2012年11月02日 (金)生活保護 一歩手前の支援を


生活保護を受給している人は210万人を超え、過去最多を更新し続けています。今年度の生活保護費の総額は3兆7000億円を超える見通しで、厚生労働省は抜本的な見直しを始めています。どうすれば急増する生活保護費に歯止めをかけられるのか。ポイントになるのが、生活に困っている人たちが生活保護に頼らなくても済むような、一歩手前での支援です。山梨県と福岡県で始まった取り組みを甲府放送局の永田知之記者と福岡放送局の江頭俊吾記者が取材しました。

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【食料支援で苦しい時期を乗り切る】

山梨県のNPO「フードバンク山梨」は、自治体などと連携して、生活保護は受けていないものの、生活に苦しむ人たちに2年前から食料を届けています。食料はパッケージにキズがあるなどの理由で商品にならなかったり賞味期限が近づいたりしているものを企業から無料で提供してもらっていて、品質には問題ありません。

20121102seiho_1.jpg取材の日にも地元の製麺会社から600食分のうどんが届いていました。

20121102seiho_2.jpg集まった食料は段ボールに詰められ、月に2回、世帯ごとに送られます。

20121102seiho_3.jpg今回、1年ほど前からフードバンクの支援を受けている51歳の男性を取材しました。83歳の母親と2人で暮らしている男性は工場の派遣社員として働いていましたが2年前に契約が終了。

20121102seiho_4.jpgその後、就職活動をしてきましたがまだ仕事は見つかっておらず、月におよそ7万円の母親の年金だけが頼りです。

20121102seiho_5.jpg一時は日々の食べ物にも困る状態で、体力が衰え、就職活動にも支障が出ていたといいます。貯金も底をついて地元の社会福祉協議会に相談に行った際に紹介されたのがフードバンクでした。

20121102seiho_6.jpg今は月に1万円相当の食料がフードバンクから届けられ、1日3食、なんとか食べることができています。食生活が安定したことで暮らしの立て直しに意欲が出てきた男性は現在仕事探しに集中しています。

20121102seiho_7.jpg男性は「社会から相手にされなくなると『もういいや』っていう気持ちになって力も出ない。でも今は心配してくれる人がいてすごく励みになる。仕事を探す気持ちになり就職活動にも力が入ります」と話していました。

20121102seiho_8.jpgフードバンクではこれまでに380世帯を支援し就職や生活の再建につなげています。フードバンク山梨の米山けい子理事長は「生活保護一歩前の日とは社会にすごく多くいると思う。そういう人たちへの支援を早い段階で行うことが大切と思う」と話していました。

20121102seiho_9.jpg【家計の見直しで生活再建を】

苦しい家計の見直しを支援することで生活保護に頼らなくても済むようにする取り組みも始まっています。支援に取り組んでいるのが福岡市の生協が運営する生活再生相談室です。

20121102seiho_10.jpgここでは低い収入や借金が原因で生活費が足りない人への融資を行っています。限度額は150万円で返済期限は5年がメドです。

20121102seiho_11.jpg利用者の1人の50代の女性は離婚して娘と2人暮らしになり、深夜のスーパーのパートで生計を立てています。しかし、相談室を訪れる前の収入は12万円。借金を抱えて家賃も滞納し、生活に行き詰まっていました。女性は「涙が流れることが度々あった。本当に苦しくて何でこんな生活をしないといけないのかと思った」と当時を振り返ります。

20121102seiho_12.jpgこのままでは生活保護を受給するしかないという時に女性が支援を求めたのが生活再生相談室でした。

20121102seiho_14.jpgここでの支援の特徴は、融資とセットで行われる家計の見直しです。相談員が本人と一緒に月々の収入と支出をチェックし、余分な出費があれば減らすようアドバイスします。この女性は暑い夏場、光熱費を月6000円に抑えるなどして出費を減らしました。また、昼間にも別のパートの仕事を加えて収入を増やせば自立できると判断され、家賃の滞納分などにあてる20万円の融資が決まりました。

20121102seiho_15.jpg融資のあとも家計のチェックは定期的に続きます。女性は今ではパートの収入が増え、以前にも増して節約に励み、月によっては貯金もできるようになりました。

20121102seiho_16.jpg女性は「全部さらけ出して全部話して、相談に乗ってくれたので、たぶん今があると思う」と支援への感謝を述べています。

20121102seiho_17.jpg生活相談室が出来てからの6年間で融資した件数は1056件に上りますが、綿密な家計指導で生活を立て直し、貸し倒れになるケースはほとんどありません。

20121102seiho_18.jpg生活再生相談室の行岡みち子顧問は「家計という視点からどう生活を維持していくか、もしくは立て直していくか本人にも考えてもらい、それを寄り添いながら伴走して相談に乗っていくことが必要」と話しています。

20121102seiho_19.jpg生活保護受給者が急増している背景には、生活が苦しい人たちを支える仕組みが脆弱なため、「最後のセーフティネット」であるはずの生活保護が「最初のセーフティネット」になってしまっている実態があります。今回紹介した取り組みは生活保護に頼らなくても厳しい時期を踏ん張れるだけの支援があれば、その間に仕事を見つけるなどして生活を立て直せることを示しています。いわば「第2のセーフティネット」といえる試みです。

しかし、こうした取り組みはまだ広がっていません。理由の1つには採算面の課題があります。例えば福岡の生協の取り組みは、ほかの4つの県でも行われていますが、福岡を除いてすべて赤字です。

こうした中、国は来年度総額55億円の補助金を出して、家計支援付きの融資などのモデル事業を始める方針です。ただ、地域によっては担い手となる団体がない所や支援員が不足している所もあります。財政的な支援だけでなく担い手の育成にも力を入れて、地域によって偏りのない、きめ細かな支援体制が求められています。

投稿者:辻英志朗 | 投稿時間:06時00分
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コメント

いつ自分が生活保護を受けなくてはならないか分からない。見直しをすると政府も言ってますし、野党も一緒になって見直すと言っている。最低限の生活さえさせてもらえないのか?心配でならない。

生活再生相談室を生協がやってるのは知らなかった
他にも同じような融資があるのか知りたい
また、こういうことはどこへ相談したらいいのか
特集をしてほしい

勉強になりました

投稿日時:2012年11月11日 07時43分 | おがポン

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