せかいま美術館

2019年10月10日 (木)

"使い捨てプラ"禁止に... インドで深刻ごみ事情

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2019年10月6日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのトラウデン直美さん、国際部の花澤雄一郎デスクです。

 

西葛西を歩けば、あっちにもこっちにも、インドの人たち。

このあたりは「リトル・インディア」と呼ばれ、インドの食材を扱うお店がたくさん並んでいます。

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こうしたカラフルなスパイス、インドではこのような袋での販売ができなくなるかもしれません。

 

世界中で大きな問題となっているのが、プラスチックごみ。

ここインドでも、深刻な事態を引き起こしています。

そこで、インドのモディ首相が大きな決断をしました。

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ニューデリー支局の小林潤支局長が中継で解説しました。

実はモディ首相は今月2日の演説で、使い捨てプラスチックを3年後の2022年までに全面的に禁止する方針を示したんです。

インドでは、プラスチックごみは、健康や生活への直接的な脅威となっているんです。

こちらをご覧ください。

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ニューデリーの中心部からそんなに遠くない所ですが、道端にごみが散乱しています。

レジ袋、プラスチックカップなど、あらゆる使い捨てのプラスチックが捨てられています。

特に貧困層が住んでいる地域では、ごみの収集が十分に行われていないため、そのまま捨てられてしまっています。

捨てられたごみを、動物たちが食べる姿も見られます。

地域にはごみを回収するボックスがありますが、誰もこの中に捨てず、子どもの遊び場になっています。

公式のごみ捨て場ではないと思われる、列車の操車場の前の広場にも、地域のごみ捨て場になってます。

 

ニューデリー近郊にはこんな場所もあります。

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積み上げられたごみの山です。高さは65m。

来年には、高さ73mの世界遺産「タージマハル」を超えるのではないかと言われています。

 

インドではプラスチックごみによると見られる健康被害も報告されています。

また、プラスチックごみが排水をつまらせて洪水を引き起こしたり、都市機能を停止させるかもしれないと心配されているんです。

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そのため、いっそのことプラスチックごみを禁止しようということなんです。

モディ首相は、環境の改善は国家の緊急の課題だとしています。

 

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[インドのモディ首相は「きれいなインド運動」を提唱していろんなことをしてきたんだヨーソロー!] 

 

インドでは昔から地方を中心にトイレがない家が多く、感染症がまん延し、命を落とす子どももいました。

このままではいけないと、政府がお金を投じて国中にトイレを整備。

おかげでこの5年間で家庭用トイレが爆発的に普及したんです。

 

他にも、大気汚染が酷くなったため、電気自動車を普及させたりしました。

こうしてモディ首相は、就任以来「きれいなインド運動」を提唱しいろんなことをしてきたんです。

だから、町中がごみで散らかってることが許せないんです。

 

とは言っても、使い捨てプラスチックを禁止するというのは可能なのでしょうか。

 

実は去年から、使い捨てプラスチック製品の使用を禁止している州があるんです。

インドで最も多くの人が暮らす都市、ムンバイを含むマハラシュトラ州では、去年6月から全面的なプラスチック規制を行っています。

いわゆるレジ袋や、スプーン、フォークなどの食器、小さいペットボトルなど、使い捨てのプラスチック製品の製造や使用を禁止しています。

違反すると、企業や店だけでなく一般の人も処罰されます。

1回目の違反で5000ルピー、日本円で8000円近い罰金が科せられます。

3回目以降の違反では、罰金が5倍になり、3か月の禁固刑も科せられます。

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いまでは布や紙の買い物袋を持つ人が増え、規制を歓迎する声も出ていました。

町の人は。

「排水溝にプラスチックごみがつまると水があふれ、家が水浸しになることもあるんです。布の袋を持って歩くのは当然のことです」。

「神聖な牛がプラスチックを食べたら大問題です。プラスチックが禁止されてよかったです」。

 

一方で、規制を守らない人たちもいます。

市場にある果物を売る店では、カットした新鮮なパイナップルをプラスチック製の袋に入れて販売しています。

州の規制では、食品を包むプラスチック製の袋は、一定の厚さがあってリサイクルできるものに限られています。

ところが、この店では禁止されている薄い袋を今も使っています。

リサイクル可能な厚い袋は色が濃いので、中のパイナップルが新鮮に見えないというのです。

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「薄い袋だと見栄えがいいですが、厚い袋だと、パイナップルを切ってから時間が経ったように見えるんです」。

別の店を経営する人は。

「許可された袋は高くて、われわれが買える範囲を超えています。禁止するのはいいですが、その前に代わりをどうするか決めるべきです」。

 

行政は規制や罰則を設けて、強い姿勢で臨みましたが、小売業界などからの反発は強く、規制は形だけになっているという指摘もあります。

産業界からも、モディ首相の政策は「急ぎすぎだ」という声が上がっています。

「あまりにも急に政策を変更すると、われわれの生計の手段を奪ってしまいます。消費者は分別せずごみを出し続け、政府も適切に機能していないのに、流通全体のほんの一部のプラスチック業者ばかり責められています」。

 

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「環境・衛生」と「経済」のボールを持ったインド象が出てきました。

 

モディ首相は環境を良くしようと取り組んでいますが、安くて加工しやすいプラスチック製品を禁止すれば、当然、困る会社も出てきます。

環境を重視すれば、経済が下がってしまいます。

今回、モディ首相は一部のプラスチック製品を、直ちに全面禁止にするのではないかという見方もあったんですが、そこまでは踏み込みませんでした。

経済への悪影響を考えたためだと思います。

しかし、経済だけを重視して環境が悪いままだと、イメージも悪いですし海外からの投資が減るなど経済にもブレーキがかかってしまいます。

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だからこそ、モディ首相は2022年と具体的に時期を区切って、やり遂げると表明したのだと思います。

 

プラスチックごみに対する危機感はインド以外のアジアの国々でも高まっています。

こんな取り組みも行われているんです。

タイの南部には“脱プラスチック”を掲げる市場「ごみゼロマーケット」があります。

使われているのは、竹の容器。

ストローも竹でできています。

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市場には150以上の店が集まっていて、出店の条件は「プラスチックを使わないこと」です。

こうした珍しい取り組みが評判を呼び、多くの客が訪れるようになりました。

 

一方、インドネシアのビーチリゾートとして人気のバリ島でも、脱プラスチックを呼びかける動きが広がり始めています。

きっかけは、バリ島の海に漂う大量のプラスチックごみと、その中を泳ぐエイの映像が公開されたことでした。

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こちらの買い物袋は「タピオカ」の原料にもなっている、キャッサバという芋から作られているんです。

キャッサバは、インドネシア各地で栽培されています。

デンプンを固めて薄く伸ばしたもので、自然に分解し環境への悪影響もないといいます。

「インドネシアではキャッサバは簡単に、安く手に入ります。世界中に広めていきたい」。

 

 

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「持続可能な脱プラスチックを」。

この問題の難しさは、人々の生活や企業活動がいかに使い捨てプラスチックの使用を前提としたものになっているかということではないでしょうか。

その意味では私たちの社会全体が納得しながら、持続的に脱プラスチックに取り組んでいかなければなりません。

インドの現状は禁止措置の難しさという意味で、日本や世界にとって参考になるはずです。

3年後にむけてインドがどのように「脱使い捨てプラスチック」を進めるのか、注目してほしいと思います。

 

 

 

【この日の時間割】

1.“使い捨てプラ”禁止に…インドで深刻ごみ事情

2.渦中のトランプ大統領 ウクライナ疑惑って何?

3.日本人女性が挑戦!イスラム伝統衣装おしゃれに

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年10月13日のゲストは、初登場!八木沼純子さんです。

 

投稿者:Mr.シップ | 投稿時間:14:40 | 固定リンク


2019年10月03日 (木)

お祝いムードのウラに課題も 中国建国70年

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2019年9月29日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、国際部の為井貴規デスク、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの虻川美穂子さん、岩田明子解説委員です。

 

※中国の建国記念日(10月1日)の2日前の放送内容をテキストにしています。

 

パンダのふるさと・中国は、10月1日が70年目の誕生日。

あちこちでイベントが開かれて、お祝いムードでいっぱい!

これまでものすごい勢いで発展してきた中国だけど誕生日を前に、なにやら心配事も多いようです。

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国際部中国担当、為井貴規デスクが解説しました。

 

10月1日は中国にとって、一番大切な日です。

こちらのカラー映像、建国記念日を前に中国政府が、初めて公開しました。

70年前の10月1日の天安門広場。

中国・建国の父とされる、毛沢東の演説です。

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「中華人民共和国の成立を宣言する」。

まさに、いまの中国が立ち上がった歴史的な瞬間なんです。

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いまの中国は毛沢東をリーダーとする中国共産党のもと立ち上がりました。

その後、海外から資本や技術を導入するなどして、経済を成長させていきます。

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世界第2の経済大国にまで成長し「豊か」になりました。

そして、いま、目指すのは「強国」。

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政治や軍事、経済、あらゆる分野で世界をリードする強い国です。

共産党は中国を統治する唯一の政党です。

70年間、このやり方で中国を発展させてきました。

こちらの塔、名付けて「共産党一党支配塔」です。

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今のトップがこの人、習近平国家主席です。

中国のリーダーたちは、これまで、発展の成果を内外に知らしめるように建国記念日を祝ってきました。

なかでも、10年ごとの節目には、威信をかけた軍事パレードを行ってきました。

習主席も、10月1日は過去最大規模の軍事パレードを行って盛大に祝う予定です。

 

 

直前の様子を取材しました。

建国記念日まであとわずかとなった北京では、国旗や「熱烈に祝う」などという横断幕が至るところに掲げられています。

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書かれていたのは「習主席のもと団結し、社会主義の偉大な勝利へ!」という勇ましいスローガン。

その前で、市民が記念撮影をしていました。

 

国をたたえる歌を歌っているグループもいました。

「親愛なる祖国よ、これから豊かで強い国に」。

「ワクワクしているわ!中国で生きることは誇りよ」。

当日の行事に向けた訓練や準備も加速しています。

 

この日、カメラマンが家族と街中を歩いていると…。

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上空を、70という数字をつくったヘリコプターの編隊が飛んでいきます。

