2018年05月22日 (火)漏れ伝わる"北朝鮮のトリビア"


※2018年4月27日にNHK News Up に掲載されました。

南北首脳会談には世界の目が注がれています。
歴史的と言われるこの会談では、ふだん国交がなく謎に包まれた北朝鮮に関する興味深い情報も漏れ伝わってきます。細かすぎてテレビやラジオでは伝えきれない情報をまとめてみました。

ネットワーク報道部記者 佐伯敏

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<トイレを持ち込み?>
「キム委員長は南北首脳会談に自分専用のトイレを同行させるもようだ」と複数の欧米メディアが伝えています。

この根拠となっているのがワシントン・ポスト紙が報じた2005年に脱北した男性の証言です。一時、キム委員長の警備にあたる部隊にいたというこの男性はワシントン・ポストに対して「北朝鮮の指導者はどこに移動しても公共のトイレは使わない。専用のトイレがあり、必ず行き先に持ち込まれる」と話しています。

その理由について「排泄物には健康状態についての情報が含まれる。残していくわけにはいかない」と。

2015年に北朝鮮専門の韓国のネットメディア「デイリーNK」は、「キム委員長が国内の施設や農場などを視察する際、車列の一部にはカスタマイズされたトイレが組み込まれている」と伝えています。

真偽のほどは分かりませんが、「秘密保持」のためトイレまで持ち込む徹底ぶりには驚きです。


<こだわりの冷麺?>
会談の冒頭、キム委員長は「大統領には遠くから運んできた冷麺をおいしく食べてほしい。率直な対話を行いたい」と述べました。

韓国大統領府の発表によると、会談後の晩さん会では、北朝鮮の首都ピョンヤンにある有名レストラン「オンニュガン(玉流館)」の冷麺が提供される予定です。

mor180427.2.jpg「ピョンヤン式冷麺」(撮影 国際部デスク)
北朝鮮は韓国側の提案を受けて、レストランのトップシェフをパンムンジョム(板門店)に派遣し、店で使っている製麺機を北朝鮮側の施設に設置したといいます。そして、まさに打ち立ての麺が晩さん会で提供される手はずです。

このレストランについて、来店したことがある国際部のあるデスクは「店は北朝鮮の人たちが食べる場所と外国人が食べる場所が分けられています。味は中国風というか、見た目が茶色くて味が濃かったイメージ。ソウルで食べる冷麺と比べてもすごくおいしかったですよ」と解説します。

そして、北朝鮮側が打ちたての麺にこだわっていると伝えると…
「え、麺?覚えてないなあ。普通の麺だったと思うけど(笑)。とにかく、ピョンヤンを訪れた人が必ず連れて行かれるレストランですよ。今回はそこのトップシェフを連れてきているというのだから最高のもてなしということなんでしょう」

大手旅行口コミサイト「トリップ・アドバイザー」によると、店の評価は5段階で上から2番目。口コミには「他の店より一人前の分量が少なく普通の男性は2人前食べるそうです」と投稿されていました。

会談を通じてこれほど注目される冷麺がどんな味なのか、ますます興味が沸きました。


<会談にはどんな意味づけが>
最後は韓国側のトリビアも一つ。

今回、両首脳はそれぞれ昼食と休憩をとったあと、軍事境界線近くで松の木を植樹しました。韓国政府の発表によると、木を植える場所は「韓国の大手財閥ヒョンデ・グループの名誉会長が1998年に牛1001頭を引き連れて訪朝したときの板門店近くの道」。

mor180427.3.jpg松の木は「休戦協定が締結された1953年に芽生えた木」で、かぶせる土は「韓国のチェジュ(済州)島の山と北朝鮮のペクトゥ(白頭)山のもの」で、ムン大統領がかける水は「ピョンヤンを流れる川の水」、キム委員長がかける水は「ソウルを流れる川の水」だということです。

何をするにも、何を使うにも意味づけを好むのは政府のこだわりでしょうか。韓国の新聞、朝鮮日報は「プレスセンターでは『(韓国政府は)会談場のちり一つにも名前を付けるのだろうか』と皮肉も飛び出した」と伝えています。今回の会談そのものにどんな意味づけをするのか注目です。

投稿者:佐伯 敏 | 投稿時間:13時48分

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