高校の校歌がミュージックビデオに!?

人口減少が進む中、生徒数の減少に悩む学校は少なくありません。宮城県でも、およそ7割の公立高校で一次募集の出願者数が定員割れになっていて、生徒をいかに確保するのかが課題になっています。こうした中、県は、2023年度の新入生から県内の2つの高校をモデル校に指定し、初めて、全国から生徒を募集することになりました。

このうち、加美町の高校では、全国から応募したい!と思ってもらえるような学校を目指し、生徒たちも制作に参加したある取り組みを始めました。それが「校歌のミュージックビデオを作ること」。去年から始まり、2月上旬、ついに完成しました。果たしてどんな仕上がりになったのでしょうか。

(仙台局/記者 栗岡希)

 

【生徒確保に悩む学校、全国募集に乗り出す】

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中新田高校

加美町にある中新田高校です。なぜ学校で校歌のミュージックビデオ作りに乗り出したのか。この高校でも深刻な生徒不足がありました。

この高校では、10年ほど前から生徒数が定員に届かない状況が続き、2022年度の1次募集では、倍率が0.80倍にとどまっていました。

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中新田高校 藤倉義己校長

「地域の少子化に伴い、ここ3年は定員の8割前後に落ち込んでいる。先生方はじめ、地域の方々の本校存続に対する危機感が増していた」

生徒をもっと呼び込めないか。県が2023年度から一部の高校で、全国から生徒を募集することになり、中新田高校も参加することになったのです。

では、全国から応募したくなる学校にするにはどうすればいいのか。目をつけたのが、どこの学校にもあり、学校や地域の特徴が盛り込まれているもの。そう、「校歌」です。そのミュージックビデオを作ることになりました。

 

【校歌をミュージックビデオに!!】

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スタートしたミュージックビデオ作り

では、どのように制作していくのか。町に進出している企業誘致を行う会社が、生徒数の減少に悩む学校や町と、専門家を引き合わせ、町の課題を解決する講座を開設。その講座に生徒たちが参加することになりました。指導する講師は、楽曲や映像を扱う東京の制作会社の専門家で、生徒はプロの目線からアドバイスをもらい、制作のノウハウを学びながら、ミュージックビデオ作りが去年10月からスタートしました。

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4つのキャラクターから選ぶ生徒たち(去年12月)

去年12月。ビデオに登場するイメージキャラクター選びです。生徒や講座に参加する人が思い思いのキャラクターを描いてきました。

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説明する講師(去年12月

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講師からはキャラクターを選ぶ上でのポイントについてアドバイスがありました。

「わかりやすくいえば、ドラゴンボールの孫悟空。シルエットになっても、一発でわかりますよね」

アドバイスをもとに考えた生徒たち。投票の結果、爽やかさと、緑の髪色が印象的なキャラクターが選ばれました。

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紙に意見を書く生徒たち(今年1月)

ことし1月には、どんな学校や町の特徴をビデオに盛り込めば、学校の魅力を発信できるか、生徒たちが意見を出し合いました。その結果、学校のイメージカラーの「緑」や町の自然を取り入れることになりました。

 

【ついに完成!校歌のミュージックビデオとは】

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完成したミュージックビデオを見る生徒たち

そして2月上旬。ついにミュージックビデオが完成。生徒たちに披露されました。

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生徒が選んだキャラクター

ミュージックビデオには、生徒たちが選んだキャラクターが登場。
リボンは町を流れる鳴瀬川を、髪飾りは校章がイメージされ、校歌をポップに歌います。
さらに映像には歌に合わせて歌詞の文字が次々に現れます。

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ビデオに盛り込まれた校舎の写真

また、生徒たちが撮影した校舎の写真も取り入れ、学校の魅力を発信したい生徒たちの思いがこもった仕上がりになりました。

生徒たちの反応
「思っていたとおりのイメージキャラクターができていて、本当にすごいと思いました」
「この学校、魅力がいっぱいあると思うので、ほかの県外の学生にも来てもらい、その魅力をぜひ発見してもらいたい」

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生徒たちのアイデアが詰まった校歌のミュージックビデオ。学校の公式YouTubeチャンネルから見ることができます。このビデオが全国の中学生たちにどのように受け止められるのか。学校や生徒たちの期待は高まっています。

 

【取材後記】

仕上がったキャラクターが本当にキュートで、、、。完成したミュージックビデオを見た生徒たちの目もキラキラ輝いていました。中には、将来アニメーターになりたいという生徒も。ミュージックビデオ作りは、そんな生徒たちにとって、貴重な学びの場にもなっていると感じました。
新年度の生徒の出願も今月14日から始まり、学校関係者は「ビデオが生徒募集に影響しているかまだ分かりませんが、ぜひ見て、高校や地域に関心を持ってもらえれば」と話していました。
今回は、希望する生徒だけが参加しましたが、高校では新年度から「地域創造学」という学校独自の科目を開設し、今回のように専門の講師を招いて、町の課題を解決する方法を考える授業を進めることにしています。今回のミュージックビデオをきっかけに、町や学校への関心が少しでも高まり、より活気のある学校になってほしいと思います。

 


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仙台局記者 栗岡希
2021年入局 

今後も学校の明るい話題を取材したいです。