通行止めになっている道路では、武装警察などが警戒し緊張感が高まっています。

テレビでも、連日、建国記念日のニュースが放送されています。

9月に入って3回、週末の深夜に外国メディアを排除して予行練習が行われました。

市民や兵士のべおよそ70万人が動員されたといいます。

 

こうした行事の中でも、習近平指導部がとりわけ重要だと位置づけているのが、軍事パレードです。

強力な軍事力を国内外に示し国威発揚につなげようとしています。

パレードでは「世界一流の軍隊」を目指して開発してきたさまざまな兵器が、お披露目されます。

中でも注目は、初めて公開される可能性がある新型のICBM=大陸間弾道ミサイルです。

アメリカ全土を射程におさめるものでアメリカへの強い牽制となります。

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「皆さん、楽しみにしていてください。失望はさせません」。

 

 

10月1日に向けて盛り上がっていますが…

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習主席、顔色が変わりました。

習主席の内心は、やや不安を抱えながらということになるかもしれません。

というのも、この「一党支配塔」を、ともすれば揺るがしかねない事態が起きているんです。

 

鍵を握るのは、この人、トランプ大統領です。

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塔が揺れ、一部が剥がれました。

剥がれた場所には「経済減速」と書いてあります。

いま、中国では経済の減速が鮮明になっています。

原因の1つは、トランプ大統領率いるアメリカとの貿易戦争です。

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アメリカによる関税の上乗せは確実に中国経済に打撃を与えています。

対立の出口が見えない中で、今後も、安定した経済成長を続けられるか見通せなくなっているんです。

 

そして、この「一塔支配塔」を揺るがしかねない要因はまだあります。

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また揺れて、そして、また何か剥れました。

「香港問題」と書いてあります。

香港といえば、連日報道されている、デモ。

「一党支配塔」を揺るがしかねないもうひとつの要因が、長期化する香港政府に対する抗議活動です。

依然として、収まる気配はありません。

中国共産党としては、中国の一部である香港での抗議活動をいつまでも解決できなければ、いずれは、中国本土にも、民主化を求める動きとして、飛び火しかねないと恐れているんです。

 

 

香港の様子を現地の若槻支局長に聞きました。

 

こちらではお祝いとは正反対の雰囲気です。

いまこの時間も、ネット上の呼びかけに応じて、大勢の市民がデモ行進をしていて、一部で、警官隊が催涙弾を発射するなど衝突も起きています。

10月1日当日には再び、デモ行進が呼びかけられています。

香港政府は先週、事態の打開を図ろうという行政長官と市民150人との対話を行ったんですが、

「3か月以上、市民が街に出て要求を突きつけているのに、何を求めているのか、まだわからないのか?」と不満をぶつける人たちが相次ぎました。

「対話は無意味だった」と切り捨てる人たちも多く、政府や警察に対する反発は全く弱まっていないと感じます。

 

一連の抗議活動は、すでに100日が過ぎました。

10月1日はひとつの山ではありますが、むしろ多くの人は11月下旬に行われる各地区の議員選挙を見据えています。

デモに参加している若者達が多く立候補すると見られていて、抗議活動が選挙活動と一体となって大きなエネルギーになると見られています。

5年前の雨傘運動はデモへの反発の声も上がり、およそ2か月半で収束しました。

しかし今回は政府や中国に対する反発が日を追うごとに増し、市民がより団結していて収まる気配はありません。

11月の選挙で民主派の立候補が認められないケースなどがあれば人々の反発はいっそう激しさを増し、

香港の混乱はさらに深まっていくことになります。

 

 

このままで、中国共産党の「一党支配塔」は大丈夫なのでしょうか。

 

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[中国共産党は、一党支配を守るために、いろんな事をしてるんだヨーソロー!]

 

新聞やテレビでは、中国共産党にとって都合の悪いことは、報道させません。

インターネットでは、個人の書き込みも監視し、批判はすぐに削除しています。

犯罪を取り締まる警察も、判決を下す裁判所も、中国共産党の方針に従います。

たとえ政府に不満があっても、自由な選挙はやりません。

 

中国共産党のメンバーは、中国に9000万人もいますが、中国の人口はその15倍の14億人近くもいます。

いくら目を光らせて抑え込んでも、すべての人を納得させることはできません。

中には反発する声もあって地方レベルでは、ときに不満が爆発することさえあります。

 

これは3年前に為井デスクが取材した、中国の農村部の様子です。

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まだ貧しい家も多く、貧富の格差への不満が根強くあることを実感しました。

人々の不満は、ときに政府に直接向かうこともあります。

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こちらは、地元政府が計画した工事に反発した住民の抗議活動です。

政府庁舎に乗り込み、計画を中止に追い込みました。

さらに、中国の少数民族の中には政府の政策が抑圧的だなどと不満を持つ人もいて、過去にはウイグル族による大規模な暴動につながったケースもありました。

中国政府は、いま、100万人ものウイグル族の人たちを不当に拘束していると、国際社会から批判を受けていて、くすぶる不満を力で抑え込もうとしています。

 

ただ、これまでは、国が発展するなかで、比較的多くの人はとりあえず自分の生活は良くなっているからと、受け入れてきた形です。

ただ、アメリカとの貿易戦争の影響で経済がさらに減速すれば、国民の生活への影響は避けられません。

また、そこに、香港の抗議活動も影響が飛び火すれば、批判の矛先は中国共産党にも向かいかねません。

 

うまく対応しないと、この「一党支配塔」がさらに大きく揺れかないってことなんですね。

そこで習主席がいま、一番頼りにしているのがこちら。

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「愛国心」です。

国民の愛国心を高めて「一党支配塔」を安定させようとしているです。

 

その様子を取材しました。

 

毎日、日の出とともに行われる国旗掲揚式では、建国70年を控え、これまでよりも多くの人々が訪れています。

中には、国旗掲揚の様子をスマートフォンで生中継している男性も。

「祖国ばんざい!国は豊かに、国民は強くなる!」。

 

国営メディアは建国70年に向けて、宣伝を強化してきました。

連日「国旗」を愛国心の象徴に見立てた歌を放送しています。

「国旗は私の誇りだ。国旗は私の生命以上に重要なのだ」。

 

さらに中国政府は、これまでの発展の成果を披露する展示会を開き、人々の愛国心を高めようとしています。

展示会には、建国以来の歴史とともに、世界で初めて月の裏側に着陸した探査機「嫦娥4号」や、初の国産空母の模型などを展示。

科学や軍事面での技術の進歩を強調することで、求心力を高める狙いがあります。

そして、アメリカとの貿易戦争で経済の減速が取りざたされる中でも、世界第2位の経済大国であると強調。

国民1人あたりの所得は40年間で24.3倍になったとして、成果を誇示し経済不安を払拭しようとしています。

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「米中貿易戦争を恐れていません」。

「これからも中国共産党は、国をさらに輝く時代に導いてくれると思います」。

 

 

このような愛国心の強い人々がいる一方で、中国共産党主導の愛国心をあおる宣伝に、冷めた見方をする人も少なくありません。

いまは、中国でもネットを通じて海外の情報がたくさん入ってきますし、年間1億人を超える中国人が海外旅行に行き、多様な価値観に触れる時代なので、露骨な宣伝だけでは、そう簡単に信じません。

このため、愛国心に染まる人と、冷めた見方をする人に分かれていっているようにも感じます。

 

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キーワードは「曲がり角?」。

中国は、課題を抱えるなかであさって建国70年の節目を迎えます。

習主席は一党支配の正しさを強調する演説をするはずで、私は、そこに現状への危機感がどのくらいにじむのか、注目しています。

共産党が、この先も、国民の支持をつなぎとめていくことができるのか。

70年目以降の今後のかじ取りは、これまでより格段に難しくなるはずです。

長い目でみると中国は、歴史の1つの曲がり角にきているのかもしれません。

 

 

 

【この日の時間割】

1.お祝いムードのウラに課題も 中国建国70年

2.アメリカvsイラン 仲介のカギはあの国!?

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年10月6日のゲストは、初登場!トラウデン直美さんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:18:00 | 固定リンク


2019年09月26日 (木)

1人の少女から 広がる温暖化防止デモ

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2019年9月22日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの渡辺徹さん、国際部の花澤雄一郎デスクです。

 

東京・渋谷では、9月20日に地球温暖化に対するデモ活動が行われました。

「地球を守ろう」を合い言葉に、若者たちが大行進したんです。

この動きは、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジアと世界中で広がっています。

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この大きく動いている地球温暖化について、国際部の花澤雄一郎デスクが解説しました。 03

デモは、全世界で合わせて400万人が参加する史上最大規模となりました。

世界中で、温暖化に対して危機感が高まっていて、特に若者が立ち上がっています。

 

あす(23日の月曜日)、国連で「温暖化対策サミット」が開かれるんです。(9月22日の放送日時点)

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8月25日のせかいまでも温暖化について解説しましたが、地球温暖化の原因は、増えすぎた温室効果ガス。

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温暖化の原因とされる温室効果ガスの「オンダンカデガス」が登場しました。

この温室効果ガスの影響で、世界の平均気温は、18世紀に始まった産業革命のころから、およそ1度上がっています。

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気温が上がっているために、水の循環が極端に、激しくなってきています。

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どういうことかというと、雨が降らないところはさらに乾いて干ばつが進み、雨が降るところは大雨になっているんです。

そこで、温暖化を食い止めようと決めたのが「パリ協定」でした。

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平均気温の上昇を、産業革命から1.5度に抑えようと各国が目標を作っています。

この1.5度は「これ以上、上がったら危険」というラインだと言われています。

しかし、パリ協定の対策では不十分で、このままでは温暖化が止められなくなると危機感を強めているのが国連です。

「温暖化対策サミット」では、パリ協定をさらに超える高いレベルの計画を発表してほしいと各国に求めています。

ここに招待されたのが、スウェーデンの16歳の少女です。

ヨーロッパでは、この少女の活動が若者たちに広がっているんです。

 

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「人類最大の危機に直面しているのに大人たちはきちんと対応していない」。

グレタ・トゥーンベリさんは、8歳のときから地球温暖化に関心を持ち、なぜ誰も深刻に考えないのか、疑問に思ってきたと言います。

「温暖化を止めるために学校を休む」。

グレタさんは去年8月、たった1人で議会の前に座り込み、温暖化対策を訴え始めました。

毎週金曜日に学校を休み訴えを続けていると、徐々に賛同する人が増えていきました。

活動は「未来のための金曜日」と呼ばれるようになり、今や世界中の若者たちに共感が広がっています。

 

