未来への証言 視覚障害者が経験した復興

今回は、宮城県石巻市にお住まいの若山崇さんです。
若山さんは、視覚障害者やその支援者で作る団体、「一歩を楽しむ石巻」の代表をつとめています。
若山さんは震災直後に病気で視力を失い、さまざまな困難に直面しました。

▽証言はこちらから(音声が再生されます)▽

髙木)震災から1年、若山さんも視力が完全になくなってしまったわけですけれども、
どういう感覚だったですか?
若山)震災前でしたら、ここの歩道をまっすぐ歩いて、左に曲がる、
右に曲がるっていう目印がありました。それが全くない。
いつも通りの生活音とか、そういうものがあったんですが、震災後は全くそれが音のない状態でした。
車のエンジン音を頼りに歩いている、情報媒体として歩いていたので、
歩道や道路がすごく変わっちゃったんだなというのに衝撃を受けました。

髙木)いろいろ復興で街は変わってきていますけれど、
若山さんにとってはこの変化をどういうふうに感じていますか?
若山)自分がこう目で見て、復興状況、復興具合を見ることができないので、
心のイメージの中でその復興が私のイメージ通りの復興の建物と町に
なっているのかどうかっていうことを感じました。

視力を失い、復興する町の様子が見えない中、若山さんが忘れられないのが、
震災直後に町を覆っていた「匂い」です。

若山)町を歩いていると、以前あった建物とか、自分がこう目印にしていた建物とかを歩くと、
なぜかこうヘドロと重油の匂いがよみがえってくる。そんな感覚です。
今は全く見えないのですが、その当時の悲惨な状況を頭の中で思い出すんですが、
それ以上に匂いのほうで何かよみがえってきます。画像として蘇るよりは匂いで蘇ってきます。

若山さんは、震災後、視覚障害者が生活する上での悩みを共有しようと、
2017年には「一歩を楽しむ石巻」を設立しました。

髙木)一歩を楽しむ会の中にも、もちろんあの被災された方ってたくさんいる。
会の代表としてはどんな風にこう捉えていきたいなって考えますか?
若山)さまざまな視覚障害者当事者の生活スタイルがあります。
その中でも情報共有をしていくことで、ちょっとした地震や災害が起きても、
今こういう状況だから気をつけようねとか、そういうところで共有しています。

髙木)みなさんで思いを共有することが何かヒントになるというか、どういう風に考えていますか?
若山)この情報共有するための媒体も1人1人レベルアップしていかなきゃいけないなと
思っていますし、その情報共有するためには、今はこういうスマホとか、
タブレットとかそういうものがあります。うちのほうでは当事者のデジタルアドバイサーが、
一人一人丁寧に、ええとその方に合わせた情報発信とか情報を受信するやり方とかアプリとか、
そういうことを教えています。常日ごろデジタル関係のサロンも行っております。
そうすることで1人でも何かの災害の時は命が救われるんじゃないかなと思っています。