2020年1月22日

2020年01月22日 (水)

一時休戦したけれど... 米中貿易戦争その先は

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2020年1月19日の出演者のみなさんです。

左から、永井伸一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの東貴博さん、国際部の田中健太郎デスクです。

 

「受験シーズンということで、学問の神様、湯島天神に来たぞ!」。

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「皆さんの受験がうまくいきますように!」。

 

うまくいってほしいといえば、あの2つの国も…。

 

貿易をめぐって激しく対立してきた、アメリカと中国。

先週、トランプ大統領がにんまりするような、大きな出来事がありました。

「アメリカと中国は、かつてない重要な一歩を踏み出した」。

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仲直り…したようにも見えるけど、うまくいくのでしょうか。

国際部経済担当、田中健太郎デスクが解説しました。

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アメリカと中国の貿易戦争はおととしから始まりましたが、1月16日に大きな動きがありました。

それがこちら。

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両国が初めて合意にこぎつけて、文書に署名したんです。

世界経済の最大のリスクだった米中の貿易戦争が、これ以上は悪化しないと世界に安心感が広がりました。

 

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[そもそも、どうしてトランプ大統領が中国に貿易戦争をしかけたのか、説明しヨーソロー]

 

トランプ大統領は“アメリカは損している”と、猛烈に怒っていました。

中国との「貿易赤字」が史上最大に膨らんでいたためです。

さらに、トランプ大統領は、

“中国は、ロボットやコンピュータなどのハイテク技術をズルして手に入れている”

“「知的財産」を奪っている”

とも言っています。

そして、

“中国は国のお金をたくさん使って、中国企業の成長を助けている”

“こんなんじゃ、アメリカ企業は中国企業と公平に競争できない”

“「巨額の補助金」は許さない”

と、中国に貿易戦争をふっかけたのです。

 

 

これらのトランプ大統領の不満は、今回、解消されたのでしょうか。

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まず、中国に対する「貿易赤字」は「◯」です。

中国がアメリカから購入する農産物などを大幅に増やすことになり、赤字が減る可能性があります。

 

次に「知的財産」は「△」です。

“中国が取り締まるよう頑張ります”ということが盛り込まれましたが、実効性があるか不透明だという指摘もあります。

 

そして「巨額の補助金」は「×」です。

合意に盛り込まれてすらいないんです。

 

トランプ大統領は、不十分でもいいから合意して、貿易戦争を「一時休戦」にしました。

なぜ「一時休戦」したのか。

その背景をこちらのセットを使って、見ていきましょう。

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中国には“ビル群”、そしてアメリカには“農地”が広がっていますね。

 

まず、アメリカがどうして一時休戦したのか。

東さんが“アメリカボタン”を押してみると…

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アメリカの農家の人たちが傾きました。

農産物が中国に売れなくなって、アメリカの農家が大きな打撃を受けたんです。

中国への農産物の輸出が、半分以下にまで減少したというデータもあります。

 

これが11月に控える「大統領選挙」と関係してくるんです。

実はこの農家の人たちは、トランプ大統領にとって大切な支持基盤なんです。

トランプ大統領は再選を目指すため、農家の支持をつなぎ止めたいと思ったはずです。

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とりわけ合意の成果としてアピールしたのが、アメリカの農産物をたくさん買うことを約束させたことです。

 

合意文書に署名したとき、トランプ大統領は会場を埋め尽くす人を前にこう成果を強調しました。

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「農家はとても喜ぶぞ。中国は牛肉・豚肉・鶏肉などさらにたくさん買ってくれるぞ」。

トランプ大統領は、中国がどのくらい買うか具体的な金額を書かせたことも誇っています。

今後2年間で、農産物やエネルギーなど日本円にしてなんと20兆円余りです。

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貿易戦争の前の1.5倍にものぼる量になります。

そのため、たった1つの「◯」でも合意したということなんです。

 

一方、中国の習主席はどうして合意しようと思ったのでしょうか。

千里子さんが“中国ボタン”を押してみると…

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中国のビルが傾きました。

理由は、景気です。

中国は、貿易戦争の影響で景気が悪くなっていました。

17日に発表された去年1年間の経済成長率も、29年ぶりの低い水準まで落ち込みました。

習主席はなんとか改善させたいと思っていたはずです。

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今回の合意で、中国はアメリカにかけられていた関税の一部引き下げを約束させました。

景気減速に歯止めがかかるのを期待しています。

 

選挙を前に手柄を得たかったトランプ大統領と、景気の減速に歯止めをかけたかった習主席。

いったん妥協点を見つけて合意したということです。

 

一見収まったようにみえますが、対立はまた深まるかもしれないんです。

というのも、両国には根深い問題がいろいろあるんです。

 

それはいったい何なのか?

