2017年10月16日 (月)特集民泊大競争時代~最前線と課題~


※2017年9月21日にNHK WEB特集に掲載されました。

ことし日本を訪れた外国人旅行者が早くも9月中旬で2000万人を突破しました。こうした中でますます注目されるのが住宅やマンションの空き部屋を有料で貸し出す民泊。
来年は民泊の新しいルールを定めた新法も施行され、国内外の企業が市場に本格参入しています。一方、見知らぬ外国人がマンションに出入りする不安など課題も依然残されています。その最前線、取材しました。

ネットワーク報道部記者 玉木香代子

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<民泊人気 その現場は>

mi170921.2.jpg大阪・西成区。家々がひしめき合うように並ぶ地域にスーツケースを引きずりながら訪れた観光客がいました。マレーシアから訪れた若者3人で事前に受け取ったカギで一軒家の扉をあけて入っていきました。

mi170921.3.jpgここは彼らが宿泊先として選んだ民泊です。費用は3人で1泊1万5000円。2階建ての普通の住宅ですが布団を見るのも初めてで彼らにとっては「異国情緒たっぷりの宿」です。それにイスラム教徒の彼らは戒律で食べられる食事も限られるため自炊ができるキッチンはうれしい設備です。

一方、心斎橋に近くマンションが建ち並ぶ地域でも、スマートフォン片手に歩く外国人たちの姿があちこちに。ホテルのように看板が出ていない民泊の部屋を探しているのです。

mi170921.4.jpgここで「いつも迷っている外国人を案内している」という地元の女性を発見。「ここらは本当に多いですよ。大阪のおばちゃんの国際交流です」という言葉に民泊の広まりを実感しました。


<参入!中国最大級民泊サイト>
その民泊市場に国内外の企業が次々と参入、ほかにはない特徴を打ち出して市場をリードしようとしています。

mi170921.5.jpgこのうち8月に本格参入を表明したのは中国最大級の民泊仲介サイトを運営する中国の企業、強みは中国人の好みを知り尽くしていることです。


<明朗会計 疑問即答>
この企業の仲介で民泊施設を利用した中国人4人に取材しました。京都らしい町屋を改装した住宅で入ると新しい畳の香りもします。訪れた中国人たちも大感激です。

mi170921.6.jpgただ、それ以上に大事なのはわかりやすい料金設定だそうです。他社の場合、人数が増えると料金を追加されたり清掃料金を別途請求されることがあります。一方、この会社は定員以内なら何人泊まってもサイトに掲載されている価格から変わりません。

さらに北京にあるコールセンターでは日本を旅行中の中国人の疑問に24時間対応。中国にはないパチンコ店の場所や地下鉄の乗り方まで事細かに教えてくれます。

今や日本と同じくらいの1億を超える人々が世界を旅する時代になった中国。その疑問や質問にいち早く答え、顧客として取り込もうという戦略です。

mi170921.7.jpg今回参入した日本途家の鈴木智子社長は「中国のサイトなので、ぜひたくさんの中国の観光客に安心して利用して頂きたいです」と話しています。


<安心・安全へ模索の日本企業>
迎え撃つ日本。国内専門で民泊を仲介する日本の企業が工夫しているのが安心と安全を確保するための取り組みです。というのも民泊をめぐっては地域住民の不安という課題がつきまとうからです。

mi170921.8.jpg今回の取材で入手したマンションの防犯カメラの映像。見知らぬ外国人が事前に知らされた情報をもとにオートロックを解除し次々と中に入っていく様子が記録されていました。民泊として貸し出されたマンションの一室を利用するためですが、知らない間に外国人が出入りしていることに住民から不安の声が上がっているのです。


<秘策!対面確認に丸ごと民泊も>

mi170921.9.jpgそこでこの企業では民泊の利用者に対し決められた窓口でパスポートを提示し、対面で本人確認を受けることをルールにしています。ただし民泊の施設に窓口はありません。町なかで手荷物を預かる事務所やホテルなどに依頼してこうした手続きを代行してもらっているのです。

mi170921.10.jpgまたマンション1棟丸ごと44部屋を民泊用に作り替えた物件も登場しました。住民がいないため、「見知らぬ人が出入りする不安」はありません。もちろん周辺地域への説明も行っているということです。

mi170921.11.jpg国内専門の民泊サイトを運営する「百戦錬磨」の羽毛田恒祐民泊運営事業部長は「近隣の方々や地域との共生を大切にする会社だと多くの人に思っていただいて事業を積極的に拡大していきたい」と話していました。


<民泊の草分けアメリカの会社は>
最後は世界中で民泊を仲介している民泊界のパイオニア、アメリカの企業。「宿泊+体験」を強調しています。ただ泊まるだけではなくその土地ならではの体験を同時に紹介することで、利用者を増やそうというのです。

mi170921.12.jpg日本国内でのメニューは現在200以上あり、キャラクター弁当を作る料理教室から、外国人に人気の盆栽作り、オタクの達人が案内してくれる秋葉原のショッピングツアーなど内容は多彩です。

mi170921.13.jpgエアビーアンドビージャパンの田邉泰之社長は「単純に泊めたい人と泊まりたい人をマッチングするだけでは足りない。地元の文化を楽しめるという形で業界をリードしていきたい」と話していました。


<新法施行で民泊大競争時代>
企業がこうした熱い競争を繰り広げる背景にはことし6月に成立し、来年から施行される民泊新法が大きく影響しています。これまで民泊を営業するには「旅館業法」の許可や規制緩和を行った「特区」で認定を受ける必要がありましたが、多くの条件や制約があり、今も無許可の民泊が多いのが実情です。

そこで「民泊新法」では許可や認定ではなく都道府県への届け出制にしました。水面下で行われていた民泊を把握し一定のルールのもとで運営してもらうのが狙いです。新法の施行で民泊が合法的に広まると見られる中、さまざまな企業が参入しているのです。


<地域住民が望まない場合の対策も>
一方で地域住民が望まない場合の対策も進んでいます。
たとえばマンションの場合、住人が合意して管理規約を改正すれば民泊を禁止できるようになりました。国はそれぞれのマンションで民泊を認めるのか、認めないのか話し合ってもらい、「マンションの管理規約をできるだけ早く改正してほしい」と呼びかけています。
また小学校の近くなど生活環境への影響があるとされた場合には自治体が条例を作って民泊を制限することができるようになります。
さらに法律の施行後も届け出をしない民泊施設について、国は立ち入り検査をしたりやめさせたりできるようにする方針です。

外国人旅行者の間でますます人気が高まる民泊は人口が減少する中で課題となっている空き家対策や地方の活性化の1つの処方箋としても期待されています。地域や社会の理解を得ながら民泊が根付き、日本の観光がさらに魅力あるものになってほしいと感じました。

投稿者:玉木香代子 | 投稿時間:13時56分

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