先月、スイスで開かれたイベントには、およそ450人が集まりました。

イベントにはグレタさんも参加し、

「より大きな影響を受ける若い世代の人たちが立ち上がるべきだ」。

「未来は私たちのもの地球規模の問題に世界中の人が協力することが大切」と、訴えました。

 

グレタさんの訴えに強く共感したのが、デンマークから参加した、ラウラ・ビンストロップさんです。

グレタさんと同じ16歳。

温暖化対策は大人がやるべきことだと思っていたラウラさん。

しかし、同い年のグレタさんの活動を知り感動したと言います。

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「グレタさんは素晴らしいです。彼女が行動しなければ誰もここにいなかった」。

自分たちの世代が行動すべきだと感じたラウラさんは、デンマークでグレタさんのように訴えてきました。

「グレタさんの声に耳を傾けたことで、彼女の発言や行動が意義深いものだと理解できたんです。温暖化の影響を受ける全ての人そして未来の世代のために私は闘いたいです」。

 

 

グレタさんがたった1人で始めた行動が、ヨーロッパ、そして世界に広がって、温暖化への危機感が高まってきたんです。

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20日の金曜日、ニューヨークで行われたデモで、グレタさんが演説しました。

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「私たちはただ傍観するつもりはない。科学のもとに団結し、この危機がさらに悪化することを防ぐため出来る事は何でもする覚悟だ。私たちにも安全な未来を」。

 

グレタさんの活動は、若い人たちに影響を与えているだけではないんです。

ヨーロッパでは、政治も動かしているんです。

5月にEUの加盟国で作るヨーロッパ議会の選挙があったんですが、環境問題を訴える「緑の党」という政党が大躍進しました。

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グレタさんなどの活動が広がったことが温暖化対策を重視する政党が力を持つことにまでつながり、ヨーロッパでは、このエネルギーが大きな「うねり」となっているんです。

 

南太平洋の国々でも、先月、このうねりが影響する出来事があったんです。

この地域にあるツバルやマーシャル諸島などの島々は海面の上昇によって、すでに水没し始めています。

この島々は、南太平洋の国々の会議で温暖化について、世界に向けて積極的な行動を呼びかけるメッセージを出そうとしました。

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しかし、これに「待った」をかけたのが、オーストラリアです。

オーストラリアは、石炭を主な産業にしています。

だから、温暖化対策を強く主張されると困ると見られています。

さらに、オーストラリアは、この島々に対して、毎年巨額の支援をしているんです。

ですから、島々の意見を抑えられると思ったのかもしれません。

しかし、温暖化への危機感は、オーストラリアの予想を超えて高まっていて、各国が激怒して会議の場でオーストラリアを非難する事態になったんです。

この一件で、温暖化対策をしっかりやらない国は何かの機会に非難を浴びかねない、と、世界各国が受け止めました。

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ここで「オンダンカデガス」が、アメリカのトランプ大統領の写真を取り出しました。

アメリカは、ここまで説明した流れとは逆行しているんです。

 

トランプ大統領は、パリ協定からの離脱を表明しています。

トランプ大統領に限らず、大統領を支える与党・共和党というのは、そもそも温暖化対策には乗り気ではないんです。

 

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[トランプ大統領を支える共和党は、そもそも温暖化対策に乗り気じゃないんだヨーソロー]

 

共和党にとって、温暖化の規制は、経済や雇用を邪魔する存在なんです。

それに、共和党はそもそも「規制」自体が嫌いな人が多いんです。

その根底には「政府が国民を縛るのは良くない」という考え方があります。

さらに、共和党の支持者は「科学自体をあまり信じない」という傾向もあるんです。

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例えば、半数の人は進化論を信じず「人間は神がつくった」と考えています。

トランプ大統領が温暖化対策に熱心ではないのは、こうした支持者たちの声を代弁しているとも言えるんです。

 

しかし、大統領の支持者の間でも温暖化対策への関心が高まってきています。

 

 

今月アメリカを襲った大型のハリケーン。

サウスカロライナ州にも被害が出て、一時、避難命令が出されました。

ここ数年、アメリカでも異常気象が相次いでいます。

サウスカロライナ州は、共和党の支持者が多い地域ですが「温暖化はでっちあげだ」というトランプ大統領の主張などに反対する人が増えています。

「人間が原因であろうと、なかろうと、災害はますます悪化していっている」。

「大統領は支持者が科学を否定するように仕向けている。信じられないよ。科学こそ唯一の頼みじゃないか」。

 

トランプ大統領の熱狂的な支持者デビー・ドゥーリーさんは、以前はトランプ大統領と同じように温暖化は起きていないと考えていました。

しかし、ここ数年身近な場所で自然災害が相次ぎ、意識が変わったと言います。

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「洪水はひどくなり、ハリケーンも頻繁に起きるようになった。海水温が上がっているからよ。温暖化は現実なのよ」。

ドゥーリーさんはホワイトハウスを訪問しました。

温暖化が心配だと伝えたいと考えたのです。

大統領は不在でしたがホワイトハウスの高官に共和党員の中でも、危機感が高まっていることを伝えました。

「共和党の支持者も温暖化を受け入れ始めている。私は決して諦めず、これからも訴え続けていくわ」。

 

 

この動きは、世論調査の数字にも表れてきています。

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こちらは「温暖化を信じる」人の割合です。

アメリカには、トランプ大統領の共和党と、野党の民主党があります。

民主党で、温暖化を信じる人は、90%ほどですが、トランプ大統領の共和党をみてください。

これまでは半数以下だったんですが、2015年から18年のわずか3年で、64%と急激に増えました。

共和党の現職の議員たちもトランプ政権に温暖化対策を働きかけるなど変わり始めているんです。

トランプ大統領は、立場を変えざるをえなくなるかもしれません。

というのも、来年11月に大統領選挙があります。

大統領と対立する野党・民主党は、温暖化問題は格好の攻撃材料だと見て、トランプ大統領への批判を強めていこうとしています。

アメリカ全体、そして共和党支持者の間でも、温暖化への危機感が高まってきてますから、方向転換の可能性はあると思います。

 

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「歴史の転換点」。

温暖化対策を求める世界の大きなうねりは、かつてないものです。

その中で行われる国連の「温暖化対策サミット」で各国がどんな姿勢を見せるのか、大きな焦点となります。

そして、「もう大人には任せておけない」という若者たちの声は私たちにも向けられています。

日本は、この問題への関心が高いとは言えないのが現状です。

こうした声にどう応えるのか。

私たちひとりひとりの覚悟も問われます。

 

 

【この日の時間割】

1人の少女から始まった 広がる温暖化防止デモ

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年9月29日のゲストは、虻川美穂子さんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:14:32 | 固定リンク


2019年09月19日 (木)

イギリス国民うんざり EU離脱進まない議論

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2019年9月15日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのパックン、国際部の佐伯敏デスクです。

 

今週金曜日、ラグビーワールドカップが、いよいよ日本で開幕します。

ラグビー発祥の地は、イギリスだと言われているんですが、そのイギリスが大変なんです。

EU離脱をめぐって、大もめしています。

2か月前に就任したばかりのボリス・ジョンソン首相は「何が何でも離脱する」と、意気込んでいます。

 

離脱が決まった国民投票から3年、なかなか進まないEU離脱を、国際部・ヨーロッパ担当、佐伯敏デスクが解説しました。

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ラグビーのセットを使って説明していきます。

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左側が首相になったばかりのジョンソン首相、右側がイギリス議会です。

今、もめているのが、「どうやって離脱するか」です。

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離脱の期限は10月31日。50日を切っています。

 

それぞれのチームのスローガン見ていきましょう。

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ジョンソン首相の主張は「期限内に必ず離脱」。

期限内に必ず離脱、必ず来月末には離脱するというものです。

対する、議会の主張は「離脱延期」。

この離脱をまた延期しようというものなんです。

 

それぞれどういうことなのか、具体的に見ていきます。

まず、ジョンソン首相の主張、こちらご覧下さい。

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「のたれ死んだほうが、まだましだ」。

「10月31日に離脱する!」。

 

そもそも、なぜこれまで離脱できなかったのでしょうか。

離脱したあとのことについて、イギリスとEUの間で話がついておらず、合意ができていないからなんです。

離脱に備えて、イギリスとEUは新しいルールを決めておかなければいけません。

貿易や国境を通るときの手続きをどうするかなどを、1つの文書にまとめることになっているんです。

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でもその文書が、あと少しのところで合意できていません。

 

これまで合意できなかったのに、10月31日までにできるのでしょうか。

ジョンソン首相は、がんばるとは言っています。

でも、がんばっても期限までに合意出来ないかもしれません。

それでも、ジョンソン首相は「かまわず離脱する」と言っているんです。

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つまり「合意なき離脱」でも強行する、と。

議会チームは「合意なき離脱」には猛反対しています。

だから、とりあえず離脱の期限を延期することで、何とか「合意なき離脱」だけは避けようという作戦なんです。

 

ここで試合が始まりました。

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先に攻撃をしかけたのは、ジョンソン首相です。

ジョンソン首相は議会からの反対の声を封じ込めようとしました。

そこでとった手段が、議会そのものを閉めてしまうという強硬手段です。

これは、かなり異例のことです。

 

次は、議会チームが押し返しました。

どういう作戦かというと、議会側は議会が閉会する前のわずかな時間を使って、ある手を打ちました。

ジョンソン首相の動きを法律の力で縛ってしまおうという作戦です。

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それが「離脱延期法」です。

これは、ジョンソン首相に「合意がまとまらなければ、EUに離脱の期限を3か月間先延ばしにするようお願いしなさい」と命じるものです。

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これにより「合意なき離脱」が押し通されるのを防ごうというのです。

実はジョンソン首相側の与党の議員のなかにも「合意なき離脱」は心配だという人もいて、その結果、20人以上が寝返って、法律が成立したんです。

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もしジョンソン首相がこれを無視して「合意なき離脱」をしたら、法律違反になります。

そうなれば逮捕される可能性すらあるんです。

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これで「合意なき離脱」の可能性はなくなったように見えますが、そうでもないんです。

