2017年10月13日 (金)つぶやく95歳 内海桂子師匠


※2017年9月15日にNHK WEB特集に掲載されました。

「日本髪を結いだして60年以上。枕は箱枕でないと落ち着かない」
先月、こんなツイートで、ネットを沸かせたのは、漫才界の大御所、内海桂子師匠です。昭和の時代、漫才コンビ「内海桂子・好江」で一世を風靡した内海さんは、現在、95歳。今も舞台に立ち続ける傍ら、ツイッターで世の中に向けて精力的につぶやいています。「思ったことを何でも書いて世間にぶつければいいの」と話す内海さん。芸にかける思い、そしてツイッターについて聞きました。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ

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<95歳のつぶやきとは>

tsu170915.2.jpg内海さんが、ツイッターのアカウントを開設したのは、7年前の87歳の時。それ以来、毎日欠かさずにつぶやき、ツイート数は3000を超えました。その話題は多岐にわたり、切れ味は抜群です。
テレビを見て鋭いつっこみ。

tsu170915.3.jpg舞台に上がる内海さんを心配する夫には。

「舞台前にトイレに行きソデに座って登場を待つ。がこの間が一番緊張すると亭主が言う。私がちゃんと舞台に立てるか心配なんだとか。今日だってスッと行ってシャキッと浪曲を披露したでしょう。やる時はやるんだから。まだまだ素人」(2017/8/4)

80年前に目撃した歴史的な事件についても。
「2.26事件は昭和11年だから、私は13歳で奉公から返され、三味線と踊りを習っていた。下町でも明治通りを兵隊さんが乗った大きなトラックや多くの車があわただしく走っているのを見て何か起こったことは察知できた。その真相を知ったのは数日後。都心で大事件が生じた慌ただしい空気は充分伝わっていた」(2017/2/25)
旧陸軍の青年将校がクーデターを起こして政府要人を殺害した事件を肌で感じ取っていました。波乱万丈の人生経験を織り込んだ投稿が評判を呼び、フォロワー数は、ついに27万人を突破。
「貴重な体験談をありがとうございます」「内海さんのツイートは胸にしみます」など、広い世代の反響が寄せられています。


<24歳年下の夫に勧められ>
内海さんがツイッターを始めたのは、24歳年下の夫(71)からの勧めでした。

tsu170915.4.jpgもともと、新聞広告の裏紙に鉛筆でマス目を引いて、気になったことや日記を書き付けていたところ、それを見た夫が、140文字でつぶやけるツイッターというものがあると教えました。
夫が「日記と違って表に出ちゃうんだけどいいですか」と聞くと、内海さんは「面白いじゃない」と応じたと言うことです。高齢のため、ツイートの入力は夫にしてもらいますが、この習慣は毎日続き、いつの間にか7年が経ちました。

tsu170915.5.jpg「ツイッターなんて、そういう生意気なこと知らなかったんだけど、今は、私を創造してくれるものの1つ」という内海さん。つぶやくネタに困らないのかと聞くと「ふつうの人がなんでもなく過ごしちゃうことも私にとっては、そうじゃないの。近所を歩いていてもネタになる話はいっぱいあるわけよ。思うことがあったら何でもツイートして、ぶつかっていけばいいの」と威勢のいい答えが返ってきました。


<弟子の「ナイツ」 ツイッターは師匠の生きがい>

tsu170915.6.jpg内海さんの弟子で人気漫才コンビ「ナイツ」の2人も師匠のツイートに刺激を受けていると言います。
「現役感丸出しじゃないですか。95歳でも隠居しているわけじゃないし、現役の芸人だから、本人は何がすごいことなのか分からない。芸人だから当たり前だろというスタンス。そこがすごいと思いますね」(塙宣之さん)
そして、「ツイッターは、師匠の生きがいになっている」と言います。
「師匠は毎日、働きたい人なんですよ、私を使えと。本当は、舞台が毎日あったら一番幸せですけど今はそうはいかない。ツイッターと桂子師匠が出会ったことで、毎日働くという夢が叶っているんですよ。これはすごいことですよ」(土屋伸之さん)

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<満身創痍の95歳現役芸人>
内海さんは、大正11年生まれ。昭和13年、16歳で漫才の初舞台をふみました。戦時中は軍隊の慰問、戦後の混乱期にはキャバレーの女給や団子売りなどさまざまな仕事も経験、苦労を重ねながら、芸人として、歩んできました。
そして、昭和25年に弟子の好江さんと漫才コンビ「内海桂子・好江」を結成。時事ネタを取り入れたテンポのよい漫才で、平成にかけて半世紀にもわたり人気を集めました。

tsu170915.8.jpg平成9年に好江さんが亡くなった後も、1人で舞台に立ち続け、今は月に6回ほど、浅草の劇場で、三味線で自作の都々逸を披露したり、若手との漫才もこなしたりします。しかし、体のほうは万全ではありません。

ことし1月には転んで左の腰を骨折して入院。厳しいリハビリを経て舞台に復帰した後、さらに6月にも転倒して、背骨を圧迫骨折しました。客の前では笑顔を絶やしませんが、最近のツイートでは痛みと闘いながら舞台に向かう強い気持ちも明かしています。
「今直立に立とうとすると激痛が走って立っていられなくなる。徹底的な診察を受ける必要があるように思うが、なにくそっという気もある。正座して三味線を弾くのになんの苦痛も無い」(2017/8/17)


<“目をつむる瞬間まで頑張りたい”>
内海さんは、今月12日、95歳の誕生日を迎えました。
「95年も生きてくると人様が経験できない世界を見ることができた。何があっても休めないという足かせを課す勇気を持って、目をつむる瞬間まで頑張りたい」(2017/9/12)
誕生日の日のツイートには、まだまだ現役でいたいという思いが込められていました。

tsu170915.9.jpg95歳を迎えるにあたって、記者が、ファンに対して何かひと言、色紙に書いてくださいとお願いすると、内海さんは墨汁をたっぷり吸った筆を使って、書いてくれました。「一つ、仕事をやり通す」力強い大きな文字で書かれた色紙を私に示しながら、内海さんは「たくさん手を出さなくていい。私のように自分の得意なことを一つやり続けて、人様の役に立つことが大事」と語ってくれました。どこまでも前向きに生きている95歳に大いに刺激を受けました。

投稿者:野町かずみ | 投稿時間:16時58分

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