青天を衝け

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Interview
岩崎弥太郎役・中村芝翫さんインタビュー「渋沢栄一が出会ったことがない人物を、作りたいと思いました」
ものすごく興味深い作品に参加できたと思っています
Q:『青天を衝け』にご出演が決まったときのご感想は?

渋沢栄一さんは昭和まで生きていた人ですし、ほんの100年前くらいの出来事もたくさん出てくる。100年って、つい最近のお話ですよね。そういう部分でも今回の『青天を衝け』を見ながら「少し勉強しようかな」と思っていたところに、出演のお話を頂戴しました。僕が初めて歌舞伎以外のお仕事をさせていただいた大河ドラマ『獅子の時代』(1980年)で演じた、徳川昭武も出てくる。ドラマのお仕事をやらせていただくきっかけとなった作品で、僕は当時15歳くらい。パリ万博などの描写もありましたが、ただ楽しそうな場所という印象でした。今回の『青天を衝け』でもパリ万博が描かれましたが、行くことになった理由や、薩摩とのぶつかり合いなどがすごく分かりやすくて、あらためて勉強させていただいています。ものすごく興味深い作品に参加できたと思っています。

渋沢と岩崎では山の登り方が違っていた
Q:中村芝翫さんが思う、岩崎弥太郎の人物像は?

今回は渋沢栄一が主人公なので視聴者の方から見ると、岩崎弥太郎がライバル側ですよね。でも、岩崎の考えは間違ってはいないんです。目の前に山があるとして、渋沢と岩崎では山の登り方が違っていた感じがします。国を滅亡させたいとか渋沢をつぶしたいとか、そういうことじゃないんです。弥太郎は、セリフにもあった「日本を一等国にしちゃらんといかん」ということを自分の活力としていて、本当にその思いがある人なのだと感じます。
常にアンテナを張り、いろんなことを吸収しながら生きていた人。実験的でもあったのかなとも思います。だって、あの当時、確実に「これでよし」という正解はないわけでしょ。博打(ばくち)に近いところがあったのかもしれません。

---演じるときに意識されたことはありますか?

このドラマって悪人がほとんど登場しないでしょ。そして、岩崎弥太郎も決して悪人ではない。渋沢栄一が出会ったことがない人物、今までこのドラマに出てきていないタイプの人間にしたいということは意識しましたね。
岩崎は、心と表現が一緒。何か言葉を発するときも、悪気はないけれど、おなかの奥のことがストレートに言葉や表情に出てしまう人だと感じます。考えたりする表情などはあまりせず、ストレートに言葉が出るように意識していました。

自分の中から発している言葉にならないとね
Q:第34回の岩崎弥太郎と渋沢栄一との初対面のシーンは、8分以上にも及ぶ長いシーンになりましたが…。

あのシーンは、最初、台本を読んでも理解するのが難しくて、読み込むまでに時間がかかりました。吉沢亮さんとは初めてお芝居させていただくし、彼がどのように演じるのか、ということも気にしていました。あとは、渋沢と岩崎においては有名なシーンですからね。思い入れのある方もいらっしゃると思うので、史実に大きく反してもいけないし、でもドラマなのである程度の色つけをしなくてはいけない。それを考えて演じました。
今まで使ったことのない言葉が多いので、セリフとして成立させるためにはきちんと言葉をかんで味わって消化をしないと、視聴者には伝わらない。自分の中から発している言葉にならないとね。そして、ある程度渋沢栄一を脅かしてやらないといけないし。岩崎を大きく見せなきゃいけないし。そういうことも考えながら演じました。

吉沢さんはおもしろかったですよ。目の奥にいろんなことを思っている。自分の経験をしてきたことは言葉にするけど、未開の地のことはちゃんと人の話を聞き、そのうえで判断する。だからこそ、渋沢栄一というのはあそこまでいったのだと思いますが、吉沢さんはそれをとてもよく表現されていると思います。その吉沢さんの呼吸のようなものは大事にして演じたつもりです。

お友達はドラマのスタッフだけになると思いますよ(笑)
Q:ご自身も『毛利元就』(1997年)でご経験された、大河ドラマの主演というのは、どういうものでしょうか?

長丁場の撮影中、お友達はスタッフだけになると思いますよ(笑)。1年間ひとつのドラマで、ひとりの人物の人生を描くというのは、とても大変なことです。いろんな緩急があるし、1年間勤めていくなかでは張り詰めたものが緩んでくるときもあるし、どう表現していいか、分からなくなるときもある。また、大河ドラマには大先輩の俳優さんたちや、フレッシュで勢いのある役者さんたちが次々といらっしゃいますからね。リハーサルのときもスタジオでの本番もすごく緊張します。すてきな役者さんたちには、出てくださっているなかで120%の力を出して帰っていただきたいと思いますので、主演をやらせていただいている側も、いい環境をセッティングしていなくては……とか、そんなことを当時はいろいろ考えましたね。僕のときと時代は違うけれど、吉沢さんもきっと、共通して思うことはあるのではないかと思います。

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