2019年01月30日 (水)あなたの街は何タウン?超多国籍都市"トーキョー"


※2018年12月5日にNHK News Up に掲載されました。

「近所にそんなに多くの外国人が住んでるって知らなかった!」
住民の8人の1人が外国人となった新宿区で取材中に聞いた声です。確かに記者もふだん周りにどのような人が住んでいるのかあまり気にしたことはありませんでした。そこで東京23区の外国人住民について調べてみました。そこから見えてきた東京の姿とは?

ネットワーク報道部記者 國仲真一郎・伊賀亮人
テクニカルディレクター 斉藤一成

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<世界の9割の国の人が集まる都市>
東京23区にはことし1月時点で43万9000人の外国人住民が住んでいます。これは日本に住む外国人の17%余りにあたります。

今回は東京都が公表している、各区に住む外国人を国籍別にまとめたデータを分析しました。

ana181205.2.jpg※オープンデータ「Natural Earth」を利用したため、紛争中の国などが表示されていません
色が塗られた場所はその国・地域の人が23区に住んでいるところです。人数ごとに色を分けて表示していて、濃い国・地域ほど多くの人が23区に住んでいることを示しています。

日本を除く世界196の国と地域のうち、なんと9割を超える182の国と地域の人が住んでいて、地図で見ても、ほぼ世界中を網羅しています。

住んでいないのは、モナコ・赤道ギニア・セントビンセント・キリバスなどいくつかの国だけで非常に多国籍な都市であることがわかります。


<意外な国の人も増えている?>
ことし1月時点で23区内に住んでいる外国人を国籍別にみると、下の表のようになります。

ana181205.3.jpg一方、それぞれの国の人が5年間でどれくらい増えているのか分析するとー。

1位はブータンで15.8倍、
2位がベトナムで7.3倍、
3位はウズベキスタンで5.7倍、
4位スリランカで3.6倍、
5位ネパールが3倍と続きます。
(住民が50人より少ない国の人は除く)

例えばブータンは、ことし1月時点の住民が79人と全体の数が少ないため、増加率としては大きくなりますが、意外な感じもする国の人も増えていることがわかります。


<多国籍化が進む区は?>
それでは23区それぞれの状況はどうでしょうか。区内に住む人の国籍数が多い順にまとめてみました。色がついている場所が上位5位の区です。

ana181205.4.jpgトップの港区は実に135の国と地域。そのほか新宿、世田谷など、いずれも100を上回っています。

次に国籍数の少ない順にまとめた地図がこちら。

ana181205.5.jpg最も少ない千代田区でも71の国と地域。いかに世界中の人が集まっているか改めて驚かされます。ではなぜ今、こうした人たちが増えているのでしょうか。


<ウズベキスタンならぬ“アラカワ”スタン?>
そこで今回注目したのが、下町風情が残る荒川区です。

ana181205.6.jpg実は、荒川区では今、中央アジア・ウズベキスタンの人たちが急増しているのです。平成25年に20人だった区内在住のウズベキスタン人は今は172人と、5年で9倍近くに増えています。この1年間だけみても100人以上増加しています。

荒川とウズベキスタン。そのつながりの一端がうかがえる場所があると聞いて私、國仲が訪ねたのは、西日暮里の谷中銀座です。

昔ながらの商店街に何が?と思いながら歩いていると、突如として現れたのはこの場所に不釣り合いとさえ感じる異国情緒満載のレストランです。

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<シルクロードの味>
ウズベキスタン料理といってもあまりなじみのない人が多いかもしれません(國仲もそうでした)。

イラン出身のオーナー、アリさんによると、特徴は、かつてはシルクロードの中間地点のオアシスとして栄えた歴史を持つ、多様なバックグラウンドだと言います。

東の中国、西のトルコやイランといった国の人や文化が行き交う「交差点」として、さまざまなものを取り入れ発展してきたのが、ウズベキスタンの文化、そして料理なのだそうです。

ana181205.8.jpgマントゥ
定番料理は、肉の串焼き「シャシリク」やラム肉を小麦粉の皮で包んだギョーザにも似た「マントゥ」など。どれもスパイスの香りと風味が効いていて、食欲をそそります。

どんな味がするのか少し緊張しながら口に運ぶと、まるでシルクロードの風景が口の中いっぱいに広がるようでー。何とも美味でついつい食べ過ぎてしまいました。

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<家族のために>
店には多い日では30人ほどのウズベキスタン人が、ふるさとの味を求めてやってくるそうです。実際、國仲が取材に訪れた日もウズベキスタン人たちが次々と店を訪れていました。

そこで早速、彼らを直撃しました。ジャスルベック・ジュラバエフさん(26)は、ことし4月に来日。荒川区内に住みながら、高田馬場にある日本語学校で日本語を学んでいます。

ana181205.10.jpgジャスルベック・ジュラバエフさん
この日、初めてこの店を訪れたということですが「故郷の味が食べたくなって来ました。懐かしいです」と笑顔で答えてくれました。

ジュラバエフさんによると、荒川区に住むウズベキスタン人の多くが、同じように日本語学校に通う20代くらいから30代前半の男性とのこと。先に留学した先輩からの情報で住み始めるという人が多いそうです。

荒川区の家賃の安さや、日本語学校が多くある高田馬場や秋葉原に通いやすいという利便性がメリットだということです。同郷の人が多く住むという安心感から知らず知らずのうちに集まってきたようです。

妻、そして2歳と5歳の男の子を故郷に残して単身で留学しているジュラバエフさん。毎日のようにネットで通話しますが「やっぱり1人はさみしい」と話します。

それでも日本語学校を卒業したあとは、IT関連の知識や技術を身につけて帰国したいと話し「日本に留学するチャンスをくれた家族の生活を助けたいし、日本のテクノロジーを活用して社会の発展に役立ちたい」と、強い決意を語ってくれました。


<コリアンタウンは縮小? インド人は2倍以上に>
このほか区ごとに内訳を調べると、さまざまな姿も見えてきます。

ana181205.11.jpg新大久保のコリアンタウン
新大久保のコリアンタウンで有名な新宿区では、平成20年には1万4000人いた韓国・朝鮮籍の人が、今では1万人と、実は年々減少が続き10年間で3割近くも減っているという意外(?)な数字もあります。

また、すっかり有名になった江戸川区のインド人コミュニティーは今や3700人に上り、実に10年間で2倍以上も増えています。

各区のコミュニティーで何が起きているのか、ますます知りたくなってきました。


<あなたの街の今、どうなっていますか?>
私・國仲が荒川区でシルクロードの風に触れながら感じたのは、ウズベキスタン人「172人」という数字だけでは分からない、一人一人が持つ背景や強い思いです。

中でも印象的だったのは、レストランを訪れたジャオヒル・マダリエフさん(27)のことばです。
来日3年目で日本語学校を卒業し、来年から東京で自動車関係の仕事に就職するというマダリエフさんは、日本が大好きだと語ります。しかし、来日すぐにアルバイトを探していた際にかけられたことばがいまも耳に残っていると話してくれました。

ana181205.12.jpgジャオヒル・マダリエフさん
「『きみは外国人だからいらない』と言われショックを受けました。外国人だから、日本人だから、と区別するのは時代遅れだと思います。日本に住む外国人は日本が好きだから来ています。そうした外国人と一緒に仲よくできれば、日本はもっといい国になると思います」

ana181205.13.jpg東京の今を探ろうと始めた今回の取材。知らないうちに起きている変化をこれから調べていきたいと思います。

投稿者:國仲真一郎 | 投稿時間:15時47分

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