2015年05月12日 (火)AEDが救った命 その時何が 瞬間の映像から


フットサルの試合中、胸にボールが当たった数秒後、選手が突然倒れました。心臓が止まってしまったのです。
救命率は1分で10%ずつ低下します。平均8分以上かかる救急車の到着を待っていては間に合いませんが、居合わせた人たちの行動で選手は命を救われました。
何が決め手となったのか、救助された選手と救助に当たった人が語りました。


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【健康な選手の心臓が止まる】

関東フットサルリーグの「FCmm」所属の田中奨さん(22)は、大型連休中、フットサルの全国大会の試合で意識を失いました。
当時の状況はこうです。
田中さんは、シュートを防ごうとして、相手選手の足下にスライディングをし、胸でボールを受けました。赤い円の中心付近です。

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シュートを防いだあと、田中さんはいったん立ち上がりました。赤い円の中心です。

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ところがその直後、突然、力なく倒れました。


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田中さんはこのとき体の異常はまったく感じなかったといいます。
倒れる直前までの記憶があります。シュートは防ぎましたが、審判はその際に手を使ったというハンドの反則を取ったため、立ち上がって歩きながら、「当たったのは胸であって手ではないのに」と思ったといいます。

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【行動の決め手は「勇気」、後押しした「知識」】

倒れた田中さんのもとへ大勢が駆け寄りました。
中心的に行動したのは、チームのスタッフの青山友紀さん。
青山さんがうつぶせの田中さんを仰向けにしたところ、すでに呼吸が止まった状態でした。

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青山さんは「すごく焦って頭の中が真っ白になって『どうしよう』というのが一番最初にありました」と言いますが、何度か救命講習を受けていたことが支えになりました。

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気を取り直した青山さんは、心臓マッサージを始めます。
その後、施設に設置されていたAEDが届けられ、周りには119番を済ませた施設の担当者も駆けつけました。
青山さんは、心臓マッサージを交代してもらったり田中さんの汗を拭き取ってもらったりして、周りの人たちと協力しながら田中さんの体に電気を流すAEDのパッドを貼りました。2回の電気ショックを経て、田中さんの呼吸は復活したといいます。
青山さんは、「すごく焦っていたので、もし救命講習を受けていなかったら迅速な対応はできていなかった。その状況になったらすごく怖いと思うが、勇気を出して一歩踏み出せるかどうかがすごく大事だと思う」と話しています。

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【心臓が止まったわけは「心臓震とう」】

田中さんは健康なフットボール選手です。
なぜ胸にボールが当たっただけでこんなことになってしまったのでしょうか。

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その瞬間、田中さんの心臓は、衝撃で止まった状態になる「心臓震とう」という症状を起こしていました。
「心臓震とう」は、収縮が終わりかけた一瞬のタイミングに、心臓の上に一定の衝撃が加わると誰にでも起きることがあります。
特にスポーツ中、若い人に多いということです。

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心臓突然死に詳しい立川病院長の三田村秀雄医師は、「心臓震とうはもともと病気ではないので、健康な心臓で起こる。そういう意味であらかじめ、この人に起こると予測するのは不可能と言っていい。脈もない、呼吸もない、意識もないという状態で、この状態が数分間以上続くと、どんどん体の細胞が死んでしまうので、そのまま放っておくとやがて死を迎えてしまう」と解説します。

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【普段通りの生活に戻った田中さん】

止まった心臓が再び動き出した田中さん。
すぐに心臓マッサージとAEDという適切な救命処置を受けられたため後遺症はなく、翌日からは普段通りの生活に戻ることができました。
田中さんは、「自分がこんなことに関係するとは1%も思っていなかった。もしAEDが普及していなかったらこうやって生きていることはできなかったし、救命処置に協力してくれた人たちがたくさんいたからこそ生きていられる」と振り返ります。

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【居合わせた人にしか救えない】

今回の対応について三田村医師は、「素晴らしい。早い時点で心臓が止まった疑いを持ち、そこからの動きが早かったのだと思う。1分で1割ずつ助かる可能性が減っていくので、救急隊が到着するのを待つというアプローチではいけない。自分たちが動かないといけない。一般の人は心臓が止まったかどうかわからないと思うが、意識がなければ心臓が止まったことを疑い、1分1秒を争ってAEDを取りに行く。そして、取りに行っている間は心臓マッサージをするのが大事だ」と話しています。

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【取材後記】

田中さんは心臓が止まった日からわずか4日後に取材に応じてくれました。
インターネットでも体験を発信し始めています。
2011年、元サッカー日本代表の松田直樹選手が練習中に亡くなりました。心臓突然死でした。そのとき練習場にはAEDが設置されていませんでしたが、いまは多くの公共施設にあります。今回の田中さんのケースの5日後には、長野県でも救命事例がありました。地域リーグの試合中に心臓が止まって倒れた選手を、居合わせた人たちが施設のAEDを使って救ったのです。
AEDによる救命事例は確実に増えています。AE
Dは簡単に使えます。電源を入れれば音声ガイダンスに従うだけです。大切なのは勇気です。知識がそれを後押します。

田中さんはさらに、心構えも大事だと考えています。
田中さん自身AEDの講習は自動車免許取得の際に受けたことがありましたが、もしほかの誰かが倒れたときに行動できたかというと不安があったといいます。
これからは講習会の重要性とともに、心構えも伝えていきたいと話していました。

最後に、田中さんからのメッセージです。
「一回、自分の大切な人が倒れてしまったと本気で想像してもらいたい。今回僕の家族がそういう気持ちになったと思うので、逆に今度もし親がそういう立場になったら僕が絶対に行動ができるよう心構えを持った。僕のような経験がないと逆の立場で考えることは難しいと思うが、僕のケースを知ってもらうことで、本当に大切な人が心肺停止状態になったら、今の自分だったら動けるのかというのを考えてほしいと願っています」

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:08時00分

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