議会の言いなりになりたくないジョンソン首相は、議会を解散して選挙をしようと提案しました。

しかし、これはうまくいきませんでした。

それでもジョンソン首相はあきらめずに「期限の延期は絶対にしない」と言っていて、今は法律違反にならない抜け道を探しているのではないかとみられているんです。

だから「合意なき離脱」の可能性は消えていないんです。

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ジョンソン首相は、まだトライへの執念を捨てていません。

 

「合意なき離脱」が本当に実現したらどうなるのでしょうか。

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イギリスがEUから合意なき離脱をしたらどうなるのか、オレが説明しヨーソロー

 

手続きが増え道路は大渋滞。

イギリスに入ってくる荷物は、これまでの半分以下になってしまうかもしれません。

いろんなモノが手に入りにくくなり、値段も上がってしまうかもしれません。

EUの国々に行きたい時だって、手続きが増え、駅も空港も大混雑。

デモが起きて、イギリス国内は大混乱するかもしれません。

 

イギリス市民はどう思っているのか、ロンドン支局の向井支局長に聞いてみました。

 

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市民生活への影響は、連日報道され、大きな関心が集まっています。

そこで、今、市民が離脱についてどう思っているのか。

街頭で、ひとことで表現してもらいました。

 

『Happy』(うれしい)…離脱を心待ちにしているよ。イギリスのことはイギリスが決められる国になるんだ。

『Leave』(離脱して)…国民投票の結果なんだから。離脱すべきだ。

『Terrible』(ひどい)…輸入が難しくなるでしょう。経済にとってよくない。

『Frustrated』(イライラ)…合意なき離脱は反対。首相のやり方は問題です。

 

そして取材していて、最近よく聞くのが、次のような声なんです。

『Sorry』(残念)…ごたごたが長引いて、本当に疲れたわ。

『Confused』(混乱)…国民は混乱しているわ。今の状態も今後もわからないもの。

 

ジョンソン首相は今も、ことあるごとに来月末に離脱すると言っていますから、どんな混乱を招こうとも、何らかの手を打って強行する可能性があります。

というのも、ジョンソン首相にしてみれば、これで公約を守ることができれば、みずからの求心力を強めることができるからです。

ただ逆に守れなかったとなると信用を失ってしまいます。

実のところ、ジョンソン首相にとっては、背に腹は代えられないということかもしれません。

一方で、離脱を巡る市民の疲れやいらだちは、いよいよ高まっています。

この声を首相と議会がどう受け止めるのか。

3年に及ぶ議論は、来月の期限に向けていよいよ大詰めを迎えています。

 

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「ノーサイドのない試合」。

ノーサイドとは、試合が終われば敵味方はない、という精神です。

離脱のためなら、なりふり構わないジョンソン首相の登場で、試合終了がもしかしたら近づいてきているのではないか、と言う雰囲気です。

でも結果がどっちに転んでも、試合が終わって握手と言うことは、もはやなさそうです。

EU離脱は経済などの側面にとどまらず、イギリスが誇った民主主義をおとしめた出来事として記憶されるかもしれません。

 

 

 

【この日の時間割】

1.イギリス国民うんざり #EU離脱 進まない議論

 

2.異例の再選挙で政権は どうなる?イスラエル

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イスラエルの再選挙も、佐伯敏デスクが解説しました。

 

3.エチオピアで人気の歌 歌詞に日本の地名が…

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年9月22日のゲストは、初登場!渡辺徹さんです。

 

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:14:00 | 固定リンク


2019年09月12日 (木)

ウラン濃縮据え置き 核合意イランの本音は

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2019年9月8日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの鈴木ちなみさん、国際部の薮英季デスクです。

 

ふさふさもふもふのペルシャネコが大好きなMr.シップ。

伸さんとネコカフェへ。

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ペルシャといえば、あの国。

イランです。

核開発を巡ってアメリカと激しく対立してきました。

ところが、イランのロウハニ大統領が「国益にかなうなら、トランプ大統領と会うこともためらわない」。

一体、どういうこと?

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イランのいまを国際部中東担当・藪英季デスクが解説しました。

イランは今週、核開発について重大な発表をしました。

それがこちら。

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「ウランの濃縮度」についてです。

ウランの使い方は、その濃縮度が「どの程度、高いか」でわかれてくるんです。

まずは現在の濃縮度。

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3から5%です。

このレベルは原発用の燃料、つまり平和的な利用の範囲です。

ところが…

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これが90%以上になると核兵器の原料になってしまいます。

この間でポイントになるのが、20%なんです。

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というのも、濃縮度を20%に高めるには、かなり時間がかかるのですが、20%からは短時間であげられるんです。

つまり20%にあげるということは、それだけ核兵器開発に近づくということなんです。

イランは牽制を強めていたので、私も警戒していましたが、今回は、まったく引き上げなかったんです。

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そもそもなぜイランは、濃縮度を引き上げようとしていたのでしょうか。

 

イランは4年前、アメリカとヨーロッパなどの国と、このウラン濃縮度を低い数値のまま引き上げないと約束したんです。

それが、イランの「核合意」です。

こちらのセットで詳しく説明します。

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イランにちなんで、じゅうたんのセットです。

核合意を結んだイランとアメリカ、ヨーロッパなどが仲よく集まっていますね。

イランにはかつて、核兵器開発の疑惑が持ち上がっていました。

そこでアメリカやヨーロッパがこれをやめさせようとイランと何年も交渉し、核合意を結んだんです。

 

その内容が、イランが核開発を大幅に制限する代わりに、各国が経済制裁を解除するというものです。

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この合意は、外交交渉で核開発を防いだと評価されてきました。

しかし、アメリカは去年、世界の反対を押し切るかたちで、一方的に離脱しました。

これを決断したのが、トランプ大統領です。

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そして、イランへの経済制裁を再発動、強化させたことでイラン経済はどんどん悪くなっていきました。

イランにしてみれば、経済にプラスになるから受け入れたのに、約束が違うではないかとなったわけです。このため、ならば自分たちも核合意には従わないと対抗措置を打ち出しているのです。

 

イランの情勢は決してひと事ではありません。

というのも、その行方は世界に大きな影響を与えるからなんです。

 

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イラン周辺地域の安定っていうのは世界や日本にとって、とっても重要なんだヨーソロー

 

長いあいだアメリカと対立してきた世界有数の「反米国家」イランは、周りの国にいる武装勢力に、武器やお金を渡して、中東での影響力を強めています。

それに対抗してアメリカは、親米の国々に部隊を駐留させたり武器を売ったりしています。

そのため、中東は、イランを中心とした反米勢力と、親米の国々がにらみ合う場所になっているんです。

しかも、イランの隣にあるホルムズ海峡は、中東からの原油を運ぶ世界中のタンカーがひっきりなしに通っていて、もしも戦争が起きたら、世界経済は大混乱してしまうんです。

日本の原油も、8割以上がホルムズ海峡を通って運ばれているため、影響はすごく大きいんです。

 

イランとアメリカ、緊張関係が続いていますが、今回、イランはなぜ濃縮度を引き上げなかったのでしょうか。

実はこれ、核合意に参加しているもうひとつの当事国、ヨーロッパの国々へのメッセージなんです。

それはずばり、経済支援です。

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ヨーロッパはイランを何とか支えようとしています。

「核合意」は大切だから、維持したいと考えているんです。

そして今月、フランスはおよそ1兆6000億円規模の経済支援を申し出ました。

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この話し合いは、まだまとまっていませんが、イランにしてみればこの提案をご破算にしたくない。

なので、過激な行動を抑えた、つまり濃縮度を引き上げなかったと考えられます。

 

しかし、ここで問題になるのが、アメリカです。

フランスがイランにお金を送ろうにも、アメリカの制裁が邪魔になって送ることが出来ないんです。

実は国際的にお金をやりとりするシステムは、アメリカが握っているんですね。

なので支援を出来るかどうかは、アメリカがこれを認めるかにかかっているんです。

 

こうしたなか、イラン国民からはアメリカとの対話を望む声も増えてきています。

イラン特産のペルシャじゅうたんは、欧米で人気で、生産量の8割は海外向けとされています。

しかし、この1年、輸出が大きく落ち込んでいます。

制裁の影響で海外の顧客から代金の支払いを受けられず、販売が制限されてしまっているのです。

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「海外のお客さんが、代金をイランに送ることができないんだ」。

イランの銀行では、アメリカが去年11月に発動した金融制裁で、外国とのお金のやりとりが困難になっています。

それが輸出産業に大きな打撃を与えています。

さらにイランの通貨の価値も下がり、モノの値段が上がって市民生活に深刻な影響が出ています。

「制裁はすべてを変えてしまった。世界は進歩しているのにイランだけが取り残されている」。

制裁の影響が広がるなか、市民の間ではアメリカとの対話を求める声も出始めています。

イランの人々も多く使うSNSには「対話以外に道はない」といった書き込みも目立つようになっています。

眼鏡店で働くアリ・テヘラニさんもそのひとりです。

制裁の影響で務めていた貿易会社が倒産。

なんとか再就職しましたが、収入は5分の1になり日々の生活も苦しいといいます。

「いまの状況は経済問題ではなく政治問題だ。対話によって互いが歩み寄れば、制裁も解除される。両政府が問題を解決することを願っている」。

 

 

イランの人たちが望む声が多い、アメリカとイランの対話は実現しそうなのか。

実は、トランプ大統領は、ロウハニ大統領との会談に前向きな姿勢を示しています。

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今月下旬に、ニューヨークで開かれる国連総会にあわせてその可能性を探っているともされています。

これに対してロウハニ大統領も可能性を否定していません。

 

しかしここでも問題があります。

実はイランでアメリカとの交渉の最終的な決定権を握っているのはロウハニ大統領ではないんです。

最高指導者ハメネイ師なんです。

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アメリカに大変厳しい人で、欧米を嫌っている国内の強硬派から、熱烈な支持を受けています。

そのハメネイ師は対話に反対しているんです。

 

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イラン、そしてアメリカは「スタートラインに立つのか」。

ハメネイ師が対話を受け入れるとすれば、それはアメリカ側から何らかの歩み寄りがあった時です。

そして今週のイランの判断には、核開発は引き続きおさえるので経済制裁を和らげて欲しいというメッセージが込められています。

そのメッセージをアメリカが読み解き、圧力一辺倒の政策を変化させるのか。

国連総会まで残された時間でスタートラインに立てるのか注目していきます。

 

 

 

【この日の時間割】

1.ウラン濃縮据え置き 核合意イランの本音は

2.めざせ月の南極! インド月面着陸の狙い

3.中国の野菜レストラン 人気のヒミツ

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年9月15日のゲストは、パックンです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:14:59 | 固定リンク


2019年09月05日 (木)

長老が大集合 中国ナゾの秘密会議?

