青天を衝け

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Interview
徳川慶喜役・草彅剛さんインタビュー「もしかしたら、この慶喜は将軍にならないんじゃない?」
無我夢中でセリフを言っているだけなんですけどね
Q:どのようなことを大事にして徳川慶喜を演じられていますか?

黒崎監督との最初の打ち合わせで、つかみどころがない人のほうがいいのではないかと話しました。慶喜はどうしたって将軍になるわけですが、「自分が将軍になっていいのか?」という葛藤が見え隠れする。「もしかしたら、この慶喜は将軍にならないんじゃない?」というくらいつかみどころがなくて、力が抜けた感じをねらっていこうかなと思っていました。
これは僕の見解なのですが、慶喜は、大政奉還したときでさえ、迷いながら話していたかもしれない…と思っています。先のことなんて分かっていないわけですから。だから、僕自身が意思を持って“セリフを言おう”と決めてしまうとつまらないものになっちゃうんじゃないかと思うんです。言葉では言っていても本心は違うかもしれない。本当はどう思っているか分からないような、そんなさじ加減を楽しみながら演じています。

撮影現場では無我夢中でセリフを言っているだけなんですけどね。実はそれくらいが僕はいいんです。「こう動こう」と自分の意思が出てしまうより、セリフを言ったときに勝手に動いてしまったほうがおもしろい。本心は、できればその場で動かずセリフだけ言っていたいんですけどね(笑)。

堤さんとのお芝居はすごく緊張して、そしてすごく楽しかったです
Q:堤真一さん演じる平岡円四郎との凸凹コンビが話題でしたが、堤さんとのシーンはいかがでしたか?

今回、久しぶりに堤さんとお芝居をして、すごく緊張しました。今まで何度か共演したことがあったので、舞台を一緒にやったこととか、同じドラマで演じた役のこととか、そんなことを思い出したりして。前に『恋におちたら〜僕の成功の秘密〜』(2005年)というドラマがあって、堤さんが社長で僕が堤さんの下で働いている役だったのですが、立場が逆になっているけど、もしかしてあれは慶喜と円四郎の生まれ変わりだったのかな?とか、そんなことも考えながら(笑)。

僕は堤さんの演技スタイルがすごく好きで、意識している俳優さんでもある。だからこそお芝居をするときは緊張するんですけど、この作品ではその緊張を隠さず演じるようにしていました。所作指導の先生が、堤さんと僕のシーンを見て「いい意味で時代劇に見えないね」って言っていて、僕は「それってダメじゃん!」と思う反面、実は同じように思っていたんですよね。時代設定などはあまり気にせず、見ている方に親近感を持ってもらえたら…と演じていたので、先生のその言葉は、堤さんと僕が同じ方向を向いて演技していた証しなのかなと。
堤さんとのお芝居はすごく緊張して、そしてすごく楽しかったです。

---円四郎と慶喜のシーンで一番印象に残っているシーンは?

円四郎が亡くなる前の長いシーンかな。慶喜が「自分の輝きが過ぎる」などと、普通なら人に言いにくいことを円四郎には照れずに言えてしまうような、ふたりの関係性が見える最後のシーンだったので印象に残っていますね。あとは、井伊直弼に謹慎を命じられて部屋に閉じこもった慶喜に、江戸を離れる円四郎が別れの挨拶に来るシーン。円四郎の「生き抜いてみせますよ。いつかまたあなたの家臣になるために」という言葉(第9回)。そこも印象に残っています。

吉沢くんには完全に栄一が乗り移っている
Q:渋沢栄一を演じる吉沢亮さんとのシーンも増えていますが、吉沢さんの印象はいかがですか?

吉沢くんに対しては、とにかく毎日セリフの量がすごいなと思っています。あのセリフ量だとおそらく、あらゆる時間でずっとセリフの練習をしていないと演じられないと思うんです。すごいのはセリフ量だけではなく、一緒に演技をしていると、吉沢くんが『青天を衝け』の渋沢栄一に懸けている思いがすごく伝わってくるんです。
あれだけ多くのセリフがあると、たまに少し間違えたりすることがあるんですけど、そのときに役に対するアプローチとか思いというのがかいま見えることがあるんです。吉沢くんはセリフが出てこなくても最後まで芝居をやめない。最後の最後までお芝居をしているんですよね。それを目の前にすると、すごくグッときてしまって。若いのに立派だなと思うんです。今まで僕と栄一のシーンでそのようなことは数回しかないけれど、そんな吉沢くんを見るたびに、僕も「もっとがんばらないと」って本気で思うんです。
吉沢くんには完全に栄一が乗り移っている…。それほどのすごみを感じています。

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