アメリカ 3月3日は特別な火曜日
2020年3月1日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの井頭愛海さん、国際部の花澤雄一郎デスクです。
伸さん「ことしのひな祭り3月3日って何曜日だっけ?」。
Mr.シップ「3月3日は火曜日だよ!」。
伸さん「火曜日、チューズデーだよ」。
Mr.シップ・伸さん「えっ、スーパーチューズデー!?」。
ことしの3月3日、火曜日は「スーパーチューズデー」。
アメリカでは、大統領選挙に向けた、候補者選びの大一番です。
アメリカ大統領選挙のスーパーチューズデーについて、アメリカ担当の花澤デスクが解説しました。
トランプ大統領の相手が誰になるのか、その相手が見えてくるかも知れない、特別な火曜日、それが「スーパーチューズデー」です。
今回のスーパーチューズデーは、全米50州のうち14の州で一斉に行われます。
過去はこの日に決着が付くことが多いので、注目されているんです。
民主党の主な候補者は5人。
「ミスター格差」こと、サンダース氏、「大企業嫌い」のウォーレン氏、「個性派」ブティジェッジ氏、「ふつーのおじさん」バイデン氏。
そして6億円の資産を持つ「6兆円市長」ブルームバーグ氏です。
いま、誰がリードしているのか、こちらで見ていきましょう。
各候補の熱気球です。
その争いを気球の高さで表しました。
抜け出したのは「ミスター格差」のサンダース氏です。
この「炎」がサンダース氏を浮上させています。
2位はバイデン氏、次いでブティジェッジ氏、ウォーレン氏。
ブルームバーグ氏は、スーパーチューズデーから参戦します。
(3月1日の放送日時点)
サンダース氏は、これまでに行われた4つの州で2勝しています。
今回のスーパーチューズデーでも、世論調査ではサンダース氏が優勢で、さらにリードを広げそうです。
サンダース氏がなぜこんなに人気なのか、その理由を知るためにサンダース氏の78年間の人生を見ていきましょう。
サンダース氏は子どものころ、生活が苦しかったそうです。
大人になっても苦しい生活でした。
30代で政治の世界に飛び込みんだころから、すでに「格差をなくすべきだ」と訴えていました。
そして60代、議会でお金持ちに特に有利になる減税に反対して、1人で8時間以上という長~い演説をしたんです。
このときアメリカ中が、この人は筋金入りの「ミスター格差」だと思いました。
そして今では「革命を起こす!!」と主張してます。
アメリカでは選挙の度に、大金持ちが政治家に巨額の献金するんです。
だからサンダース氏は「これでは大金持ちに不利な政策はできない。この仕組みを変えるんだ、これは『革命』だ」と主張しています。
サンダース氏は、40年以上もこの「格差をなくす」と訴え続けているんです。
格差と闘うシンボルみたいな存在です。
[アメリカの格差がどれだけ酷いのか、オレに説明させてくれヨーソロー]
むかしのアメリカでは、お金持ちと貧しい人との格差は今よりも小さかったんだ。
なぜなら、お金持ちから税金をた~くさん取っていたからさ!
だけど、1980年代にレーガンっていう大統領が、お金持ちから取る税金をそれまでの半分以下に減らしたんだ。
これが格差が広がったきっかけのひとつだと言われているんだ。
そして今では…。
人口1%の超大金持ちが、アメリカにある財産の40%を持っているんだ。
それに、金額もすっご~く多いんだよ。
僕らの上位5人の財産を合わせると、およそ47兆円。
これってなんと、韓国の国家予算と同じぐらいなんだぞ~!
「おい!何であいつらだけ超リッチなんだ!?」
「こんなの不公平だわ!」って、
アメリカでは、格差への怒りが広がっているんだヨーソロー!