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2019年9月1日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのフローラン・ダバディさん、国際部の為井貴規デスクです。

 

香港で激化する抗議活動。

そして終わりの見えない中国とアメリカとの貿易戦争。

そんな中、中国のある場所で、長老たちの秘密会議が開かれました。

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秘密会議とはどういったものなのか。

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国際部・中国担当の為井貴規デスクが、中国を象徴する龍の模型を使って解説しました。

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秘密会議は非公式の会議ですが、毎年夏に開かれていて、場所だけは分かっています。

それが北京に近い「北戴河」という海辺の町です。

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高級な別荘も立ち並ぶ避暑地で、中国共産党の指導者たちや、かつてそうした立場だった党の長老たちが集まり、毎年会議を開いています。

ことしは8月上旬から中旬に開かれたとみられています。

かつてはこの秘密会議で、最高指導部の人事や政府の重要方針が決まるとも言われていました。

ただ、いまの中国では、習近平国家主席に権力を一極集中させているので、習主席の決めた方針が覆されるとは考えづらいんですが、それでも長老たちと方針を共有する重要な場になっているとみられます。

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ただ、いまの中国は難題を抱えているため、議論が粉砕する可能性も指摘されていました。

 

その難題というのが、香港とアメリカ。

主にこの2つについて話し合われたとみられています。

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香港支局の若槻真知支局長に香港の様子を聞きました。

きょうは、SNS上で日本時間の午後2時から国際空港に向かう道を塞ごうという呼びかけがされていて、1000人以上の若者たちが空港の外に集まり、周辺の道路を一部占拠するなどしました。

空港内に入るには厳しいチェックが行われていて、建物の中にデモ隊が入らないよう警察が警戒にあたっています。

また、きのうは、もともと予定されていたデモ行進を警察が認めず主催者が中止にしましたが、多くの人が街に出て抗議の声を上げました。

路上に火をつけたり、地下鉄の駅を壊したり、と一部が過激化して各地で警察と衝突し、混乱はきょう未明まで続きました。

香港政府は市民の要求を受け入れる気配はなく、混乱収束に向けた道筋はまだ見えません。

 

 

香港について秘密会議でどう話し合われたのか、もちろん内容は発表されていませんし、正確なところはわかりません。

ただ香港の抗議活動は、中国の体制にも影響を与えかねないという強い危機感が共有されたという見方があります。

これに合わせるように、実は中国政府の出方が会議の前後で強硬さを増しているんです。

軍の指揮下にある武装警察が香港の近くに派遣されました。

香港から10キロほどしか離れていない競技場に大量の装甲車などが駐車し、武装警察の部隊が集結し、デモ隊を制圧する大規模な訓練だという映像も公開されました。

これは抗議活動に対するいわば「脅し」です。

 

香港のデモ隊は当初、容疑者の身柄を中国本土にも引き渡せるようにする条例の改正案の撤回を要求していました。

いまは、デモ隊への警察の対応を調べる独立調査委員会の設置や香港政府トップの辞任、更に誰でも立候補できる選挙の実施なども要求しています。

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これは、中国政府にとっては、受け入れがたい要求です。

しかし、武力による介入を選択するかといえば、30年前に中国で学生たちが民主化を求めた天安門事件では、軍が戦車などを使って鎮圧し世界から強い批判をあびました。

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そのため、できるかぎり武力介入を避けたいのは間違いありません。

 

この週末を前に、香港警察は抗議活動の主要な関係者を相次いで逮捕したり、抗議集会を禁止したりしました。

今後、さらに締め付けをさらに強めていく可能性があります。

デモ隊と香港政府や警察との対立は、より激しさを増しています。

 

 

今後、デモがどうなるのか、再び香港の若槻支局長に聞きました。

混乱は長期化しそうです。

一連の抗議活動が始まってもうすぐ3か月になりますが、市民の反発は一向におさまる気配がありません。

経済や市民生活にも影響は出ていますが、それ以上に抗議活動を行う人たちへの支持が大きいからです。

あすからは新学期が始まりますが、中高生や大学生の間では授業のボイコットが呼びかけられるなど、市民の支持を背景に抗議活動が続いています。

ただ、さきほど為井さんからもあったように香港政府もここに来て、より強硬になってきているんです。

8月30日には、民主派の活動家や議員らが警察に相次いで逮捕されました。

また、最近になって、香港ではある条例の適用が取りざたされています。

この条例は香港政府のトップが「緊急事態」だと判断すれば、SNSでのやりとりや集会などを幅広く制限できるというものです。

これは事実上の「戒厳令」だと指摘されていて適用すれば強い批判が予想されますが行政長官は

「暴力的な混乱を止めるために、あらゆる法律を検討する」とも発言しています。

 

この先、混乱がさらに広がれば締めつけは強まる、という構図で、何としても要求をのませようという市民と香港政府との「がまん比べ」が続きそうです。

 

 

この先どうなるのか、それを見ていくための鍵があります。

それが、龍の持っているこの箱の中にあります。

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10月1日に、中国では建国記念日を控えているんです。

 

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中国の建国記念日についてオレが説明しヨーソロー

 

共産党は権威と団結を重んじるので、これを大々的にアピールする10月1日のハレの日に、泥を塗られるようなことは許せません。

あと1か月どんな手を打ってくるのか。

武力を使った介入はあるのか。目が離せない状況が続くことになります。

 

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秘密会議ではアメリカもテーマになったと見られます。

実はアメリカと中国はきょう(9月1日)日本時間の午後1時1分に互いの輸入品に対し、関税の上乗せを実施したんです。

その関税の上乗せをアメリカが発表したのが先月1日でした。

ちょうど秘密会議が始まるかという、タイミングだったんです。     

会議の内容はわかっていないんですが、先月23日、中国は、対抗措置として関税の上乗せを発表したんです。

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習主席は、これまでも貿易摩擦において、アメリカの一方的な要求には屈しないという強い姿勢をとり続けてきました。

会議の後も、強い対応が続いているのをみると、今回、党内で団結しアメリカに対抗していくことが改めて確認されたのだと思います。

 

ただ、中国では貿易戦争の深刻な影響も出始めています。

中国東部、浙江省にある雑貨市場です。

「雑貨の都」とも呼ばれるこちらの市場でも、長引く貿易摩擦の影響が出ています。

実に7万軒を超える卸売業者が180万種類の商品を扱っていて世界中からバイヤーが訪れますが、アメリカからのバイヤーの姿はめっきり減ったといいます。

LEDを使った多くの看板を扱っているお店では、輸出の4割を占めていたアメリカ向けの売り上げが半分になってしまいました。

クリスマスに関連する商品を扱っているお店では、アメリカとは別の国に目をつけています。

経済発展が進み、クリスマス商戦が拡大しているというインドです。

アメリカからの注文が少ないなか、商売のチャンスを逃さないよう、スマホの翻訳アプリをフル活用しています。

「うちはインドからの注文が多いから、まだマシですがみんな影響があるでしょう」。

貿易戦争で、大きな変化を迫られている企業もあります。

従業員1000人の靴メーカーの社長は、ベトナムとミャンマーに作った工場にアメリカ向けの生産を移していくことにしています。

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およそ10億円の売り上げのうち2割をアメリカが占めていることから、中国国外で生産することで関税の影響を避けようと考えたのです。

また、これを機に新たな市場の開拓も検討しています。

アジアやアフリカなどへの市場拡大について、業界団体の代表のアドバイスを受けました。

「アメリカ向けには国内では、生産ができない状況です。中小企業にとって影響は非常に大きいです」。

 

 

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キーワードは「未来を決める1か月」。

10月1日の建国70年まで、きょうでちょうど1か月。

米中の貿易摩擦と香港の抗議活動の2つの難題に対して、中国は強気の一方、効果的に「打てる手」がないのが実情です。

今後、事態が鎮静化に向かうのか、それともエスカレートしてしまうのか。

特に、香港で対立がさらに激化した場合に、中国政府が武力による介入まで選択するのか。

まさに、中国の「未来を決める1か月」となるかもしれません。

 

 

 

【この日の時間割】

1.避暑地に長老が大集合 中国ナゾの秘密会議?

2.拡大の責任は大統領? アマゾン森林火災

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年9月8日のゲストは初登場!鈴木ちなみさんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:13 | 固定リンク


2019年08月29日 (木)

異常気象だけじゃない 世界が変わる!?温暖化

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2019年8月25日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストのサヘル・ローズさん、土屋敏之解説委員です。

 

「世界の天気、なんか最近、変だよな~」。

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家を壊してしまうほどの雨や、作物が枯れてしまうほどの日照り。

そして山火事。

世界で起きている異常気象、地球は大丈夫なのでしょうか。

そこで、きょうの1時間目は、もうホットけない!「地球温暖化」です。

 

温暖化問題は、いまフランスで開かれているG7サミットでも、26日に話し合われる予定です。(8月25日の放送日時点)。

現地で取材している小島記者に聞きました。

議長国フランスのマクロン大統領にとっては、本当に重要な、同時に最も難しい課題となっています。

というのも、大きいのが温暖化対策に後ろ向きなアメリカのトランプ大統領の存在です。

対策を進めたいマクロン大統領との溝は深く、トランプ大統領の方針を転換させるのは簡単ではありません。

一方で、ヨーロッパではいま、温暖化対策を求める若者の運動が各国に広がり社会現象となるなど危機感は高まっています。

サミットの開幕に先立って、会場の近くでは数千人が参加してデモも行われました。

温暖化対策を迫る声が強まっていてG7としてこうした声にどう応えるか問われています。

 

温暖化問題に詳しい土屋敏之解説委員が解説しました。

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こちらの「せかいま温室」で、地球温暖化を見ていきます。

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温室のなかに入っているのが「地球」です。

地球温暖化の原因は「温室効果ガス」。

具体的には、二酸化炭素やメタンなどのことです。

これらは、地球の空気中に言わば熱をため込む働きをするんですが、もともと空気中には自然に温室効果ガスがある程度含まれていて、これが全くなかったら地球の気温は氷点下19度ぐらいだった、とも見積もられています。