アメリカと中国、2つのボタンを一緒に押してみると…

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2人の下に、いつ噴き出してもおかしくなさそうな火種が…。

「中国企業排除」と書かれています。

 

アメリカで進む「中国企業排除」の実態を取材しました。

 

6年前にアメリカに進出した中国国有の鉄道車両メーカーは、ボストンやロサンゼルスの路線で受注を重ね、年々シェアを広げてきました。

ところがそこに、アメリカ政府から待ったがかかりました。

去年暮れ、中国企業の締め出しを狙った法律が成立。

中国政府の支援を受けてつくる鉄道やバスの車両について、販売を制限する条項が盛り込まれました。

この中国メーカーもその対象になりました。

スパイ行為の疑いがあると指摘されたのです。

その理由のひとつが、車両に設置されたカメラです。

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アメリカ政府は、AIを使った顔認証技術が使われ、乗客が中国政府に監視されるおそれがあるとして規制の対象にしたのです。

中国メーカーは、アメリカ側の指摘には根拠がないと反発しています。

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「車内の設備はアメリカで定められた基準をクリアしています。企業の活動を制限するようなやり方は公平ではありません」。

 

アメリカが、強硬に中国企業の排除に乗り出す背景に何があるのか。

今回NHKは、法律の成立に携わったエリック・オルソンさんに、話を聞くことができました。

オルソンさんは、企業や団体からの要望を受け、議員に制度の変更を働きかけるロビイストです。

与野党の議員の事務所を個別に訪ね、中国の車両を導入する危険性を訴えました。

乗客だけでなく、アメリカ政府中枢の情報も狙われるのではないかという懸念が法律制定につながったと証言します。

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「鉄道車両の監視カメラや車両がリモートコントロールされる危険性について、広く報じられています。中国製の鉄道車両が国防総省の近くや議事堂の下を通るとなれば、みな心配します。これが法案提出の後押しになったのです」。

 

オルソンさんに法律の制定を依頼したのは、アメリカの産業界でした。

このままでは、中国政府から巨額の補助金を受ける中国企業にアメリカの市場が独占されると危機感を強めたのです。

こうした声を背景に、アメリカ議会では、与野党を問わず中国への危機感がかつてなく高まっています。

民主党の上院議員は「中国は間違いなくアメリカの最大のライバルだ。アメリカは技術革新のリーダーの座を奪い返さなければならない」と発言しています。

 

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「この巨大国家、そして中国共産党と密接に結びつく国有企業にどうやって対抗するのでしょうか。アメリカの企業はみな民間で、それが国有の企業と競争するのは公正とはいえません」。

 

 

産業界の声を受けてアメリカ議会では、中国の脅威論が強まっています。

あのスマホで有名なハイテク企業「ファーウェイ」も排除する動きが進んでいます。

そして根深い問題はまだあります。

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「台湾」・「香港」・「ウイグル族」と書いてあります。

総統選挙が終わったばかりの台湾は、アメリカとの連携を深めていくでしょうから、中国のいらだちが強まりそうです。

また中国が、少数民族ウイグル族の多くの人を、不当に拘束しているとされる問題、

さらには、香港の問題でも、アメリカはさらに批判を強めていきそうです。

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つまり、こういったものがいつ噴き出すかわからない状態なんです。

 

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キーワードは「つかの間の休戦?」。

トランプ大統領はこの「一時休戦」を大統領選挙後まで続けるような発言もしています。

けれどそれはもっと短い「つかの間」にすぎないかもしれません。

中国が「アメリカから、たくさん買うよ」と約束しても、さすがに1.5倍という数字は、現実的ではないという指摘もあります。

これが達成できなければ、トランプ大統領は、大統領選挙を前に、また強硬な姿勢に転じる可能性もあります。

世界中がひとまず安堵したアメリカと中国の「一時休戦」。

そう長くは続かないかもしれません。

 

 

 

【この日の時間割】

1.イギリス王室衝撃発表 王子夫妻が公務退く

2.一時休戦したけれど… 米中貿易戦争その先は

3.“Theyと呼ばれたい”

 

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:永井伸一 坂下千里子 Mr.シップ

2020年1月26日のゲストは、渡辺徹さんです。

 

投稿者:永井伸一 | 投稿時間:23:54 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク


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