2018年06月29日 (金)

米朝首脳会談その後の動き

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2018年6月17日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、国際部佐々一渡デスク、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの敦士さん、国際部高木優デスクです。

 

シップが、敦士さん背が高いのかな?って呟いてたけど、圧倒的に敦士さんの方が大きいですよね^_^;

 

歴史的なイベントとして世界が注目した、トランプ大統領とキム委員長による史上初の米朝首脳会談が6月12日に終わりました。

会談では、このような「共同声明」に両首脳が署名しました。

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一見お互いの目標に近い文言が入っているように見えますが、この共同声明をどう評価すべきか、また、その後の動きについて、国際部高木デスクがアメリカ側から、国際部佐々デスクが北朝鮮側から解説しました。

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<高木>

アメリカと北朝鮮のトップ同士が直接会って、「非核化」と「体制保証」の意思を確認したことには大きな意義があったといえます。

その一方、合意の中身は具体性に欠け、“政治ショー”という側面が強くなりました。

 

<佐々>

北朝鮮としては、キム委員長がこの先も国を率いていくことができる約束=「体制の保証」を取り付けたと満足しているはずです。

北朝鮮国内でも、トランプ大統領と堂々と渡り合い世界中が注目する歴史的な会談になったとアピールしています。

 

◇今回の会談でどんな駆け引きがあったのかを「綱引き」で表しました。

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【最初の綱引きでは、北朝鮮が優勢!】

 

<高木>

この差がついたのは、そもそも北朝鮮が非核化に向けて何もしていないのに、トランプ大統領がキム委員長に会ったためです。

さらに「非核化」の具体性のなさ・期限を盛り込めなかったことで、北朝鮮が喜ぶおにぎり(パワー)を与えてしまいました。

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<佐々>

北朝鮮はこれまでも核問題をめぐって国際社会と合意を結んだことがありますが、計画の明記や国際機関査察官の受け入れなど、具体的にやらなければならないことが盛り込まれていました。

しかし、今回は具体的なことを約束せずに済んだのです。

 

<高木>

なぜ、具体的な約束をせずに済んだのかというと、非核化を巡る立場の隔たりがあまりに大きすぎたため、首脳会談までに調整が間に合わなかったためです。

それを直前で悟ったトランプ大統領は、「会談は関係構築の機会」だと、自らハードルを下げました。

強引に引っ張って綱を切ってしまっては元も子もないと自ら力を抜いたため、北朝鮮に引き込まれました。

その結果、矢面に立たされて釈明を繰り返したのが、ポンペイオ国務長官です。

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記者から非核化の期限を問われ「2年半以内に大幅な軍縮を達成したい」と初めて具体的な目標を明らかにして理解を求めました。

さらにトランプ大統領自身も帰国後ツイートし、批判の打ち消しに追われています。

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<佐々>

非核化の具体性がないこと以外にも、北朝鮮が望んでいたもので転がり込んできたものがあるんです。

 

<高木>

それは会談が終わった後のトランプ大統領の発言です。

「米朝間で誠実に交渉が行われている限り、戦争のゲーム(米韓合同軍事演習)を中止する」

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【オーエス!オーエス!またしても北朝鮮が優勢です!】

 

合同演習の中止の影響は大きく、日本の安全保障にも関わってきます。

北朝鮮や軍事拡張を続ける中国を念頭に、軍事的な存在感を示すだけではなく、アメリカが後ろ盾にいるのだという政治的な意味合いもあります。

 

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韓国にいる在韓米軍の存在が、北朝鮮への圧力になってきたっていう面もあるんだヨーソロー

 

<高木>

在韓米軍に加え、北朝鮮が特に脅威と感じているのがこちらです。

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グアムに配備されている「B1爆撃機」は超低空飛行ができるため、気付かれないままピョンヤンの心臓部を攻撃することが可能とされています。

演習を中止するとなると、こうした爆撃機を朝鮮半島に近づけて圧力をかけることもできなくなります。

 

一方で「寝耳に水」なのが、韓国です。

ムン大統領はアメリカと北朝鮮の間を取り持ちながら会談を応援してきました。

演習を中止するかどうかは「慎重に検討する」と述べるにとどめ、動揺を隠せませんでした。

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さらにトランプ大統領は会談後の会見で、将来的には在韓米軍を撤退させる意向を示しました。

毎年莫大な予算がかかることが不満なようです。

 

<佐々>

さらに北朝鮮が勝ち取ったと主張しているのが、非核化を「段階的」に進めるということです。

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段階的に非核化を進めたい北朝鮮に対して、時間をかけずに一括で速やかに非核化したいアメリカ。

この点について、北朝鮮は国営メディアを通じ、“アメリカと段階的に非核化を進めることで合意した”、つまり自分たちの主張が通ったと発表しました。

 

<高木>

アメリカ側は公式には「段階的」という言葉は使っていません。

ただ、トランプ大統領は記者会見で気になる発言をしました。

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20%という数字がどこまで意味を持つのかも現時点ではわかりません。

この発言からわかったのは、トランプ大統領は「一定の進展があった段階で見返りを与えてもいい」と考えているということです。

 

<佐々>

合意内容が曖昧であるがゆえに解釈の余地が生まれ、それぞれ自分たちに都合の良い形で解釈しているとも言えます。

 

<高木>

なぜトランプ大統領は北朝鮮側に段階的と解釈されかねない言葉を言ったのか?

それは会談が決裂することを最も恐れていたのもトランプ大統領自身であり、会談を開かなければ外交の失敗だとレッテルを貼られるのを恐れたからだと思います。

ただ、ダメだと断じるのはまだ早い。切り替えが早いのもトランプ大統領です。

常識にとらわれないトランプは、一旦わざと(綱を)北朝鮮に引っ張らせて北朝鮮に有利な状況を作った可能性があります。

そのヒントが、記者会見場で繰り返し放映されたプロモーションビデオです。

記者たちに見せるというよりは、キム委員長に見せるために制作しました。

 

(ビデオ)北朝鮮が核を放棄し、経済発展の道を選べば手を差し伸べるし、アメリカのような繁栄が待っている。一方核を捨てなければ、最悪の事態すなわち軍事的選択肢が待っているという二者択一を迫る内容でした。

 

さらに、首脳会談では大統領の防弾車の中をキム委員長にわざわざ見せました。

安全上見せてはいけないものまで見せたのは、「誠意にこたえなければ、どうなるかわかってるよね?」とキム委員長の脳裏に刷り込む狙いもあったと思われます。

 

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【ここで、アメリカ側が一気に綱を引きました!】

 

<佐々>

これに対し北朝鮮は周辺国との関係を強化することで、大国アメリカと渡り合おうとしています。

そのためにまず近づいたのが中国です。

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65歳の誕生日を迎えた習主席にキム委員長が5年ぶりにメッセージを送りました。

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さらに北朝鮮が関係を強めているのが、サッカーのワールドカップの開催国・ロシアです。

今回、ロシアの元スパイ暗殺未遂事件を背景に、多くの政府要人が大会に合わせてロシアを訪問することを見送りました。

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しかし北朝鮮は大会に参加していないにも関わらず、14日の開会式に、キム・ヨンナム最高人民会議常任委員長を派遣しました。

プーチン大統領とも会談し、ロシアを重視する姿勢をアピールしました。

 

<高木>

北朝鮮が中国とロシアという大国に接近したことで、アメリカの影響力は低下しました。

さらに気がかりなのは、北朝鮮に対する国際的な圧力包囲網にほころびが出始めていることです。

中国とロシアは、これまで基本的にアメリカ側に同調し、北朝鮮に圧力をかけてきました。

しかし、中国は制裁を緩和する必要性を訴えだしました。

 

<佐々>

関係国ということで気になるのが日本の拉致問題です。

北朝鮮の国営メディアは、拉致問題は解決済みだという従来の立場を繰り返し強調しています。

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アメリカとの交渉や日本の政治状況などを見ながら自分たちにとってプラスになると判断すれば、今後日本との対話の場に出てくる可能性はあると思います。

 

◇アメリカと北朝鮮、今後の日程で気になる注目の動きは?

<高木>

今夜(6月17日)にも行われる電話会談です。

トランプ大統領は会談の際、自分の電話番号をキム委員長に渡しました。

また今後ポンペイオ長官やボルトン補佐官と北朝鮮側の協議を速やかに始めるかで、双方の本気度が見えてきます。

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<佐々>

6月25日は朝鮮戦争が始まった日で、北朝鮮では「反米闘争の日」とされています。

これまでと同じように反米集会を行ない、アメリカへの厳しい姿勢を維持するのか、これまでとは異なった雰囲気を演出するのか、一つの手がかりとなりそうです。

そしてもう一つ注目しているのが、韓国とのさまざまな分野での会議や協議です。

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米朝の仲介役を果たしてきた韓国を取り込むことで、アメリカへの揺さぶりをかけてくることも予想されます。

北朝鮮が長い年月をかけて開発してきた核を簡単に放棄するとは考えづらいですが、北朝鮮としても、ある程度の非核化に応じざるを得ないと考えられる理由もあります。

一刻も早く国際社会から制裁の緩和や経済的な支援を手に入れるためには、非核化への取り組みが不可欠です。

 

<高木>

トランプ大統領の今後の出方も大事です。

短く時間を区切って成果を求める本質は変わっていないはず。

「キム・ジョンウンという男を俺は信頼するが、時間が経てばそれは間違いだったと判断することもあるかもしれない」と言っています。

非核化に向けた交渉が進まなければ北朝鮮との対話路線を一気に転換し、軍事的な緊張が高まることもありえます。

 

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※リハーサル時の写真も掲載しています。

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2018年7月1日のゲストは、初登場!小島よしおさんです。

 

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:14:34


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