1.イギリスEU離脱 2.インドネシア大統領選挙
2019年4月14日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの濱田龍臣さん、国際部飯沼智デスクです。
この日の時間割です。
1時間目「イギリス EU離脱 最新情報」
2時間目「インドネシア大統領選挙」
3時間目「エジプト新首都建設」
1時間目のイギリスのEU離脱、今週はどうなったのでしょうか。
メイ首相の「離脱協定案」が3回否決され、離脱の期限は4月12日となっていました。
メイ首相は離脱の期限を6月30日に延ばしてほしいとEUに泣きついていましたが、
EU各国の首脳が集まって臨時で会議を行った結果、離脱の期限は10月31日まで延期されました。
EUの中では、「何の取り決めもないままイギリスが離脱すると、大混乱になるのでそれだけは避けよう」という点では考えが一致したんです。
ただ「どれだけ延期すればいいのか」ということについては、意見が分かれていました。
EUの大統領は、最大で1年の延期を提案し、ドイツのメルケル首相など多くの首相が支持しました。
しかしフランスのマクロン大統領は、これに反対。
「できるだけ早く出て行ってほしい」と主張しました。
そして5時間にも及ぶ議論の末に出た結論が、10月31日という期限でした。
イギリスの市民に話を聞くと「合意なき離脱が避けられたことは良かった」という声はもちろんありますが「結局は何も変わっていない」とか「今の混乱が続くだけだ」などという人も多くいて、離脱した人も、残るべきだという人も、納得していないようです。
期限が延長したからといってきちんと結論を出すのは簡単なことではありません。
むしろ時間的な余裕ができたせいで、状況がより複雑になる可能性まで出てきたと思います。
「時間がない」という理由で説得もできなくなりましたし「メイ首相を辞めさせ新しい首相を選ぼう」「もう一度国民投票を」という色々な意見が出てくるかもしれません。
さらにメイ首相にはもう1つの不安材料があります。
イギリスがこのままEUに残っている場合には、ヨーロッパの議会選挙というものに参加しなければいけなくなったんです。
イギリスの中では「3年前の国民投票で示された民意を無視した外交的な失敗だ」といった声も多くなっています。
こんな中、イギリス議会は10日あまりの休暇に入りました。
イースターというキリスト教の大事な行事にあわせての長期休暇です。
「休みを取っていて大丈夫だろうか」「この間も時計の針は進んでいる」と、皮肉交じりに伝えるイギリスメディアもあります。
今後もイギリスのEU離脱について、注目していきます。
2時間目は、インドネシア大統領選挙。(放送3日後の)17日の水曜日に行われます。
だれが大統領になるのかで、日本にも影響が出てきそうなんです。
国際部アジア担当・飯沼智デスクが解説しました。
インドネシアは大小合わせて1万3000を超える島々からなります。
宗教もイスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教など様々で多様な宗教が共存しているんです。
現在のジョコ大統領が就任して最初に訪問したのが、日本です。
進出している企業は1900社、在住日本人は2万人、売られている自動車の9割が日本車という、日本にとって、とっても大事な国なんです。
そんなインドネシアの大統領選挙に立候補しているのが、この2人。
インドネシア料理のコックにしてみました。
2人が「お客さん」を取り合って、それぞれの主張を料理に見立ててみていきます。
どちらが多くのお客さんをとって選挙に勝つのでしょうか。
まずはジョコ大統領。自慢の料理は「サテ」。インドネシアの串焼きです。
炭火で香ばしく焼き上げてあります。
この料理は「経済発展」を表しています。
ジョコ大統領は鉄道や道路、港など経済発展に必要なインフラをどんどん整備しているんです。
実は日本からも企業が入っていて、インドネシアで初めての地下鉄は、日本が1200億円余りを貸し日本企業が全面的に支援して完成しました。
経済発展は国民にとっても嬉しく、世論調査などによるとジョコ大統領がリードしているんです。
もう1人の候補は、元軍人のプラボウォさんです。
得意料理はこちら。インドネシア風のチャーハン「ナシゴレン」です。
このナシゴレンは「イスラム教重視」を表してます。
先ほどインドネシアには様々な宗教があると言いましたが、国民の9割近くがイスラム教徒なんです。
ということは、イスラム教徒のお客さんはナシゴレン=「イスラム教重視」に飛びつき、ここにきて、プラボウォさんが追い上げているんです。
実はいま、インドネシアでは、イスラム教の教えを大切にしようという人たちが増えています。
インドネシアではイスラム教徒の女性が身につける「ヒジャブ」を被る人が増えています。
スマホにイスラム教の聖典「コーラン」のアプリを入れる人も増えています。
20年前、イスラム教の団体の活動に制限をかけていた大統領が失脚しました。
そのころからイスラム教の教えを広める活動が盛んになり信仰を大事にする人が増えていったのです。
その土台となっているのが、教育現場です。
コーランやアラビア語などの教育に力を入れる学校が増えています。
一方で、イスラム教徒と他の宗教の信者にあつれきが生まれる事態も起きています。
3年前には、キリスト教徒の州知事がコーランを冒涜する発言をしたとしてイスラム教徒が大規模な集会を開き、一部が暴徒化しました。
その後も、イスラム教の存在感を見せつけるような集会は繰り返されています。
こうした集会に参加しているのは、強硬派の人ばかりではありません。
イスラム教を深く理解したいと集会に参加している人も増えているんです。
その理由には、宗教をちゃんと守ることで秩序が保たれたり、家族を重視する考えが共有されるという背景があるようです。
また、経済発展が進んで社会がすごいスピードで変わっていく中で「一体自分が何者なのか」、そのよりどころを宗教に求める人が増えているようです。
プラボウォさんにお客さんを奪われたジョコ大統領はどう取り戻すのでしょうか。
隠していたとっておきの料理を繰り出してきました。
それがこちら。
ジョコ大統領も「イスラム教徒重視」を打ち出すことにしたんです。
一緒に選挙にのぞむ副大統領候補にイスラム教の大物指導者を据えたんです。
そうなるとお客さんは、揺れ動きます。
「イスラム重視」の競争が過熱ぎみになっていることが心配を生んでいます。
イスラム重視が強まってしまうと、他の宗教を信じる人や外国人などが、過ごしにくい国になってしまうのではないかとおそれられているんです。
インドネシアにいる日本人は、大統領選挙を高い関心を持って見守っています。
進出している多くの日本企業が、ジョコ大統領が進めているインフラ整備などの事業に関わっているため、ジョコ大統領が再選されればそのままビジネスを続けられると日本企業の関係者は考えています。
一方のプラボウォさんは、経済政策についてこれまで具体的な説明をしていません。
ジョコ大統領が進めてきたインフラ整備の見直しを示唆する発言もしています。
3日後の選挙結果を受けて、インドネシアの経済政策がどうなるのか、日本企業の関係者は注目しています。
今回の選挙で問われているのは、インドネシアの多様性を守ることができるかです。
この国では多種多様な民族が共存してきました。
特にインドネシアのイスラム教徒は、ほかの宗教への寛容な姿勢が国際的にも評価されてきました。
こうした多様性は国の原動力となり、魅力も形づくってきたと思います。
インドネシアはこの多様性を守れるのか、それとも失ってしまうのか。
岐路にさしかかっています。
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2019年4月21日のゲストは、ハリー杉山さんです。
投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:14:26