青天を衝け

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Interview
徳川慶喜役・草彅剛さんインタビュー「終わったあと、実はね、さみしかったんです」
監督を泣かせてやろうと思っていたんだけど……
Q:第40回の慶喜と栄一との最後のシーンはとても印象的でした。あのシーンの撮影のとき、何を感じていたのでしょうか?

あの日は撮影が結構押していたから眠かった(笑)。それは冗談として……あのシーンはいい意味でなんですけど、お芝居ができなかった。自分で何も表現しようと思わなかった。お芝居をしてしまうとクサく思えてしまって。カッコよく聞こえるかもしれないですが、何もしていないんです。慶喜ってどういう人だっけ?と思ったりもして。でも、そういうときって、実はすごくよくて、自分でやろうとしなくても自然と出てくるんですよね。吉沢亮くんと僕のなかで、共に過ごしてきた時間というのがあって、語らずとも語っているような。そういうシーンになったと思います。

そう、だんだん真っ白になったという感覚かもしれない。慶喜が父から将軍になりなさいと言われたり、違う場所で生まれた栄一と運命的に引き合わされたり、円四郎の死や戦もあったり。慶喜の人生にはいろんな色が塗り重なっていたのだけど、最後は全部、ファ〜って解き放たれて白紙に戻っていくような。最後には「悪いことばかりではなかった」「感謝している」「楽しかった」と、これまで言えなかったお礼とかも言えるようになって、慶喜は自分の人生をやっと認められたんじゃないかと感じました。

---最後の慶喜のセリフの「快なり!」の言い方は、監督と相談されたのでしょうか?

そうそう。あれはリハーサルのときから監督に大きめにと言われていて、本当はもっと大きく「快なり!快なり!」と父の斉昭を彷彿(ほうふつ)させるようにやってやろうかと思っていたわけですよ。そのほうがドラマチックになるんじゃないかと思ったし、僕の作戦では、本番だけそれをやって、監督を泣かせてやろうと思っていたんだけど……。実際はそうならなかったな。それをやるとクサくなっちゃう自分がいて、自然と出てくるトーンがいいなと思って。
最後、監督がなかなかカットをかけないから、「何でかなぁ」と思っていたんだけど、カメラチェックの映像を見たら、すごく余韻があってとてもいい感じになっていました。

命をかけて演じている栄一という役、そのそばにいられたことが何よりも楽しかった
Q:慶喜と栄一のシーンは、数々の名シーンが生まれましたが、吉沢亮さんにはどんなことを思いますか?

いつも吉沢亮くんと2人のシーンはすごく緊張感があって、でも心地よい安らぎもある。相対する感情が混ざっていて、それを後半の静かに暮らす慶喜の複雑な気持ちとリンクさせて自分の中で役に投影していたのかもしれません。

吉沢亮くんより僕のほうが長く生きているし、先輩でもあるんだけど、役になるとそういうのは全く関係なくて、亮くんから伝わってくるものとか、栄一に懸ける思いとか、そういうものにすごく感化されました。まっすぐな亮くんのまなざしに、僕も余計なことを考えず、ピュアなお芝居ができましたね。
本番での彼の瞬発力を目の当たりにすると、もっと頑張らなきゃという気持ちにもなりましたし、亮くんが最後まで妥協することなく自分の命をかけて演じている栄一という役、そのそばにいられたことが何よりも楽しかった。最後には、役を超えて亮くんと一緒にお仕事ができたんじゃないかと思いました。

自分が演じた慶喜という役が好きになってしまったんでしょうね
Q:クランクアップのとき、長く深々と皆さんにおじぎをする草彅さんが、とても印象的でした。

とにかく、みなさんに本当に感謝しているんです。新型コロナウイルスが猛威をふるっているなかでの撮影と放送でしたし、先のことが誰にもわからない状態で一つの作品を完成させるのは、並大抵のことではなかったですから。1話1話を楽しみにしてくださる方にしっかりとお届けできたことに感謝ですね。久しぶりのドラマをやり遂げたことで自信にもなったし、「つよちゃん、がんばったね!」って自分をいい子いい子してあげたい気持ちもあります(笑)。

---クランクアップした後、どのようなお気持ちで過ごされていますか?

終わったあと、実はね、さみしかったんです。1年演じ終えて、ホッとする気持ちが大きいのかなと思っていたんだけど、なんかね、クランクアップの翌日、起きたときから、不思議とジワジワっていうさみしさが数日あったんです。ぽっかりと穴が開くというわけではなく、テッシュペーパーに水滴を垂らすように、じわりじわりという感じ。
それはあまり自分にはないことだったので、慶喜ってそういうやつだったのかなって。なんか、ジワジワとくる役だった。「あぁ、終わってもこんなに残っているんだな」って。だからね、大好きなデニムを買ったり、必要以上に自分の好きなギターを触ったりして……。そうしないとさみしさからちょっと抜け出せなかったな。それだけ集中していたし、自分が演じた慶喜という役が好きになってしまったんでしょうね。本当にいい役だったなぁ。

最後に一つ、質問です。
もし、徳川慶喜さんがいま、目の前に現れたら、何を話しますか?

「僕は大河ドラマ『青天を衝け』であなたの役を演じました。ぜひ、オンエアを見てください」と、編集したものを慶喜さんに見てもらいます。「どうですか?心境はいかがでしょうか?これで合っていますか?」ということを、聞いてみたいですね。

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