温室効果ガスが適度にあるおかげで、私たちが住みやすい温度になっているんです。

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ただ問題は、この温室効果ガスが増えすぎていて「過剰に熱をため込んで温暖化が進んでいる」ということなんです。

18世紀に産業革命が始まりましたが、この温度計はその頃の気温を0℃として、そこからどれだけ世界の平均気温が上昇しているか表しています。

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現在すでに、世界の平均気温は、およそ1度上昇しています。

「たった1度」ですが、それだけでも既に異常気象など被害も出ています。 

さらに、このまま温暖化が進むとおよそ80年後には、最大4点8度上昇するとも予測されています。

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気温が上がると海水が膨張したりして、海面が上昇します。

海抜の低い太平洋の島国などは、今すでに水没の危機にも直面しています。

さらに将来、もし南極などの氷まで溶け出すようなことになれば、もっと大幅に海面が上昇して大変な事態になってしまいます。

 

それだけではありません。

地球温暖化で鍵になるのは「水の循環が極端になる」という問題です。

ふだん陸や海からは水分が大気中に蒸発し、雲を作り雨になって循環しています。

それが、気温が上がると海や陸から蒸発する水分が増えますから、乾燥した土地はますます水分を失って乾燥が進み、干ばつなどにつながります。

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一方で、その水分が雨になって降る場所では、これまでより大雨が降ったり、強烈な台風・暴風雨に見舞われたりします。

 

具体的な場所で見てみると、日本やアジア南部などのもともと雨が多い地域では、大雨や洪水が頻発するようになっていきます。

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一方、アフリカやヨーロッパなどの降水量の少ない地域では干ばつや森林火災が相次ぐなど、各地で災害が深刻化すると考えられるんです。

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こうした温暖化は、各国の政治的な問題まで引き起こしています。

北極海にあるデンマークの自治領グリーンランドは、島の8割以上が氷に覆われていますが、その氷がいま、急速にとけています。

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本来は氷の上を走るはずの犬ぞりも、溶けた氷の水の上を走っています。

 

そんななか、この氷の中から、ある秘密が呼び覚まされようとしています。

1959年、東西冷戦のさなかに、旧ソビエトに届くミサイルを配備する計画のため、アメリカ軍の秘密基地「キャンプ・センチュリー」が氷の奥深くに建設されました。

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最大200人の兵士が駐留でき、豊富なメニューが揃った食堂や、診療所、さらには教会まで備えた大規模な基地でした。

基地内の発電には原子力が使われました。

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ところが建設開始から8年。

周囲の氷が予想以上に動き、崩壊の危険があることから基地は閉鎖されました。

アメリカ軍は、氷によって永久に封印できると考えて廃棄物を放置していましたが、温暖化によって、その想定が崩れたのです。

 

市民の間には不安と怒りの声が広がっています。

「私たちは海のものを食べていますから心配です」。

「アメリカ軍が除染するべきだったのよ!」。

 

温暖化は、グリーンランドを含めた北極海をめぐる国際情勢に大きな変化をもたらしています。

北極圏の氷が少なくなったことでアジアとヨーロッパを結ぶ新たな航路としての可能性が膨らみました。

天然資源の確保、さらに軍事拠点としての価値も高まっています。

このためトランプ大統領は今月突如、グリーンランドの買収に意欲を示しました。

「戦略的に魅力的だし関心はある。大きな不動産取り引きだ」。

 

沿岸国ではない中国も、北極海の航路を「氷上のシルクロード」と名付け、経済圏構想「一帯一路」を北極圏まで拡大しようとしています。

温暖化で北極圏の氷が少なくなったことがアメリカ、中国、ロシアの新たな覇権争いを引き起こしているのです。

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「われわれも北極圏の開発に関わりたいのです。誰も中国を止めることはできません」。

 

こうした政治的な問題まで起こしている温暖化を何とか食い止めようということで、作られたのが「パリ協定」です。

 

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パリ協定についてオレが説明しヨーソロー

 

世界の平均気温の上昇を1.5℃までに抑えることを目指している「パリ協定」。

しかし、世界で中国の次に排出量が多いアメリカのトランプ大統領は「温暖化対策にはお金がかかる」「アメリカの産業がダメになってしまう!」と、離脱を表明しました。   

 

パリ協定は「各国が温室効果ガスの削減目標を立てて提出する」取り決めですが、これまでに世界各国が提出した削減目標を全部達成できたとしても、世界の気温は3℃上昇してしまうと見積もられています。

つまり1.5℃に抑える目標には、これでもまだ不十分なんです。

それがさらにアメリカの離脱表明で、この3℃さえも怪しい、という非常にまずい状況で、国連を中心に危機感が高まっているんです。

 

去年、スウェーデンなどの科学者グループが発表した報告書によると、

ひとたび世界の平均気温が2度以上高くなると氷や永久凍土などに閉じ込められていた温室効果ガスが大気中に放出されて、対策をとっても温暖化を止められなくなる悪循環に陥ると指摘しています。

国連は、パリ協定の目標が達成されたとしてもこの現象を止められないと排出削減を訴えているのです。

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「温暖化が破滅的に進み、後戻りできなくなるのを防ぐのは人類の闘いだ」。

 

その国連が期待を寄せる新たな技術の開発がアメリカで加速しています。

東部にあるマサチューセッツ工科大学では、地球温暖化対策のイノベーションが行われています。

開発を進めている「蓄電池」は、太陽光や風力といった「再生可能エネルギー」を蓄えることを目的としています。

二酸化炭素を排出しない「再生可能エネルギー」は、発電量が天候などに左右されるため発電できないときも使えるように蓄えておく仕組みがカギとなっています。

今回、完成したのが、2000台あればニューヨーク市のピーク時の電力もまかなえる「蓄電池」。

この蓄電池の開発には、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏が少なくとも40億円を投資したとされています。

アメリカでは、巨額の投資が温暖化対策となる技術の開発に殺到しているのです。

投資は最先端のIT技術が集う西部カリフォルニア州のシリコンバレーで、特に活発に行われています。

空気中から二酸化炭素だけを吸収する装置を開発したベンチャー企業のトップは、いち早く実用化を達成したいと意気込んでいます。

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「気候変動は時間との闘いです。われわれに技術はあります。要は早急に実施できるかどうかです」。

 

ほかにも注目されているのが「水素」です。

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水素を燃料として走る水素自動車は、とても静かですが、力強く走ります。

そして、排出されるのは水だけです。

水素は燃やしても水になるだけで二酸化炭素が出ません。

この水素を太陽光や風力などの再生可能エネルギーで生産して、車の燃料として普及させられれば、有効な温暖化対策になりえます。

ただ水素自動車は、値段は下がってきていますが、普及するにはまだ高価です。

 

このように様々な技術が開発されてはいますが、1.5℃ぐらいまでに温暖化を食い止めるのに間に合うペースでは普及が進んでいないのが現実です。

最初はやはり国などが思い切った政策をとる必要があり、こうした対策を世界的に進めていく必要があります。

 

では、G7サミットでは温暖化対策を巡って、成果は望めるのでしょうか。(8月25日の放送日時点)。

実はマクロン大統領はG7で毎年発表されている首脳宣言をことしは諦めたようで、「とりまとめない」という方針を示しているんです。

トランプ大統領の合意を得るには妥協してハードルを下げる必要があるんですが、それではかえって温暖化対策にはマイナスになる、という判断です。

ですから、今回はいくつか具体策を打ち出してやる気のある国だけでやっていこうと呼びかけています。

少しでも温暖化対策を前に進めるのが狙いです。

それだけ危機感が強いってコトなんですよね。

再生可能エネルギーなどの温暖化対策にはコストがかかり、短期的には経済にマイナスの面もあります。

技術はすでにあるんですが、国民に痛みを強いるのを恐れて、各国政府が思い切った政策をとれない、長年、そういう構図が続いてきました。

ただ、温暖化は「まったなし」となっています。

各国政府の背中を押すためには、結局、国民の支持が必要なんです。

今回のG7や来月の国連総会を通じてどこまで機運を高めていけるかが鍵となりそうです。

 

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キーワードは「つながっている」です。

地球の空気はつながっていますので、自分の国はあまり努力せず他の国が削減してくれたら得になる、という言わば「ただ乗り」する誘惑というのは昔からありますが、やはり世界中の国々が「つながっている」ことを自覚して自分のこととして取り組んでいかなくてはいけません。

日本も各国と技術協力なども含め、積極的に取り組んでいく必要があります。 

 

 

 

【この日の時間割】

1.異常気象だけじゃない 世界が変わる!?温暖化

2.巨大債務&積極進出 アフリカ “中国離れ?”

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年9月1日のゲストは初登場!フローラン・ダバディさんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:15:14 | 固定リンク


2019年08月08日 (木)

優遇対象国から除外 "戦後最悪" 日韓関係は

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2019年8月4日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの高橋真麻さん、国際部の岩田明子解説委員です。

 

いま、韓国で反日感情が高まっています。

プサンの日本総領事館の壁には、日本政府を批判するチラシ。

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そして、こんな声も。

「私たちは、日本がどんなに悪いか、声をあげるべきだ」。

「東京オリンピックもボイコットだ」。

 

日本では、8月2日の金曜日、政府が韓国への輸出管理を厳しくすることを決めました。

“戦後最悪”とも言われている日韓関係、どうなるのでしょうか。

岩田明子解説委員が解説しました。

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ここからは、こちらのセットを使って説明していきます。

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日本と韓国の間に荷物を積んだMr.シップがいます。

貿易を表しています。

そして韓国には「優遇国」という看板が立っています。

「優遇国」とは、これまで「ホワイト国」と呼ばれていたものです。

 

日本は、8月2日の金曜日、大きな決断をしました。

韓国を、この「優遇国」から外すことにしたんです。

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実際には8月28日からスタートします。

「優遇国」から外れるということは、輸出管理を厳しくするということなんです。

 

そもそも「優遇国」とは何なのか、シップが説明しました。

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最近よく聞く「優遇国」ってのが何なのか、オレが説明しヨーソロー

 

