2018年7月12日

2018年07月12日 (木)

どうなる?トランプ政権下の移民政策

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2018年7月8日の出演者のみなさんです。

左から、芳川隆一キャスター、坂下千里子さん、Mr.シップ、ゲストの堀田茜さん、国際部高木優デスクです。

 

いまアメリカで移民政策をめぐり社会を二分する、かつてない激しい論争が巻き起こっています。

国際部の高木デスクが解説しました。

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トランプ政権による強硬な移民政策の結果、中南米の国々からアメリカに不法入国した疑いの親と子が引き離され2000人を超える子どもたちが移民保護施設に収容されました。

「虐待だ!」という声も上がり、結局トランプ大統領は親子を一緒に収容する大統領令に署名しました。

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ところが、トランプ大統領が具体的な方法を示さなかったため、関係機関は混乱。

2000人を超える子どもたちの多くはいまだ親との再会を果たしていません。

先月30日には全米700か所で抗議デモが行われ、ワシントンでは3万人が参加しました。

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注目は、アメリカに住む日系人の団体からも反対の声が上がったことです。

戦前に合法的にアメリカに渡った人たちが、日本人の血が流れているというだけで強制収容され、親子が引き離されたケースがありました。

日系人の全国組織は非難声明で「今、われわれ日系人は移民とともにある」とコメントしています。

日系人からすれば、不法移民とはいえひとごととは思えず、過ちの歴史が繰り返されてはいけないと訴えました。

このことからも、アメリカの移民問題は長年に渡って議論を巻き起こしてきた“古くて新しい”問題だとわかります。

 

なぜこんなことが起きたのでしょうか。

原因はトランプ大統領が移民政策の柱の1つとして、この春に実行に移した「不寛容政策」という政策です。

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“不法移民には一切容赦しない”=拘束すれば全員裁判にかけ、刑事責任を問うという政策です。

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不法入国者を見つけたら拘束し入国管理機関で取り調べをします。

親は裁判の判決が出るまで拘置所に入れられますが、刑事責任が問えない子どもは別の施設に収容されるのです。

この結果、親と子どもが引き裂かれることとなりました。

 

前のオバマ政権では、身柄を拘束しても裁判所の処分が決まるまでは親子一緒にアメリカ社会で生活することを認めていました。

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しかし、問題もありました。

一時的に釈放されアメリカ社会で暮らしている最中に、姿をくらませる例が少なくありませんでした。

トランプ大統領はこのやり方を「キャッチ・アンド・リリース」と言い、せっかく捕まえたのに、わざわざ犯罪者を逃した馬鹿げたやり方だと厳しく批判しました。

 

そもそもアメリカは世界最大の移民国家。

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ただ、合法的にアメリカに移り住むのは容易ではありません。

許可を取るハードルが高いため不法に入ってきた移民もたくさんいて、4400万人のうちの1100万人前後は不法移民とされています。

不法移民はアメリカ経済の底辺を担ってきたという側面があります。

白人がやりたがらない仕事もいとわないので人手不足の業種では重宝がられてきたのです。

移民でもちゃんと働いて税金を払って生活をすれば、アメリカンドリームを実現できるということです。

 

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[移民でアメリカンドリームをつかんだ人たちはたくさんいるんだヨーソロー]

 

世界から多様で優秀な移民を受け入れ続けたアメリカですが、トランプ政権が合法的な移民にも厳しい姿勢に出たことから、優秀なIT技術者たちまでがアメリカから流出しています。

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隣国のカナダはこう言った技術者に優遇策を示して、受け入れ始めています。さらにインドや中国もこうした人材獲得に躍起です。

アメリカの成長の原動力だった最先端のテクノロジーがこれまでのように生み出せなくなるかもしれません。

 

それなのになぜ、トランプ大統領は強気なのか?

トランプ大統領にとって移民政策は大事な「政治的な武器」なんです。

大統領選挙の時に「メキシコとの国境に壁を作る」という公約を掲げ一定の支持を集めたように移民政策は有権者の関心を引きつけやすい問題なんです。

 

強硬な移民政策を訴えるトランプ大統領の主張は2つ。

1つは不法移民が増えれば犯罪が増えるという主張、もう1つは不法移民がアメリカ人から仕事を奪い生活を脅かす存在だという主張です。

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しかし実際には、不法移民と犯罪率には相関関係はないとの指摘もありますし、また不法移民はアメリカ人が就きたがらない仕事についているケースも多く、職を奪っているとも言えません。

それでも移民政策にこだわるのは、分かりやすい主張が中低所得者層の白人たちに“受ける”からです。

 

この所得者層の人たちは、新しい移民によって自分たちの地位が脅かされるという危機感があります。

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アメリカは移民の増加で2050年までには白人は50%を切ります。

トランプ大統領はそうした不法移民に不満や憤りを感じている人たちの心理をくすぐる術をよく知っていて政治パフォーマンスを繰り広げているのです。

 

その1つがメキシコ国境に接するアリゾナ州の名物保安官に対する寛大な措置です。

拘束した不法移民にピンク色のパンツや服を着せて屈辱的な思いをさせていた保安官が「人種差別的だ」として有罪判決を受けましたが、トランプ大統領は去年夏この保安官に恩赦を与えました。

 

トランプ大統領は今、議会に不法移民の家族を一緒に収容できるようにする内容を盛り込んだ移民関連法案を早く承認するよう迫っています。つまり「不寛容政策」は皆さんの要求に応じて改めますよ、と。

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ただし関連法案にはメキシコとの国境での壁の建設予算、さらには合法的に入ってくる移民の制限の強化も盛り込まれています。

一部は譲る代わりに、得るものは得ようという戦略(=ディール)です。

 

トランプ大統領が強気でいられる理由の1つが、支持率の上昇です。

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さらにみずからの政策に対して、連邦最高裁判所のお墨付きが得やすくなる見通しがあるんです。

アメリカの連邦最高裁は9人の判事で構成されていますが、トランプ政権は高齢を理由に辞任する中間派の判事の後任に自分の主義主張に理解のある保守派の判事を指名して、判事の構成が5対4で明確に保守派優勢となる見通しです。

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そうなると、社会を二分するトランプ大統領の移民政策は、最終的に最高裁判所が合憲としてお墨付きを与えることになります。

 

ことし11月には議会の中間選挙があり、移民問題が争点になることは間違いありません。

ただ忘れてはならないのは、短期的には移民に強硬な政策が国民の支持を得たとしても、それがアメリカの移民大国としての地位や力を削ぐ結果になるかもしれないということです。

トランプ政権が急激な変化を求めすぎると、その反動・跳ね返りも大きいのです。

寛容さを保つのか、それとも失うのか。注視していく必要があります。

 

 

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※リハーサル時の写真も掲載しています。

 

 

これでわかった!世界のいま

NHK総合 日曜午後6:10~ 生放送

出演:芳川隆一 坂下千里子 Mr.シップ

2018年7月15日のゲストは、古坂大魔王さんです。

 

 

投稿者:芳川隆一 | 投稿時間:19:21 | カテゴリ:せかいま美術館 | 固定リンク


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