拡大する放置竹林 「害」を「財」に

全国的に増えている「放置竹林」。
放置竹林とは手入れされずに放置された竹林のことで、土砂崩れのリスクが高まったり、獣害を誘発したりと地域の課題となっています。
そうした中、放置竹林を少しでも減らそうと、東北で有数のタケノコの産地・丸森町では地元のNPOが竹の新たな活用法の開発に取り組み始めていました。

取材:松野宗孝


どんなことをしているの?

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今年6月に地元のNPOが開いたワークショップの様子です。
テーマは竹を使ったコンポスト作り。
通称「ネグナッター」です。

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「ネグナッター」はパウダー状にした竹を生ゴミと混ぜ込み肥料を作る仕掛けとなっています。ワークショップに参加した人たちは、自作したコンポストを1か月使い、竹の効果を調べる実証実験に取り組みます。


実際に竹林を見せてもらうと…

このワークショップを開いた背景にあるのが、
いま年々深刻になっている地下茎(地面の中に生えている茎)で広がる放置竹林問題だそうです。
町内にある放置竹林をNPO『あぶくまの里山を守る会』の中畑 義巳さんに案内してもらいました。

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中畑さん
「この辺は全然手入れが行き届いてない。こんな感じになってしまいます。」

密集して生えている上に、倒れた竹がたくさんあり、入っていくのも大変そうです。

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土砂が崩れて1メートル以上沈んでいるという場所もありました。
根が浅い竹林が山の斜面に広がると、大雨の際に土砂崩れを起こす危険が高くなります。
さらに、イノシシの住処になり、近隣の農作物をあらす獣害の原因にもなっているといいます。


整備に取り組んでは来たけれど…

こうした状況を変えようと、NPOは月に一回SNSでポランティアを募り竹林の整備をしてきました。毎回10名をこす参加者が集まってくれるそうです。
しかしその効果は限定的だったといいます。

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中畑さん
「ただ単に竹林整備をしても持続しないし、そこから排出された竹を何かに活用できれば、循環が生まれて竹林整備も促進されるのではないか。」

そこで新たな活用法を探ろうと、2年前に始めたのが「竹やぶ会議」。
同じく放置竹林問題に悩む県内の人々と連携する場です。
参加者はタケノコ農家やNPO、企業など様々です。

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これまで参加者たちは竹炭やメンマなど、竹を活用した製品を次々と試してきたそうです。


「害」から「財」へ

そんな中、丸森町のNPOが注目し始めたのが、パウダー状にした竹を使うコンポストです。
調べたところ、竹の内部に含まれるデンプンが微生物のエサになり、生ゴミの分解を促進することが分かったといいます。

6月に開かれたワークショップの参加者の一部は、コンポストの様子を動画や写真でNPOと共有しながら進めてきました。
そして7月再び集まると、参加者たちからこんな声が。

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「こんな大きい魚を骨ごと入れて、本当に生臭くなく分解してくれるのかなと思ってやったけど、本当に見事に骨だけになった。」
「コバエを気にするとか、臭いを気にするというのがなくなった。」

なんと参加した13人全員が竹パウダーの効果を実感していました。

NPOではこのワークショップの効果をもとに改良を加え、町内のスーパーでも実証実験を開始する予定だそうです。

ワークショップを開催しているNPO職員の中畑さんは放置竹林について、

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中畑さん
「竹って本当にいろいろな活用法がある。
暮らしの中で活用していけば「竹害」ではなく「竹財」になる。
今後とも町ぐるみで推進していきたい。」


と前向きに語っていました。


関連記事

放置竹林問題については夕方の宮城県向けニュース番組「てれまさむね」内のコーナー、
「みやぎUP-DATE」でも取り上げてきました。
過去の記事はこちらからご覧ください。

第1弾
「放置竹林問題(竹害)って、何が問題なの?」

第2弾
「続・放置竹林問題 竹の活用方法を探る農家を訪ねました」

第3弾
「放置竹林問題 第3弾 ~"つながる"から始まる~」