2015年02月16日 (月)閉店しない!? 閉店セールのナゾ


街でよく見かける「閉店セール」。
みなさんはどんなイメージを持っていますか。お買い得なイメージですか? 
実は、実際には閉店しているかどうか疑わしい店もあるんです。
その実態や買い物で失敗しないための心構えをお伝えします。


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【閉店しない閉店セールの店へ突撃取材!】

2015年1月、東京都内のある店で店員が大声でアピールしていたのは、「閉店セール」。
「いよいよ今日いっぱいでーす!3万円が、4万円が、あるだけ全部 3千円でございます!あした来てもやっておりませーん!さよならお別れバイバーイ!」と叫んでいました。

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ところが、10日後の2月。

再び訪ねると、「今日いっぱいで完全閉店のためー、お客様にいよいよ最後のプレゼントです!なんと2万円が3千円!」というセールストークが聞こえてきました。

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あれ?閉店していません。

ネットでも、こうした閉店しない閉店セールについて、 「12年以上前から閉店セールをやっている」とか、「今日も今日限りの閉店セール中」といった書き込みが多数見つかります。
この問題について、詳しく調査した学生たちがいました。


【追跡調査は驚きの結果に】

調査したのは、立教大学法学部で消費者問題を研究している学生たちのゼミです。

closingsale9.jpg学生たちは、閉店セールを行っている都内9つの店を、半年間にわたって調べました。
すると、4つの店は実際に閉店しましたが、残る5つは閉店していませんでした。

closingsale10.jpg調査した男子学生は、「なんとなく閉店しないお店はたくさんあるなという予想はしてたが、こんなにたくさんあるのか」と驚いていました。

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【「完全閉店」と「改装閉店」の違い】

学生たちはさらに、それぞれの店の閉店セールのうたい文句を調べてみました。
すると、「完全閉店」と「改装閉店」の2種類があることがわかりました。
営業を続けていた店で目立ったのは、「改装閉店セール」でした。

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【閉店セールをしている会社に突撃取材!】

2つの閉店セールについて、ある衣料品販売会社に取材したところ、文書による回答が得られました。
この会社では、当時24店舗で閉店セールを行っていて、そのほとんどが「改装閉店セール」でした。

closingsale13.jpg会社の説明では、「改装閉店セールは、店の修繕などのため一時休業する場に。また、完全閉店セールは、店を撤退する場合に行っている。改装閉店の場合の閉店期間は、最短で1日ということもあり、客が閉店したことに気づかない可能性はある」ということでした。

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【消費者心理を突く閉店セール】

学生たちは、消費者は「閉店セール」と聞くとどう感じるのかアンケートしたところ、100人のうち64%が「普段より買いたくなる」と答えました。

closingsale15.jpg調査に参加した女子学生も、閉店の言葉につられて衝動買いしてしまった経験がありました。
あるカバン店で買ったのは、定価1万円以上するというバッグです。
閉店セールのため3千円まで値引きされ、「閉店するからそれだけ大幅に値下げしても大丈夫なのかな」と思ったといいます。

closingsale16.jpgしかし、1年後現場を訪れると、まだ閉店セールは行われ、バッグは3000円で売られていたということで、「騙されたという気持ちになり、悔しかった。高価なものが安くなっているというので買ったのであり、もともと3000円なら買っていなかった」と話していました。

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【違法な二重価格表示】

実はこうした売り方には問題があります。
定価より安い価格で一定期間以上売り続けると、その定価には実態がなく「見せ掛けの割引」とみなされ、景品表示法に違反するおそれがあるからです。

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【苦情は業界団体にも】

閉店セールに関する苦情の声は、広告の自主規制を行う日本広告審査機構(JARO)にも寄せられていて、明らかに問題があると判断される場合には、店に改善を求めています。
JAROの林功事務局次長は、「当然安いものが買えると思わされて買わされてしまったなど、消費者をだますようなことにつながる表現について過去指摘をしたことがある。消費者に誤解を与えないように十分に説明を書き入れるなど、広告の受け手、消費者を意識した広告づくりをしてもらえるとありがたい」と話しています。

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【学生たちが消費者庁に要望】

こうした調査結果を受けて、学生たちは、「閉店しない閉店セールは、最後の機会を強調することで購買意欲をむやみにあおり、今買わないと損をするという誤った印象を消費者に与え、景品表示法に触れる可能性がある」として、消費者庁に対し、悪質業者の監視を行うとともに、「閉店セール」の意味やセール期間に関して指針を示すよう求めました。

closingsaleyoubo.jpgゼミ長の小林亨輔さんが、「調査した中には、修学旅行生などにターゲットを決めて呼び込む悪質な店もあった。消費者庁は、事業者に対ししっかりした姿勢で臨んでほしい」と話したのに対し、消費者庁の菅久修一審議官は、「景品表示法では、閉店セールについて明確な定義はないが、長期間閉店セールを行うことや、実際は安くないのにセールとするのは問題がある。まずは具体的な事案について調査していきたい」と話していました。

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【買い物で失敗しないためには】

チラシなどの広告に買い物で失敗しないためのヒントがあります。
例えば、文書で回答を寄せた会社のチラシをよく見ると、閉店セールの文字の上に「店舗リニューアルのため」と明記されています。
これで改装のための閉店セールだとわかります。
改装の場合、廃業してしまう完全閉店セールほどは安くならないことも考えられます。
さらに、閉店セールの文字の下には、セール期間が示されています。
このように、セール期間を確かめれば、期間の後半になればもっと安くなるかもしれないという判断をすることができます。

closingsale22.jpgまずは、▼いつ閉店するのか、▼これからもっと安くなるのかといったことを店員に直接聞けば、納得できる買い物ができると思います。


【相談や情報提供はどこへ?】

▼相談

「返品に応じてもらえない」といった具体的なトラブルの相談は、「消費者ホットライン」で受け付けています。
番号は、「0570-064-370」です。「まもろーよ、みんなを」という語呂合わせになっているので覚えておくと便利です。
年末年始を除く日中の業務時間内に電話をすれば、最寄りの自治体が運営する消費相談窓口の「消費生活センター」などへつながり、無料で相談できます。

▼情報提供

消費者庁は、問題があれば調査して必要な措置を取るので、情報を寄せてほしいとしています
インターネットの窓口は、「http://www.caa.go.jp/representation/disobey_form.html」です。
郵送や電話の場合は、「消費者庁 表示対策課 情報管理担当」まで。
番号は、「03-3507-8800(代表)」で、平日9時半から18時15分まで受け付けています。
住所は「〒100-6178 千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー 5階 」です。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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