2019年03月22日 (金) お年玉1億円の行方


※2019年1月9日にNHK News Up に掲載されました。

ばらまきか、夢か?新年早々、ネット上の話題をさらったZOZOTOWNを運営する前澤友作社長の総額1億円のお年玉企画。その後、当選が決まった人が続々、名乗りをあげるとともに、同じ手法で追随する経営者なども相次いでいます。そこから見えてきたこととは?

ネットワーク報道部記者 高橋大地・國仲真一郎

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<100万円 当たった!>

190109oto.2.jpgこちら、お年玉に当選した人が喜びをツイッターに記した画面。通帳には1月9日付けで100万円が振り込まれたことが記されています。
他にも同じように当選した人が続々と名乗りをあげています。

「前澤さんのお年玉当たった」
「あ、あの・・本当にありがとうございます」
「なんとなく予感はあったのと、にわかには信じられないのと、2つの気持ちが入り交じっています」


<リツイート世界最高記録!>

190109oto.3.jpgこのお祭り騒ぎを引き起こした本人のツイートがこちら。
1月5日に100人に100万円、合計1億円を現金でプレゼントする企画を公表したのです。

190109oto.4.jpgZOZO 前澤友作社長
応募は、本人のアカウントをフォローして該当のツイートをリツイートするだけ。フォロワーは瞬く間に急増し、リツイートの数も世界記録となるほどでした。応募した人も100万円が当たった際の使い道を次々につぶやきました。

「今月マイホームを購入致しました。家も広くなり、10歳の長女、3歳の長男に服をいっぱい買ってあげたいと思います」
「耕作放棄地を開墾してクリスマスツリーになる木を育てています。100万円の使い道は新たな農地の賃料・・・・」
「今日は1日かけて100万円の使い道を考えようと思います」

一方で、批判の声も相次ぎました。

「お金をどう使うかは自由かもしれないけど、さすがに品が無い」
「前澤さんは金で人の心を買えるってこと知ってるんだな」
「本当に困ってる人に寄付すればいいのになあ」


<当選したのはどんな人?>
それにしてもどんな人たちが100万円を手にしたのでしょうか。
冒頭の100万円が振り込まれた通帳の持ち主が、介護事業を経営する簗瀬寛さんです。

190109oto.5.jpgテレビにも出演し「ごぼう先生」の名前で高齢者向けの体操などを広めています。
100万円のお年玉に応募した時に「アジアのおじいちゃんおばあちゃんの笑顔をつくる旅に出かけます」と使い道をつぶやきました。

分かりやすく言うと自社の介護事業をアジア圏に展開する際の調査費用などにしたいということだそうです。
8日に当選の連絡が届き、一夜明けて通帳を見ると、100万円が振り込まれていました。
「世界記録のリツイート数の中から自分が選ばれるなんて、信じられなかったし、未だに実感が湧きません」


<お年玉以上の意味>

190109oto.6.jpg簗瀬さんは、当選をツイッターで公表するとともに、社員や家族8人に1万円ずつお年玉を配りました。

残りは介護事業などに役立てる予定ですが、今回のお年玉は“100万円の臨時収入”以上の意味があったと感じています。

というのも当選を公表して寄せられたコメントのほとんどが「頑張ってください」「楽しみにしています」と、うらやむものよりも、事業の今後を後押しするものが目立ったと言います。

「銀行の融資などでも100万円を手にすることはできますが、今回はそれ以上に、カリスマ社長に背中をポーンと押してもらったような気がします。さらに頑張らなきゃいけないなという気持ちになりました」(簗瀬さん)


<「新しい『励まし方』に」>
もう1人の当選者に話を聞くことができました。
さまざまな芸術家が集まる「シェアアトリエ」という空間を作りたいと計画している和田千裕さんです。

当選を知らせるメッセージには、「ナイスアイデアですね」と書かれていたと言うことで、「自分が取り組んでいることを肯定してくれたことが、金額以上にうれしいです」と話してくれました。

そのうえで「クラウドファンディングなどの新しい手法は出てきていますが、今回のようにお金を渡す側からアプローチするというやり方も、1つの新しい『励まし方』になるのではないでしょうか」と話していました。

こうしてみると明確な事業やアイデアを持つ人が当選したのではないか?と思われるかもしれません。
そうした分析をするツイートも多く見られます。念のため会社側に選考過程などを確認しましたが、「あくまで社長個人が行っていますので・・・」との答えでした。


<追随する経営者も>
190109oto.7.jpg前澤社長と同じような手法でお年玉企画を始める経営者も相次いでいます。
東京都内にある社内コミュニケーションアプリ開発会社「トークノート」の、小池温男社長もその1人です。
小池さんは前澤社長のツイートを見て、大きな衝撃を受けたと言います。

「たった140文字で、これだけ多くの人を盛り上げて夢や希望を与えてワクワクさせられるってすごいなと。正直なところ、嫉妬もありましたが、自分もこの波に乗るのであればできるだけ早くやった方がいい。100万円くらいだったら自分でもできると思ってツイートしたんです」

190109oto.8.jpgそして、今月7日。

「大好きな前澤さんのお年玉に乗っかりまして、皆様への日頃の感謝を込めて、10名様に10万円を現金でプレゼントします。僕をフォローいただいた上、このツイートをRTするだけ」と小池さんが投稿すると、ツイートはあっというまに拡散しました。
募集は9日までで、以後、当選者を選ぶそうです。


<通常の広告とは違う>
今回の企画について小池さんは自身や、会社について多くの人に知ってもらう「広告効果」も期待しています。
ただ小池さんは通常の広告とは違った効果があると指摘します。

「普通の広告と違うと思うのは、このツイートに触れた一人一人にもメリットがあることだと思います。普通の広告を見て、その会社やサービスについて認知することがあってもワクワクすることはありませんよね。仮に当たらなくても、そういった思いを多くの人にもってもらえる。こういった企画は、今後、さらに広がっていく可能性があるなと感じました」(小池さん)

広告という観点からはネット上にも「新しい時代の広告だ」「代理店とか広告屋とか無駄なものを通さず、純粋に大金をばらまけばいい」といった指摘も目立ちました。


<詐欺にも注意!>
一方、今回のような企画には詐欺などにも注意が必要です。
発表された直後から本人になりすました悪質なアカウントが現れています。
また、「当選した」というメッセージに加えて、振り込みの手数料名目で金銭を要求するものや、お金の送り先として住所を明かすよう求めるものも多く見られています。
ネットのお祭りに参加するには、真偽を見分ける「目」が必要で、自信がないなら近づかないというのも賢明な選択です。


<専門家はどう見る?>

190109oto.9.jpg多くの人を巻き込んだ今回の企画。
ソーシャルメディアを活用したマーケティングに詳しい徳力基彦さんは、「最初は屋根の上から札束ばらまく感じにみえたのでなんとなくもやもやするものを感じた。ただ、ふたを開けてみたら、選考を丁寧にされてる感じで、印象としてはオーディションだったのかなというイメージ」と言います。

そのうえで、「以前のルールからするとまゆをひそめる人とかがたくさんいると思うんですけど、それによって救われる人や新しいチャレンジの可能性を見つける人がいるんであれば、『みんなやってみませんか』というメッセージだと思う」と指摘しています。

1億円のお年玉という今回の企画が発端となり、時代の新たな芽を育てる動きにつながっていくのか一過性の騒ぎで終わるのか、もう少し見守りたいと思いました。

投稿者:高橋大地 | 投稿時間:14時36分

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