アメリカドルvs中国人民元 強いのはどっち?
2020年2月16日の出演者のみなさんです。
左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの平泉成さん、国際部の田中健太郎デスクです。
Mr.シップ「この地球儀、浮いているぞ~、伸さん!」。
伸さん「これ買ったら、世界が自分のモノになった気がするね」。
地球儀専門店にやってきた2人。
Mr.シップ&伸さん「すいません!お願いします」。
いま「世界のお金」をめぐって、これまでにない争いが始まろうとしています。
世界最強、アメリカの「ドル」に挑むのは、中国の「人民元」。
いったい、どんな争いなのでしょうか。
国際部経済担当・田中健太郎デスクが解説しました。
この「お金」をめぐって、壮大なバトルが始まりそうになっているんです。
その主役が、こちら。
アメリカの通貨「ドル」と、中国の通貨「人民元」。
いま、この2つの“通貨戦争”とも言えるような事態が、起こるとみられているんです。
“通貨戦争”を理解するために、アメリカの通貨「ドル」から説明していきましょう。
ドルはいま世界を支配している「最強の通貨」なんです。
アメリカは世界一の経済大国ですから、ドルの信頼性も非常に高いというのがその理由です。
そして、最強の通貨、ドルによってアメリカは、世界を牛耳る立場を手にしているんです。
[ドルが最強だと、なぜアメリカが世界を牛耳れるのかオレが説明しヨーソロー]
世界一の経済大国、そして世界の警察、それがアメリカ。
アメリカの強さのもとが「ドル」です。
世界中で毎日、ばく大な取り引きが行われていますが、アメリカの銀行を通っています。
それにより、アメリカはドルの動きをすべて見張ることができるのです。
だから…
言うことを聞かないどこかの国のドルの取り引きを、禁止することもできるのです。
その国は他の国との取り引きができなくなって、お金に困ってしまいます。
アメリカは、最強のドルで世界を支配しているのです。
いまの世界の状況をイメージしてみますと、こういう感じです。
ビジネスや貿易で行われる取り引きの多くは、ドルで行われています。
特に、世界の貿易でいちばん重要な、原油などエネルギーの莫大な取り引きも、大部分がドルです。
つまり、世界中の企業にとって、ドルは絶対必要なものなんです。
世界経済を握り、さらに気に入らない国には圧力をかけられる。
アメリカが世界を牛耳っていると言ったのは、こういうことなんです。
しかし、ドルを中心にした国際的な取り引きには、実は「弱点」があるんです。
こちらで説明していきます。
どこかの国にある2つの企業「ヒライズミ・カンパニー」と「チリコ・カンパニー」です。
実際には、複雑で、さまざまな取り引きがありますが、理解しやすくするために特徴を簡単にまとめて説明します。
例えば、「ヒライズミ・カンパニー」が外国の「チリコ・カンパニー」から物を買って、ドルで支払いをしたいとしましょう。
「送金ボタン」を押すと…
ドルが「ヒライズミ・カンパニー」から送られました。
「自分の国の銀行」と「アメリカの銀行」と「相手の国の銀行」で引っかかり、お金が「チリコ・カンパニー」に届くまで、ずいぶん時間がかかりました。
これが「弱点」なんです。
要するに、時間がかかるんです。
ドルを送金するときには「自分の国の銀行」「アメリカの銀行」、そして「相手の国の銀行」を経由しなければならないんです。
そして、それぞれの銀行で手数料も必要になります。
この「弱点」目をつけたのが中国です。
人民元を…
「デジタル人民元」に変えて、世界を牛耳ってしまおうと考えているようなんです。
デジタル人民元とは、ネット上でやりとりするお金のことで「デジタル通貨」と呼ばれるもののひとつです。
中国の中央銀行が発行を検討していることが、去年の秋、明らかになりました。
国の中央銀行が発行する通貨なので、みなさんご存知の電子マネーなどとは違います。
ネットということで、2つの会社のパソコンをイメージしてみましょう。
デジタル人民元を送金すると…。
あっという間に送れました!