全ての輸出品をチェックするのは、時間も手間もかかりすごく大変なため、

モノを「正しく管理してくれる国にはチェックを簡単にして輸出しますよ」と、日本が「特別扱い」しているのが「優遇国」です。

現在、優遇対象国はアメリカやイギリスなど、27か国。(8月4日の放送日時点)。

日本はこれまでに「優遇国」の認定を見直したことはなく、今回の「除外」は韓国が初めてのケースとなります。

 

「特別扱い」から外れた場合はどうなるのでしょうか。

日本からモノを輸出する場合には、どこでどう使われるのか毎回チェックを受けることが必要にはなりますが、宛先や用途が正しければ輸出はされるんです。

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Mr.シップが荷物を載せて、動き出しました。

荷物もちゃんと韓国に着きました。

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大事なポイントは「韓国に輸出を禁止するということではない」ということです。

チェックさえ通れば、輸出されるんです。

つまり、アジアのほかの国などと、おおむね同じ扱いなるということです。

 

では、韓国側は、禁止ではないのになぜそこまで怒っているのでしょうか。

韓国側は、今回の決定は、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題に対する報復だと主張しているんです。

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韓国の人たちがどう考えているのか、せかいま独自に取材しました。

 

「日本製品を買うのをやめよう」という呼びかけが、いま韓国国内のあちこちで行われています。

広場では抗議デモが行われ、日本に抗議の声をあげる人たちが大勢集まり、夜になってもおさまりません。

背景にあるのが、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題です。

去年、韓国の最高裁判所は、日本企業に賠償を命じる判決を相次いで言い渡しました。

韓国の人たちは、その報復として、日本が輸出管理を厳しくすることに踏み切ったと考えているのです。

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「恥知らずの図々しい経済報復をやめるべき」。

インターネット上にも、激しい怒りの声が書き込まれています。

「日本の韓国いじめが終わっても、日本製品を買わず、旅行もせず、この機会に生活習慣にしよう」。

 

その一方で、反発する韓国社会を冷ややかに見る声も上がっています。

「日本は嫌いだけど正直、筋が通っている」。

「客観的にみて日本の主張が正しい。われわれも冷静に考えるべき」。

 

SNSを使って韓国社会が冷静になるよう呼びかけている20代の男性は、日本製品を買わない運動をしている人たちに、こう呼びかけました。

「不買運動をするなら、自分たちの日韓関係の知識が本当に正しいのか、立ち止まって考えてほしい」。

「不買運動で行きすぎた行動をとる人たちだけではなくて、傍観することも状況を悪化させていると私は思います」。

 

ムン・ジェイン政権の対応にこそ問題があるという声も上がっています。

以前、大手新聞社で編集・論説の責任者だった、チョン・ギュジェさんです。

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「徴用をめぐる問題も慰安婦問題も、日本政府との合意を、ムン政権が破ったのです」。

チョンさんは、今回の日本の対応も理解できると言います。

「これまで、さまざまな問題が積み重なったために、日本政府としても、これ以上は見過ごせないと判断したのだろうと思います。決していい流れではありませんが、日本としても避けられなかった選択だったのでしょう」。

 

韓国の世論がどんな状況か、ソウルの高野支局長に聞きました。

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世論調査でもおよそ8割の人が「日本製品の購入を避ける」と答えています。

しかし、知り合いの韓国人たちと話すと、表向きは日本に否定的なことを言わざるを得ない空気があるものの、冷静な対応を望んでいる韓国人は少なくないと言います。

 

そもそも、不買運動や抗議集会などを主導しているのは、ムン政権を支持する革新系の団体で、それ以外の人たちは、まゆをひそめている面もあります。

そして、ムン政権が北朝鮮の方ばかりを見て、日韓関係を放置したためここまで悪化したんだといった声も聞かれます。

 

とはいえ、優遇される国から外されたことで国民感情が刺激されて、反日意識が高まることはありえます。

ムン政権は世論を気にしていますので、これが今後どちらに流れていくのか、注意深く見ていく必要があると思います。

 

 

日本政府は「徴用」をめぐる問題とは別だと説明しています。

韓国で多く見つかっていた不正な輸出を問題視しています。

たとえば、化学兵器の原料となるものや生物・化学兵器の実験に使える設備などが他の国に不正に輸出されていました。

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こうした兵器に転用可能なモノを不正に輸出して摘発された件数が、この4年で156件にも上っているんです。

ちなみに「優遇的な措置」を与えていない、台湾・香港は2年間で4件しかないんです。

日本は3年もの間「ちゃんと貿易管理の制度を整えて」と、韓国側に対話を呼びかけてきたんですが、応じてこなかったんです。

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だからもう「優遇国」という“特別扱い”をやめましょうということになったんです。

つまり、今回の措置は報復ではなく、安全保障が理由なんです。

日本政府は「徴用」をめぐる問題とは別だと説明していますが、これまでにも踏み切る機会はありましたので全く別物とも言い切れないと思います。

「徴用」をめぐる問題を発端に「お互いの“信頼関係”が急速に揺らいでしまったこと」。

これが背景にあると思います。

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ここで、アメリカ国旗の飛行機が飛んできました。

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今後のポイントとなるのがアメリカなんです。

アメリカのトランプ大統領は、今回、ポンペイオ国務長官に対応を任せたそうなんです。

2日、日米韓の3か国の外相の話し合いが行われましたが、その場でポンペイオ長官は「日本と韓国で仲よくして」と、深入りしませんでした。

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でも実は、その前日、日米の外相が通訳だけを交えた2人だけのやりとりをしていたんです。

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河野外相が、今回の措置や「徴用」をめぐる問題の日本の立場を説明すると、ポンペイオ長官は、「よく分かっている」と理解を示したそうです。

 

 

韓国側はどう考えているのでしょうか。再び、ソウルの高野支局長に聞きました。

実は韓国側には、日本に対して打つ手があまりない状態です。

ムン大統領は2日の閣議で「ぬすっとたけだけしい」などと、反日感情をあおるような発言を繰り返しました。

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具体策が少ない中で、国民感情に訴えて求心力を高めたいという思惑がうかがえました。

というのも、ムン大統領、いま苦しい状況にあるんです。

最優先にしてきた北朝鮮との関係は行き詰まっています。

さらに、経済が減速し失業率も上昇して、批判を浴びてきました。

そんな厳しい中で、ムン政権は来年4月に総選挙を迎えるので日本への反発を高めることで国民の目をそらし、支持を得ようとしている、そんな指摘がされています。

実際、「日本に厳しい姿勢を取ることが選挙にプラスになる」と書かれた与党の内部文書が報じられているんです。

韓国社会で、冷静な意見が強まり、大統領への批判が高まらない限り、ムン政権は、強硬な立場を維持して国際社会にアピールし、外圧によって日本の姿勢を変えようとする戦術を続けていきそうです。

 

 

日本としては、韓国がルールに則ってきちんとした対応をするまで韓国の除外を続ける方針で、その点は譲らない構えです。

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キーワードは「8月24日」。

日本と韓国は安全保障上の機密情報を共有するための協定を結んでいますが、この日が更新期限なんです。 21

韓国は「更新しないかも」と言いだしています。

ただ、北朝鮮問題もあるので、更新しないとなると、日本もアメリカも、そして韓国自身も困ることになります。

なので、アメリカのポンペイオ長官は、韓国側には、協定の更新を改めて求めると話していたそうです。

この日に向けて、アメリカ側が大きく事態を動かすような具体的な仲裁に乗り出してくるのか。

そして韓国側は、「徴用」をめぐる問題や貿易管理の制度の改善で、何らかの具体的な提案を示してくるのか、注目点です。

そして解決に向けた知恵が求められます。 

 

 

 

【この日の時間割】

1.優遇対象国から除外 “戦後最悪” 日韓関係は

2.プーチン大統領に異変!? 広がる反政権デモ

3.加速するAI兵器開発 どうする規制&歯止め

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年8月25日のゲストは、サヘル・ローズさんです。

 

※8月11日、18日の放送はありません。

 

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:09 | 固定リンク


2019年08月01日 (木)

南シナ海は誰のモノ? 中国にフィリピンが反発

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2019年7月28日の出演者のみなさんです。

左から、坂下千里子さん、永井伸一キャスター、国際部の清水一臣デスク、Mr.シップ、ゲストの宮川一朗太さんです。

 

「暑いヨーソロー。こんな時はバナナジュースで元気になるヨーソロー。」

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日本にやってくるバナナの8割以上が、フィリピン産。

そのフィリピンの人たちが今、中国に怒っているんです。

 

国際部アジア担当の清水一臣デスクが解説しました。

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フィリピンのドゥテルテ大統領、中国に対し厳しい姿勢を示すようになっています。

その原因が、南シナ海です。

こちらを使って説明していきます。

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南シナ海は、日本のさらに南にあり、中国とベトナム、フィリピン、インドネシアなどの東南アジアの国々に囲まれた海です。

しかし、中国はこちらの線で囲まれた内側の海や島はすべて自分たちのものだと主張しているんです。

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フィリピンなど周辺の国々は中国の主張に反発しています。

そして、フィリピンもこの辺の海は自分たちのものだと主張しているんです。

 

その南シナ海で、衝撃的なニュースが入ってきました。

中国が弾道ミサイル6発を南シナ海に向けて発射したんです。

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これは、新型ミサイルの発射実験だと見られていて、フィリピンはこうした中国の主張や行動に対して警戒感を強めています。

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中国は、この離れた海「南シナ海」を全部自分たちのものだと主張しています。

 

さらに中国の海南島にはこんな博物館があります。  

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南シナ海の昔の地図や沈没船から引き上げられたとする陶器などが展示されています。

博物館では2000年あまり前から中国人が南シナ海で活動していたと主張しています。

日本円で150億円以上もかけて施設を作り、南シナ海は昔から中国のものだとアピールを強めているんです。

 

そんな中、その姿勢が注目されているのがフィリピンのドゥテルテ大統領です。

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実は、ドゥテルテ大統領はこれまで中国を批判していませんでした。

なぜなら、中国と「ある取り引き」をしていたんです。

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[フィリピンのドゥテルテ大統領、南シナ海について中国と“ある取り引き”をしてたんだヨーソロー]

 

裁判でフィリピンの主張が国際的に認められましたが、ドゥテルテ大統領としては南シナ海の問題で対立を深めるよりも「いまは経済成長が大事だ、支援を引き出したほうが得だ」という考えがあり、中国から2兆5000億円もの経済支援を約束してもらったんです。

