【髙木優吾】「横浜GRITS」が教えてくれた可能性 ~ アイスホッケー全日本選手権 ~

今月16日から長野県で開催された全日本アイスホッケー選手権。
アイスホッケー日本一を決める年に1回のトーナメントだ。
トップリーグのアジアリーグや大学から12チームが参加した。
私はBS1での実況担当のため現場で取材していたが、とても印象に残った試合がある。
それが2回戦の「横浜GRITS」対「レッドイーグルス北海道」だ。

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<最強チームに挑んだGRITS>
横浜GRITSは去年アジアリーグに参入したばかりの新生チームだ。
去年は不戦勝を除いて全敗。今年初勝利を挙げたものの、まだ2勝しかできていない。
対戦相手のレッドイーグルス北海道は同じアジアリーグで戦うチーム。
今年の公式戦では18戦でわずか1敗。多数の日本代表候補を擁し、
全日本選手権での優勝は37回を誇る超攻撃的な名門チームだ。

<「想定通り」だった試合展開>
試合はレッドイーグルスのペース。序盤からシュートを放ち続けた。
GRITSは5人の選手がゴール前に固まるいつものスタイル。
この日はGRITSのディフェンスが素晴らしかった。
体をなげうち、全身でシュートを受け止め続ける。ルーズパックには次から次へと選手が絡む。
1Pだけでレッドイーグルスに23本のシュートを放たれたが、失点は1のみ。
0-1でリードを許したものの、まさに「想定通り」と言える立ち上がりだった。

<主将を動かした仲間の働き>
2Pに入ると、GRITSは相手のペナルティによる数的優位を生かして、同点に。
さらには土屋選手が個人技で突破して得点し、なんと2-1でリードする展開となった。

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いずれもディフェンスで耐えて、カウンターを生かすというGRITSの形が出た結果だった。
象徴的だったのは、GRITSの主将・熊谷豪士選手(仙台市出身)のプレー。
DFの選手だが、2Pでは相手のゴール近くまで上がる攻撃参加を何度も見せた。
超攻撃的なチームを相手にかなり勇気が必要な動きと言えるが、
チームメートの粘りに何とか応えたいという主将の思いを感じるプレーだった。
試合はGRITSがその後勝ち越しを許し、3-5で敗れて2回戦敗退となった。
しかし、耐えて得点につなげる自分たちのスタイルを存分に出せたといえよう。
攻め続けて得点をとるだけがアイスホッケーではない、
横浜GRITSならではの新たな可能性を感じた一戦だった。

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<応援してくれるファンのために>
試合後、熊谷豪士選手に話を聞いた。

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――試合を終えて?
熊谷選手 試合終了後、相手チームから「すごく焦った。追い詰められた」と聞いて、自分たちのプレースタイルが効いたと感じた。ただ、やはり勝たなければ意味はない。経験の差も大きかった。

――2Pで攻撃参加していたが?
熊谷選手 少しでも行けるタイミングがあればと思って狙っていた。FWが頑張ってくれていたので、自分も何かしたいという気持ちで攻撃参加した結果だった。

――今後のリーグ戦に向けては?
熊谷選手 もう少しチームには貪欲さが必要。もっともっと上を目指していきたいと思う。まだホームでの白星がないので、応援してくれるファンや家族のためにも勝ちたい。

追い求めるぶれないスタイルが少しずつ実を結ぼうとしている「横浜GRITS」。
継続することの大切さを私たちに教えてくれる存在だ。