これはあくまでイメージですが、みなさんがメールを送るのと同じです。
とても早く、しかもドルのような、手数料もかかりません。
いろいろな手続きがドルより楽になるなら、世界中の会社にとって、デジタル人民元を使ったほうが、お得になります。
もしかしたら、世界を飛び交うお金は、将来ドルからデジタル人民元になっていくかもしれません。
中国はこうして、ドルが持つ「最強の通貨」の座を奪い取るかもしれません。
デジタル人民元の発行はかなり現実的になってきているとみて、いいと思います。
アメリカはドルによる支配が揺らぐわけないと、デジタル通貨の発行については「必要ない」という立場をとってきました。
デジタル人民元が実現すれば、ドルで世界を牛耳ってきたアメリカの立場も危うくなりかねず、危機感が急激に高まっているんです。
去年11月、アメリカのハーバード大学で、ある会議が開かれました。
参加したのは、オバマ政権で国防長官を務めた、カーター氏。
クリントン政権とオバマ政権で財務長官などを歴任した、サマーズ氏。
さらに、ブッシュ政権の安全保障担当の高官など歴代政権を支えてきた大物達。
会議で行われたのはデジタル人民元が世界で使われ出すと何が起きるのか。
ホワイトハウスでの緊急会議をイメージした議論です。
そこに、緊急事態を知らせる架空のニュースが流されました。
「北朝鮮の核開発計画は、政府の予測以上に進んでいることがわかりました」。
北朝鮮が大規模なミサイル発射実験に成功したという設定です。
アメリカはドルを武器に経済制裁を科して、核ミサイルの開発をやめさせようとします。
しかし、北朝鮮はドルではなく、デジタル人民元を使っているため、制裁には効果がないことが分かりました。
ドルの代わりに人民元を使う国が増えれば、アメリカの影響力そのものが大きく損なわれるという懸念が広がっています。
参加した元閣僚などからは、経済・軍事の両面でアメリカの危機だと指摘する意見が相次ぎました。
「デジタル人民元は中国の経済力を強め、アメリカを弱くします」。
「アメリカは経済を支配できなければ影響力を失っていきます。すでに時代から取り残されようとしているんです」。
さらにアメリカもドルのデジタル化を進め、中国に対抗するべきだと訴える声も上がりました。
「ドルが強いままでいることは、安全保障の面でも重要です。いま、危機感を持って新しい技術に取り組んでいくべきなんです」。
デジタル人民元への警戒感が高まる中、先週、アメリカの中央銀行にあたるFRBのトップは、デジタル通貨の研究を進めていく方針を明らかにしました。
「私たちはデジタル通貨の長所と短所について理解を深めなければなりません」。
世界を牛耳る立場を狙う中国と、それを阻もうと躍起になるアメリカ。
これが「通貨戦争」の全貌です。
キーワードは「結局、世の中、お金がすべて?」。
私たちの生活も、お金がデジタル化して、キャッシュレス決済も身近になって、大きく変わっています。
ますます便利になるかもしれません。
でも水面下では、このお金の世界こそが、2つの大国の壮大な戦いの舞台となっています。
第2次世界大戦後、経済・軍事の両面でアメリカの力の源だったドルによる支配に、いよいよ中国が挑もうとしています。
国家の力の象徴といえる、通貨をめぐる攻防こそが、米中の“最終決戦”の場になるかもしれません。
【この日の時間割】
1.アメリカドルvs中国人民元 強いのはどっち?
2.アイルランド “島を1つの国に”?
3.猛暑&緊迫!地雷除去の最前線
これでわかった!世界のいま
NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送
出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ
2020年2月23日のゲストは、トラウデン直美さんです。
投稿者:永井伸一 | 投稿時間:16:42 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク