと諸手続きになっていますけれども、これからは銀行の窓口に行かなくてもタブレットとかスマホでできる時代がそこまで来ていますので、さらに進めていくことが大事だと思います」

【ことしのキーワードは“新取”】
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鈴木さんと仙台銀行にとってのことしのキーワードを、色紙に書いてもらいました。

(鈴木頭取)
「私が選んだ文字は『新取(しんしゅ)』です。普通は進んで取る『進取』と書きますけど、私は新しいものをとるという造語で「新取」と書きました。ことし、宮城県ではナノテラスの稼働とか、半導体の工場の建設に向けた動きとか、いろんな新しい動きが始まってくると思います。その中で新しいものを取っていきたいという意味でこのことばを書きました」

 

【付加価値あるサービス提供できるか】
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地域経済を支える地銀は現在、人口減少などを背景に経済の規模が縮小していく地方で、難しい経営のかじ取りが迫られています。

「じもとホールディングス」傘下の仙台銀行も決して例外ではなく、同じく傘下のきらやか銀行(山形市)が震災後に借りた公的資金200億円の返済期限がことし10月に迫っており、経営基盤の改善はグループ全体の差し迫った課題です。

地銀の生き残りのカギを握るのは、取引先に対し、どれほど「付加価値」をつけたサービスが提供できるか、そして、その成果をどう地域全体に還元していくかということだと思います。

半導体工場の進出やナノテラスの本格運用という千載一遇のビジネスチャンスをどう宮城県経済の底上げにつなげていけるか。地銀にとって、この1年はその真価を問われることになりそうです。


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仙台放送局記者
吉原実
新聞記者を経て2023年から仙台局 
主に金融や産業政策などを取材