青天を衝け

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Interview
三野村利左衛門役・イッセー尾形さんインタビュー「まだ、這ってでも参加していたい」
あの時代、日本はこんなにエキサイティングだったのか
Q:『青天を衝け』のオファーがあったときのお気持ちを教えてください。

まだ自分が『青天を衝け』に参加するとは思っていなかったとき、「渋沢栄一って誰?」と思っていました。そのあと、経済の人だと知り、「それを大河ドラマで?」と。でも、ドラマを見始めたら入りこんでしまって…。あの時代、日本はこんなにエキサイティングだったのかと感じましたし、45分がすぐ過ぎてしまう。この作品を土台から立ち上げ、「これで1年間いくんだ!」というチームの力強さが伝わってきました。そんな印象の作品だったので、お話をいただいたときにはうれしかったですし、大船に乗った気持ちでした。
僕が演じるのは商人で、三井組を動かしていた番頭さん。お話を聞き、早速、三野村利左衛門が実際にどのようなことをしたのかが書いてある本を買って調べたのですが、こまごまとした実務を読んでも役を演じるということになかなか結び付かず、すごく難しい役だなと思いながら現場に入りました。

三野村は、どこかズレていて、心が読めない顔に思えたんです
Q:初めての登場回からキャラが立っている役でしたが、どのようにキャラクターを作っていったのでしょうか?

まずメイクさんになんとか似せてくれと頼みました。僕は演じるとき、とにかく見た目からその人になりたいタイプなんです。実際の写真を見ると、三野村は目が小さめで遠くをみているような、何を考えているかわからない風貌なんですよね。今まで出てきた武士の時代の力強い感じの人々とは違って、どこかズレていて、心が読めない顔に思えたんです。武力ではなく、人間力みたいなものに頼る商人の時代になったのだと感じ、その代表的な人物が三野村なのだと、だんだんわかってきました。今まで描かれた時代とはがらりと変わった、おもしろい質感が出ればいいなと思って演じていました。
三野村は起業、産業の元祖みたいな人。商売というのは人と人が出会うことで、肌触りだとか、感覚的なことをなしでは仕事はできない。「字が書けませぬゆえ」というセリフもありましたけど(第33回)、教養がなくても人の懐に飛び込んでいく。そんな仕事のしかたをしていた人なのでしょうね。
栄一を望遠鏡でのぞいていたり、渋沢家に上がりこんで子どもたちと福笑いをしたり、台本や演出でも三野村をチャーミングにしてくださっていたので、もう、これは、乗るしかないでしょう!

なにをやってもいいんだもん(笑)
Q:渋沢栄一とのシーンが多かったと思いますが、演じる吉沢亮さんの印象は?

吉沢くんは本当にこの仕事を大事にしている。余計なことは考えず、渋沢栄一を演じることだけをキープしている。とても頼もしいですよ。
撮影を重ねるたびに吉沢くんと演じること自体がどんどん楽しくなってね。三野村のキャラクターがどうなのかというより、吉沢くんとシーンを作る場所に行くということが、すごく楽しくなってきちゃって(笑)。吉沢くんと僕とでは、演技するうえではタイプが違うでしょ。でもいつもおもしろく返してくれて、すごく手応えがありました。吉沢くんも楽しいと思ってくれていたらいいな。

---イッセーさんから細かい演技を仕掛けていったのでしょうか?

はい。そうです。意図的に仕掛けました。アドリブというよりはもっと感覚的な、台本には沿ったニュアンスという感じかな。そういう細かい部分で、いっぱいチャレンジしています。三野村だったらこうかもしれないと、いろんな攻め方をしてみましたが、吉沢くんは全部受け止めてくれるから、四方八方から作ることができた。なにをやってもいいんだもん(笑)。
「あそこの芝居はこうしましょう」なんて打ち合わせは一切していないですよ。リハーサルのときはまだ自分が残っているのでちょっと恥ずかしくてできないんですけど、本番になると飛び込める。出たとこ勝負です。吉沢くんとほぼマンツーマンだったので、ふたりのシーンは集中して演じることができました。

こんな気持ちになるとは思わなかったんですけれど
Q:三野村さんも最後のシーンとなってしまいましたが…。

とにかく名残惜しいです。「三野村を長生きさせて」って感じ。まだ、這(は)ってでも参加していたい(笑)。キャスト発表のコメントで「10年維新が早ければとかなわぬ夢も見たかもしれません」と言いましたが、まさにそんな感じ。あと10年やらせてっていう感じ。僕もクランクインしたときは「どうしよう」という思いが強くて、最後にこんな気持ちになるとは思わなかったんですけれど、誰かを演じたからとかではなく、僕自身がこのドラマに関わることができてすごくうれしかったんでしょうね。しばらく時間がたって、『青天を衝け』に出演したときの話をするとき、役とかドラマの内容よりも、吉沢くんやドラマのスタッフさんなど、このドラマを作っている人たちと心と心を通わせたこと。そのことをまず、話すでしょうね。とってもすばらしいドラマだと思います。まだまだ、いたいなぁ……。

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