2017年02月14日 (火)バーチャルリアリティーで認知症を体験


※2017年2月2日NHK NEWS UPに掲載されました。

認知症について理解を深めてもらおうと、
今、VR=バーチャルリアリティーの技術を使って、認知症の人の世界を疑似体験する取り組みが始まっています。
取り組みを通じて、認知症の症状への理解や正しい診断につながると期待されています。

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<認知症の症状の体験会>
先月、名古屋市内で認知症の症状の体験会が開かれ、認知症の人の診療や介護に携わる人たちが集まりました。

参加者がゴーグル型の装置とヘッドホンをつけると、主人公の認知症の人の心の声とともに、映像が映し出されました。
「うっかり居眠りをしていたら、どこを走っているのかわからなくなっちゃった。そういえば、どこで乗り換えるんだったっけ、どうしよう」
電車の中で目を覚ましたら、自分がどこにいるのかわからなくなってしまったという場面です。
360度にわたって見渡すことができ、まるで、その場にいるかのような感覚に陥ります。

170202.2.jpg「ここはどこですか?」、「出口はあっちですよ」、「そうですか」
降りた駅のホームに取り残される場面では不安感が高まります。体験した参加者の1人は、「実際に目で見たりとか、座って見える感じの景色とかで、不安な感じがより強く感じられた」と話していました。


<認知症の人も体験>
若年性のアルツハイマー型認知症の丹野智文さん(42)もこれを体験しました。
丹野さんは「私も同じ経験が何度もあって、会社に行くのに電車で乗り換えなければいけないんですけど。もうわからなくなってしまって1回泣きながら駅員さんに助けを求めたときもありました」と話します。


<VR活用を思いついた理由>

170202.3.jpgこの取り組みを進めているのが、高齢者向け住宅を運営する会社の社長、下河原忠道さんです。
下河原さんは、千葉県などの住宅で大勢の認知症のお年寄りと接してきました。認知症の人への理解を深めたいと、思いついたのがバーチャルリアリティーの活用でした。

下河原さんは「認知症の人が、どういうふうに考えているのか、どういうことで困っているのかということを、僕らが一人称で体験したら接し方に変化が生まれるのではないか」と、始めたきっかけを説明します。


<4本の動画を制作>
社員とともに、下河原さんが、これまでに作ったバーチャルリアリティーの動画は、4本。
そのうち1本は、実際には無いものが見えてしまう「幻視」の症状についてです。

友人の家を訪ねると、扉の向こうにいた人が突然、消えたり、部屋の片隅に置かれている物が座っている人に見えたりします。参加者の中には驚いて悲鳴を上げる人もいました。
体験した人は、「すごいリアルに感じられたので、ちょっと恐怖。このように見えるんだと感じることができました」と話しています。


<脚本は幻視の症状がある女性が担当>

170202.4.jpg下河原さんから依頼を受け、この動画の脚本を書いたのは、樋口直美さんです。4年前、幻視が見えるレビ-小体型認知症と診断されました。その症状について正しく知ってほしいと、みずからの症状を忠実に再現し、演じる人の演技指導もしました。

樋口さんは、自分の見る幻視は本物そっくりで、幻視を見て叫ぶことなどは正常な反応だと理解を求めています。
樋口さんは「本物か幻視かということは、消えたり、何かがないとわからないので、これ本物?何なの?と常に迷ってしまう。『何をばかなことを言っているの』とか、『虫なんているわけないでしょ、さっさと食べなさい』などと言われてしまうのですが、それがものすごくストレスになって、病状を悪化させているということをもっと知っていただきたい」と話しています。


<認知症の専門医も評価>
参加した認知症の専門医、笠間睦医師は、認知症のタイプによっては「幻視」の症状が出ることを知らない人が多いことから、バーチャルリアリティーによる体験は、症状への理解や正しい診断につながると期待しています。
笠間医師は、「認知症の中には、幻視を見る疾患が結構多い、そのことがまだまだ理解されていない。こういうふうな幻視を見る疾患が、認知症の中にあるんですよということが正しく伝われば、正しい診断に結びつくきっかけになるということで、大きな意義があると思います」と話しています。

最新の技術を使って、認知症の人の世界を体感する。認知症の人が生きやすい社会を作るための大きな一歩になると注目されています。下河原さんは、新たな認知症の動画の作成に取り組んでいて、体験会を各地で開きたいとしています。体験会を開く際は、交通費やゴーグルの輸送費などの実費を負担してもらっているということです。

問い合わせはメールで受け付けています。
アドレスは、 VR@silverwood.co.jp です。

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:14時54分

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