2018年12月20日

2018年12月20日 (木)

ファーウェイ副会長逮捕の裏には

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2018年12月16日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、国際部石山健吉デスク、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの小林綾子さん、国際部松木昭博デスクです。

 

ファーウェイ副会長逮捕のニュースについて、国際部安全保障担当・石山デスクが解説しました。

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中国の通信機器大手「ファーウェイ」の孟晩舟副会長が、アメリカから要請を受けたカナダ当局に逮捕されました。

アメリカの制裁対象となっているイラン企業と違法に取り引きし、その際、アメリカの金融機関に嘘をついたという疑いが持たれています。

 

この事件の裏側に何があるのか、こちらを使って解説します。

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こちらはアメリカの主張を表したものです。

アメリカと中国の間には、長年にわたるある“いさかい”があるんです。

 

アメリカは、中国政府が“スパイ活動”をしていると主張しているんです。

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アメリカの主張はこうです。

「中国はスパイ活動によってハイテク技術を盗んでいる」というものです。

 

その主張とファーウェイがどう関係するのか。

それはファーウェイがどんな会社か知っていくと、分かっていきます。

ファーウェイは、スマートフォンのシェアで世界2位を誇る通信機器メーカーです。

この夏、アップルのシェアを追い抜いたんです。

私たちが携帯電話で使っている通信技術は「4G」ですが、この100倍高速の次世代技術「5G」の開発でも世界をリードしています。

「ファーウェイの通信機器が、中国政府によるスパイ活動に悪用されるのではないか」とアメリカは懸念しているんです。

 

また、アメリカは、航空宇宙産業・半導体・自動運転など、さまざまなハイテク技術を持っています。

「こうした技術を狙う中国が、ファーウェイの通信技術を悪用して、通信網に流れるデータを盗むのではないか」とアメリカは主張しているんです。

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そもそもアメリカは、ファーウェイをただの中国企業とは考えていません。

アメリカは、ファーウェイが中国政府や人民解放軍と密接な関係にあるとみているんです。

だからこそ、中国政府に使われてしまうおそれがあると主張しているんです。

もしそれが本当なら、アメリカにとっては脅威です。

なぜなら、ハイテク技術は軍事と結びつきが強いからです。

アメリカの技術が中国に流れて、それをもとにさらに上回る能力を開発されたら、中国の軍事力の飛躍的な向上につながり、安全保障上の重大な脅威になると懸念を深めているんです。

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ファーウェイは、こう反論しています。

「いかなる政府や機関からも当社の技術へのアクセス、保持するデータや情報の提供を求められたことはない。」

中国政府もアメリカの主張を完全に否定しています。

 

両国にはそれぞれ言い分がありますが、この問題がここまで注目されるのにはもっと根深い争いがあります。

それはハイテク技術の覇権をめぐる争い。

その元になっているのが習近平国家主席が掲げている「中国製造2025」なんです。

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「中国製造2025」とは、次世代通信技術や宇宙産業などのハイテク分野に補助金などをどんどん投入して、アメリカを超えて世界トップに躍り出ようという壮大な計画です。

ファーウェイはその中核的な役割を果たす企業で、最重要企業とも言えます。

 

アメリカはこの計画に脅威を感じ、自分たちが握ってきたハイテク分野の覇権が中国に奪われてしまうのではないかと危機感を持っているんです。

実際に通信技術「5G」では、ファーウェイが引っ張る中国に遅れをとっているという見方もあります。

アメリカとしては、ハイテク技術の覇権が奪われることは何としても食い止めたい。

今回逮捕されたファーウェイの孟副会長は、会社の次期トップと目されているとも伝えられていますから、アメリカがいよいよ本丸に切り込んだという見方もできます。

 

 

“スパイ”なんて冷戦時代と思われるかもしれませんが、実はアメリカでは、中国の企業や個人が“スパイ”だとして摘発される事件が相次いでいるんです。

 

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[アメリカでは中国の産業スパイが次々と摘発されているんだヨーソロー]

 

アメリカは、このまま放っておくとハイテク分野で中国に追い抜かれてしまうと焦っているんです。

さらに、アメリカ議会は「中国と戦争すれば、アメリカは敗北するかもしれない」と発表しています。

そんな事態になるのを食い止めるために、スパイを摘発して、中国への技術の流出、さらなる技術の発展を抑え込もうとしているんです。

これはトランプ政権の「国家安全保障戦略」の方針にも沿った“国策”でもあり、中国に対して、「中国製造2025」の是正、見直しまで迫っているんです。

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このアメリカ側の圧力は中国にとって極めて深刻です。

スパイ容疑とは直接関係ありませんが、アメリカから経済制裁をうけて一時操業停止に追い込まれた中国の通信メーカーもあるくらいです。

そしてアメリカは今回、世界規模でファーウェイの機器の締め出しを行っています。

トランプ政権はことし8月、ファーウェイの機器を政府機関が使用することを禁止しました。

同盟国にも同じような対応を求めているとみられています。

すでにニュージーランド、オーストラリアで同調する動きが出ていて、日本政府も事実上、ファーウェイの機器を使うことを避ける見通しです。

 

これに対し、中国政府がどう出るのかというと、国内向けには、アメリカに対して厳しい姿勢で対応することをアピールすると思います。

というのも、「アメリカに対して甘い」という指摘が出れば批判の矛先が習近平指導部に向かってくるかもしれないからです。

実際には、アメリカに対して強硬一辺倒とはいかないと思いますが、「米中貿易戦争」と言われるような厳しい通商交渉が続く中、アメリカと全面対決だけは避けたいというのも本音だと思います。

 

アメリカと中国は貿易摩擦では、先日の首脳会談で、ようやく協議を開始することで合意して“一時休戦”という形になりましたが、その協議の中で、スパイやハイテク分野の問題も議題に上がります。

アメリカにとっては、貿易摩擦よりも深刻に捉えている問題なので、「スパイをやめろ」「技術を盗むな」と改めて強く突きつけるとみられています。

 

一方の中国も、国のメンツ、そして発展がかかっているだけに引くことはできず、今後この対立が深刻になるおそれもあります。

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これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:05~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2018年12月23日のゲストは、高橋真麻さんです。

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:14:43 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク


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