 

しかし、最近、中国への姿勢が厳しくなっています。

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「中国出て行け!」。

「フィリピンは私たちのものだ!」。

フィリピンで相次ぐ、中国への抗議デモ。

きっかけは先月、南シナ海で起きた、中国とフィリピンの漁船の衝突です。

フィリピン漁船の乗組員が海に投げ出されたのに、中国の漁船は救助せずに立ち去りました。

これで、フィリピンの人たちの怒りに火が付きました。

非難の矛先は、中国寄りの政策を進めるドゥテルテ大統領にも向けられています。

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「ドゥテルテ大統領は(帝国主義的な)中国に従う子犬のようだ。フィリピンの国民を裏切っている」。

中国の支援で作られている橋の工事は、1年経った今も1割程度しか進んでいません。

そして、合意したはずの2兆円を超える経済支援もほとんど実行されていません。

 

さらに、中国寄りの政策が原因で、生活に困る人も出ています。

街なかで目につくのは、中国人向けのレストランやスーパー。

ドゥテルテ政権は、中国人がフィリピンで働く許可を受けやすくしました。

その影響で、中国人が急増したのです。

そのため、フィリピンの人々のなかには、仕事を失った人や、家の立ち退きを迫られた人もいます。

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「ここはまるで、『中国のフィリピン省』みたい」。

 

フィリピンの多くの若者も中国のふるまいを見過ごす政府に怒りを感じています。

「中国を優遇して、フィリピン人が差別されるべきではない」。

「すでに中国人が多すぎて危機的状況だわ」。

「中国に対する政府の政策に失望しています。フィリピンの将来を中国の支配から守らなくてはいけません」。

「南シナ海を差し出した上に、何の見返りも得られていない」。

いまドゥテルテ大統領に対し、国民から厳しい目が向けられています。

 

 

中国がなぜそこまでして南シナ海にこだわるのか?

南シナ海には、石油や天然ガスなどの海底資源が豊富にあると言われているんです。

さらに、中国や日本など多くの国の船が行き交う重要な海の交通路なんです。

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ただそれ以上に中国がこだわる大きな理由があります。

それが国防です。

フィリピンの東側にはグアムがあり、アメリカ軍の基地があります。  

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沖縄などにもアメリカ軍の基地がありますが、実は中国は国防上重視している線があるんです。

それがこの線。

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アメリカに攻め込まれないように、日本から南シナ海にかけてのこの線の内側にアメリカ軍が入れないようにしたいんです。

南シナ海を支配するために中国は軍事拠点を作っています。

南シナ海にある浅瀬を埋め立てて、滑走路やレーダー施設などを作っているんです。

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さらに冒頭でお伝えした中国のミサイル発射がありましたよね。

このミサイル、新型で、狙われたら打ち落とすのが難しく、アメリカへの強いけん制だと見られています。

 

ただ、アメリカとしても中国が南シナ海でこれ以上やりたい放題にさせるわけにはいきません。

トランプ政権も一歩も退かない考えです。

特に新型のミサイルには危機感を強めて、対抗していこうとしていて米中の対立はさらに深まっています。

そのなかでフィリピンのドゥテルテ大統領も最近、こんな発言をしています。

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「アメリカが中国の前に艦隊を送るならそれに加わる」。

 

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今回のキーワードは「待ったなし」。

ミサイル発射で米中の緊張が一段と高まったのは間違いありません。

日本の船も南シナ海を多く行き交っているだけに、決して他人事ではありません。

「争いの海」とも言える南シナ海を「平和な海」にするため、有効な手立てを見つけることが出来るのか、まさに「待ったなし」の状況です。

 

 

 

【この日の時間割】

1. 南シナ海は誰のモノ? 中国にフィリピンが反発

2. イギリスとも対立イラン 「ウラン濃縮●%」に注目

3. 日本人の若者がケニアへ アフリカ農業に流通を

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年8月4日のゲストは、高橋真麻さんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:01 | 固定リンク


2019年07月25日 (木)

貿易戦争だけじゃない!? 世界経済ピンチの理由

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2019年7月21日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの濱田龍臣さん、国際部の田中健太郎デスクです。

 

きょうのテーマはずばり、「世界経済」です。

いま「世界経済」が心配な状況なんです。

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国際部・経済担当の田中健太郎デスクが解説しました。

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中国やアメリカ、それに日本やヨーロッパ、世界中で景気の雲行きがあやしくなっています。

 

こちらのセットで解説していきます。

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砂浜には中国の習近平国家主席と、アメリカのトランプ大統領が日光浴しています。

トランプさんの方は晴れていますが、習さんの頭上には雲が広がっていますね。

 

まず中国ですが、先週発表された最新の経済成長率が「リーマンショック」の影響を受けたときを下回るほど悪かったんです。

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11年前の2008年に、リーマン・ブラザーズというアメリカの大きな証券会社が破綻しました。

深刻な不況になって家を手放す人が相次いで、アメリカでは住宅価格が暴落しました。

影響は世界中に広がり、多くの人が仕事を失いました。

日本でも、仕事を失う人が続出し、炊き出しにも長い列ができました。

アメリカの不況が日本にも影響したんですね。

 

しかし、なぜ中国経済がリーマンショックの影響をうけた時よりも悪くなっているのでしょう。

1つはアメリカとの貿易戦争ですが、もう1つがこちら。

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「借金問題」です。

これが実は大きな大きな問題なんです。

そもそもこの「借金問題」は先ほどの「リーマンショック」の時までさかのぼります。

この「海の家」を中国の企業だと思って下さい。

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「リーマンショック」のとき、中国も景気がとても悪くなりました。

そこで中国政府はどうしたかというと、たくさんの「海の家」を作りました。

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その「海の家」に「どんどん借金してもいいから営業して」と言ったんです。

働く従業員が増えて、モノを買うから景気もよくなりました。

しかし、その後、中国政府は「借金が増えすぎたから借金するのはもうやめましょう」と言い出したんです。

すると、経営できなくなる「海の家」が出てきて仕事を失う人も出てきました。

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これを現実の世界に戻すと、自動車とかモノが売れなくなったりして景気が悪くなってきたということなんです。

いまや、中国は、日本やヨーロッパからもあまりモノを買わないということになってしまいました。

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日本もヨーロッパも、中国の影響をまともに受けてしまっているんです。

中国経済、厳しい面が現れてきているんですが、中国の若者達は、それを肌で感じているようです。

 

いま、中国の若者たちの間では、喪失感や自虐的な感情など自分たちの内面を表す言葉「喪」という文字が流行しています。

喪失感など“ネガティブな感情を表現することはカッコいい”という新たな価値観を持つ若者たちが増えているのです。

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こちらは、ネガティブな感情を音楽に込めて活動している大学生の張さんです。

自虐的な歌詞が人気を集めています。

張さんは北京中心部の住宅街に自宅があり、祖父と母親と弟の4人家族です。

母親が家計を支えていますが、生活は苦しいと言います。

「中国でお金を稼ぐなんて難しいよ、この時代に生まれたからこうなったと思う」。

 

張さんは中国の急速な経済成長をみてきました。

自分も豊かになれると信じて、激しい受験競争をくぐり抜けてきましたが、経済が減速する中で、自分たちの世代は、これまでの世代ほど簡単に、豊かにはなっていかないと感じています。

「いい仕事に就いても、結局、中国ではお金を稼げないよね」。

「金持ちの子は一生金持ちだけど、貧乏の子は一生貧乏だよ」。

 

張さんは、どうすることもできない「あきらめ」や「無力感」を歌詞に込めています。

ライブには、同じ世代の若者達がつめかけ、張さんの歌に自らを重ね合わせていました。

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「私自身がネガティブなので、彼の曲を聴くと、魂が癒やされることが多いです」。

「彼らの歌は、現代社会で傷ついた若者たちのネガティブで廃れた生活を代弁していると思います」。

 

急速な経済成長に陰りが見える中国。

明るい未来を描けない若者たちに現実が重くのしかかっています。

 

 

ここまで中国をみてきましたが、アメリカの方は太陽が降り注いでいますね。

アメリカは「いいニュース」が多いんです。

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株価は最高値、失業率も50年で最低です。

しかし、中国の景気が悪くなっているので、中国と取り引きのあるアメリカの企業が工場の建設を控えるなど「悪い」動きも出てきています。

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つまり中国を覆うこの雲がアメリカにもかかり始めているんです。

こうした不安を払おうと、アメリカは、あることを10年半ぶりにやろうとしているんです。

それがこちら。

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「利下げ」です。

「利下げ」を行って、中国から伸びる雲を、アメリカにかからないようにしようとしているんです。

 

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経済の話でよく聞く「利下げ」ってのが何なのかオレが説明しヨーソロー

 

「利下げ」とは利子を下げることです。

そのため、金融機関からお金が借りやすくなり、住宅ローンや車のローンなどが組みやすくなります。

つまり、「利下げ」をすると景気が良くなるんです。

 

しかし、「利下げ」は、ここぞというときにやるものです。

今回のように景気が悪くないなかでアメリカが「利下げ」を行おうとしていることにはリスクもあるんです。

それが「バブル」です。

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かつての日本も「バブル」が崩壊し、長い不況になりました。

景気がいいのに、みんながお金を使うと、家の値段が異常に上がるなど「バブル」になる心配があります。

 

この「利下げ」を行うかどうかは今月末に決まる予定です。

まとめはこちら。

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「景気を良くする薬は」

中国はいま、莫大な「借金」を抱えながらも、景気を良くするため、実は、再び「借金」を増やそうと考えています。

一方アメリカは、株価が最高値を続ける中でも「利下げ」に踏み切ろうとしています。

いずれも景気に対する「薬」なんですが、飲む量やタイミングを誤れば、逆に、健康を損なうおそれもあります。

暗雲たれこめる世界経済は、「薬」によって、雲が晴れるのか、副作用によってさらに雲が広がるのか。

その効き目に注目すると、景気の行方を見極める手がかりが得られそうです。

 

 

 

【この日の時間割】

1. 貿易戦争だけじゃない!? 世界経済ピンチの理由

2. なぜ?NATOのトルコにロシアのミサイル

3. 治安悪化のブラジル 銃規制緩和 の波紋

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2019年7月28日のゲストは、初登場!宮川一朗太さんです。

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:07 | 固定リンク


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