アメリカでは「大金持ちが富を独占している」という人々の怒りが、最高潮に達してるんです。
人々が日々感じている「痛み」、そこからくる格差への「怒り」が、いまのサンダース氏の勢いのもとです。
サンダース氏が「格差なくす」と一貫して訴え続けてきたことで「この人なら本当にやってくれる」という信頼が寄せられています。
「怒り」の炎でサンダース号が上がっています。
いま、将来に希望を持てない人たちが増えています。
その象徴的な現場を、ロサンゼルス及川順支局長が取材しました。
世界有数の企業が集まる西海岸のカリフォルニア州。
美しい建物が建ち並ぶ地域に、ホームレスの人たちのテントがたくさんあります。
この州で最大の政治課題と言われているのが、約57万人もいるホームレスの対策です。
カリフォルニア州のホームレスは、前の年より16%と急増し15万人を越えています。
そのうちの1人、2人の娘を持つシングルマザーは、子育てをしながら家賃を払うほどの収入を得るのは難しいといいます。
「車で寝泊まりしたり、知り合いの家やホテルを転々としたりしています。ホームレスをなくすためにもっと手厚い補助をしてほしいです」。
ホームレスが増えている最大の理由は、急激な家賃の上昇です。
好景気の中で、この地域では、1LDKの家賃が5年で30%も上がりました。
このため、仕事があっても家賃が払えず、ホームレスになる人が増えているのです。
厳しい状況の中で、高学歴の若者もホームレスになっています。
ジェシカ・プラドさん(27)は、カリフォルニア州の名門大学の大学院でジャーナリズムを専攻し、おととし卒業しました。
学生時代に家賃が払えなくなって以来、車での生活を余儀なくされています。
「一晩中働き昼は学校で疲れ果てました。しまいには住むところも失ったのです」。
1か月の収入は記事を書くなどして得られる13万円ほどで生活はぎりぎりです。
大学院の学費のために借りた学生ローンも返済できていません。
「車で生活しているのは、同年代で私だけではありません。私たちの声は政治家たちに届いていません。権力があるなら、困っている人を助けるべきです」。
アメリカの私立大学の授業料は、平均で年間およそ400万円と高額です。
このため多くの人が借金して大学に行きます。
私がアメリカで取材した際には、卒業の時点で1000万円を超える借金を背負った人たちにたくさん会いました。
そして40代、50代になっても払いきれない人が急増しています。
このローンの残高が、アメリカ全体で180兆円と、凄い金額になっていて大きな問題になっているんです。
こうした怒りに対して、サンダース氏は「学生ローンを全額免除する」。
さらに、少なくとも「公立大学の学費をゼロにする」と掲げています。
これで、多くの若者たちがサンダース氏を熱狂的に支持していて、29歳以下の3分の2の人たちが支持しているんです。
若者だけではありません。
医療への「怒り」もあります。
アメリカの医療費はとても高いんです。
日本では、ほとんどの人が公的な医療保険に入っているので、一部の負担ですみますが、アメリカでは民間の医療保険が中心で、保険料も高いので、保険に入れない人たちがいます。
医療費は、盲腸だと数百万円、ガンの治療は数千万円かかると言われています。
このため、病気にかかると、治療を受けられなかったり、莫大な借金を負ったりしてしまいます。
国民の4割が医療費の借金を抱えていて、ココにも国民の「怒り」があります。
サンダース氏は、すべての人が同じ医療を受けられるように「公的な医療保険の制度を作るぞ」と主張しています。
「怒り」を受け皿に、さらにサンダース号が浮上しています!
しかし、政策を実現するためにはお金がかかります。
これをサンダース氏は「大金持ちや大企業などの税金を高くすることでまかなうんだ」と言ってるんです。
実は、アメリカ国民の怒りの受け皿になったのはこちらの人も同じです。
トランプ大統領は「中国など外国が富を奪っている」と外国に「怒り」を向けているんですが、サンダース氏は国内の大金持ちや大企業に「怒り」を向けているんです。
サンダース氏、人々の「怒り」で、スーパーチューズデーも余裕に見えます。
しかし、そうとも言えないんです。
サンダース氏は気球を引き下ろすかも知れない「重り」も抱えています。
サンダース氏の政策は極端で、国の財政が破綻し、逆に経済を悪化させて失業者が増えてしまうとも、批判されているんです。
さらに「サンダース氏では幅広い支持を得られず、トランプ大統領には勝てない」という指摘もされています。
各候補はサンダース氏を引き下ろそうと盛んに批判しているんです。
このように弱点も抱えていますが、それでも国民の痛み、そして「怒り」に直接応える政策に支持が集まっているということで、格差への「怒り」がいかに高まっているかを表しています。
まとめは「世界を左右するアメリカの選択」。
人々の痛みからくる格差への「怒り」は、いま、アメリカだけでなく、世界で、そして日本でも高まっています。
しかし、これに本気で取り組もうという動きは広がってません。
格差を広げ続ける今のやり方を続けていくのか、格差をなくそうと強引にでも取り組んでいくのか。
今回の大統領選挙は、世界の進む方向をも左右する、重大なものとなっています。
みなさん、私たちの将来をも占うものとなる「スーパーチューズデー」にぜひ注目して下さい。
【この日の時間割】
1.新型ウイルス 韓国の対策は
2.アメリカ あさっては特別な火曜日
3.誕生!ラオス初のアイドル
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2020年3月8日のゲストは、鈴木ちなみさんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:17:31 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク