青天を衝け

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Interview
演出・黒崎博インタビュー「この時代を生きた多くの日本人の目線」
「最初に感じた楽しさを、しっかり表現したい
Q:『青天を衝け』をどのような作品にしたいと考えていますか?

渋沢栄一さんは、非業の死を遂げる悲劇のヒーローでもないし、向かうところ敵なしの強い武将でも、総理大臣になる人でもない。一人の庶民です。これまで、幕末を舞台にしたドラマの多くは、幕府や薩長の視点で描かれたものでした。
しかし、『青天を衝け』は、“第三の視点”で描かれます。それは一市民の視点です。それこそがこの時代を生きた多くの日本人の目線であり、一市民がどのように生き、どのように日本のことを考えていたのか。そこを大事にしたいと思っています。

大森美香さんの脚本を初めて読んだとき「とても楽しいな」と思ったんです。
この時代は、激動の時代といわれ、目まぐるしくいろんなことが起き、多くの血も流れました。でも、主人公の栄一は、根が非常に明るく、みんなが楽しく生きるためにどうすればいいのかを考えた人でした。だから、脚本を読んで最初に感じた楽しさを、しっかり表現したいと思いました。

別のドラマを撮り始めたような錯覚に陥りました
Q:渋沢栄一の物語“故郷パート”と徳川慶喜の物語“江戸パート”が並行して進んでいきますが、どのようなことを意識して演出していますか?

最初に栄一が暮らすパートを撮影し、そのあと江戸パートの撮影が始まったのですが、別のドラマを撮り始めたような錯覚に陥りました。でもその感覚こそが、この時代のまったく違う二つの日本を描くリアリティーになると思ったんです。演出家としては、撮り方やカメラワークの違い、セリフのテンポ感など、気をつけていることはあります。ただ、大森美香さんの描いたことを役者さんたちが自然に演じていれば、おのずと二つの世界観は出てきます。それを、ナチュラルに撮っていくことが大事だと思っています。
そして、この二つの世界観はこの先、渋沢栄一によって融合していきます。どんな融合を見せるのか、自分も楽しみながら撮っている感覚ですね。

吉沢さん:真っさらな状態で現場に入ってくる 草彅さん:えも言われぬ存在感があります
Q:現場での吉沢亮さんの印象はいかがですか?

吉沢さんはやっぱり相当なイケメンだなと(笑)。吉沢さんがどこまで意識しているか分からないけれど、ひとつひとつのシーンを演じるとき、真っさらな状態で現場に入ってこられるなと感じます。もちろんすごく台本を読みこんで考えてきているだろうけど、「こういうふうにしなきゃ!」と決めつけていない感じがします。
広い畑の中に渋沢家が立っているオープンセットで撮影をするのですが、その場所に立ったときの風の吹き方や、太陽の昇り方を感じて、吉沢さんの芝居がどんどん変わってきているんです。そういうことを吉沢さんはとても大事にしている、と感じます。

---草彅剛さんの印象はいかがでしょうか?

草彅さんはえも言われぬ存在感があります。「孤高の」という言葉が当てはまるでしょうか。15代将軍・徳川慶喜を演じるうえで演技として身にまとっているだけではなく、もしかするとそれは、草彅さんが役者人生の中で積み重ねてこられたことのすべてを使って表現されているのかもしれません。つくづく徳川慶喜という人物にぴったりだなと思っています。

格好つけないから、格好いい
Q:吉沢亮さん演じる渋沢栄一をどのように見せたいと思いますか?

渋沢栄一は実業家として成功しますが、名誉が欲しいとか誰かを犠牲にして上に立ちたいとか、そういう“欲”が、調べた限りではほとんど見えてこないんです。自分を飾り立てていくことには何の興味もなかった人なのかなと思っていて、僕の中ではそこが吉沢さんの印象と重なっているんですよね。
吉沢さんは飾らないそのままの姿でポンと裸で撮影に飛び込んでくれる。格好つけないから格好いいなと感じることがたくさんあるんです。

大河ドラマ『青天を衝け』は長い時間をかけて作っていくドラマなので、僕は、これは、ある意味で「吉沢亮のドキュメンタリー」だと思っています。ドラマを作っていく間、吉沢さんは日々ずっと渋沢栄一のことを考え続けるはずです。そんな吉沢さんだからこそ出てくる表情とか、気持ちとか、解釈があると思っています。その吉沢さんの感覚を信じていきたいと思います。

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