2017年08月09日 (水)災害時の食物アレルギー対策


2017年6月5日に名古屋のWEB特集に掲載されました。

災害時に避難所で配られる食事には配慮が必要なことがあります。
「食物アレルギー」です。
いま、小学校に行く前の子どもの20人に1人は、小麦や卵、牛乳などにアレルギーがあると言われています。

誤って食べてしまうと、最悪の場合は、命に関わるおそれがあります。
食物アレルギーの子どもを災害時にどう守るのか、始まった対策を名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。

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<食物アレルギーの子ども>
are170605.1.jpg名古屋市内に住む伊藤由香さんと、次男の蒼真くん、2歳です。
蒼真くんは、小麦や卵、牛乳、大豆などにアレルギーがあります。

are170605.2.jpg乳製品を触っただけで、じんましんが出たこともあり、伊藤さんは薬を常に持ち歩いています。
伊藤さんは「目の周りが腫れたり、顔中、赤くなって腫れてきたりするので」と話しています。


<ふだんの食事も工夫>

are170605.3.jpg小麦を食べられないため、
パンは100%米粉でできたものを冷凍庫に常備。

are170605.4.jpgハンバーグはパン粉の代わりにジャガイモの粉を使います。
毎日、工夫しながら食事を作っています。


<備蓄も災害時は心配>

are170605.5.jpg災害時に備え、アレルギー対応のレトルト食品などを
3、4日分、備蓄しています。

are170605.6.jpgしかし、備蓄がなくなった時や、避難所で蒼真くんが小麦などを含む食品を誤って食べてしまわないか、不安を感じています。


are170605.7.jpg伊藤さんは「1人になってしまったときに、自分が何が食べられないというのが判別できないので、もし、避難所でいただいたら、お腹が空いていたら食べてしまうのではないかと。災害時だと病院にもすぐにいけないので、間違って食べてしまったときが、すごく怖いです」
と話しています。


<備蓄食料見直す自治体も>
食物アレルギーの子どもでも食べられるように、
備蓄の食料を見直す動きが自治体の間で広がっています。

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愛知県西尾市は、
全ての備蓄食料をアレルギー対応に変更しようとしています。

are170605.9.jpg備蓄倉庫で担当者は
「アレルギー物質27品目不使用の食品です」と説明します。

are170605.10.jpgこれまで備蓄してきた「五目ごはん」は、アレルギーの原因となる小麦と大豆が入っていました。
そこで、去年から、新たに購入するものを、アレルギーに対応した別の種類に変更。

are170605.11.jpg小麦が使われていたクラッカーも、米粉で作られたクッキーに変え、
粉ミルクもアレルギーの赤ちゃんが飲めるものにしました。

are170605.12.jpg西尾市危機管理課主事の須藤悟さんは
「アレルギー物質が入って食べられないというケースがあったとき、やっぱりその人だけ食べられないという状況があってはいけないので、平等に行き渡るということを考えますと、アレルギー対応にそろえていくことがいいと考えています」と話しています。


<炊き出しは原材料表示を!>
避難所などで行われる炊き出しでも配慮が必要です。

are170605.13.jpgアレルギーの子どもを支援する名古屋市中村区のNPO法人「アレルギー支援ネットワーク」は、毎年、西尾市での防災訓練に参加し、
炊き出しを行っています。

are170605.14.jpg去年の訓練では、ほかの団体とともに、小麦アレルギーの子どもも食べられるよう、米粉を使った「すいとん」を作りました。
NPO法人は、炊き出しの際は、
原材料を表示してほしいと訴えています。
中西里映子理事は「東日本大震災の時も、原材料の表示はされていなくて、アレルギーの患者さんたちは食べていいかどうか困ったというSOSが届きました」と説明します。
何を材料に使っているかがわかれば、食べられるかどうか判断でき、誤食も防げるのです。

are170605.15.jpg中西里映子理事は
「『症状が出てしまうと怖いので提供できません』となってしまうと、アレルギーの子たちはよりどころがなくなってしまいますので、自分たちが備蓄することは当たり前ですが、誰もが食べられる炊き出しだったり、備蓄に取り組んでいただけるとありがたいです」と話しています。


<災害に備えるカード>

are170605.16.jpg幼い子どもは、
自分のアレルギーについて説明することが難しいですから、食べ物を配る側も、アレルギーがないかどうかを確認することが大事です。

are170605.17.jpg「アレルギー支援ネットワーク」は、何にアレルギーがあるかを記すカードを作っています。
「卵」や「牛乳」、「小麦」などアレルギーがある食品に○を付けて、まわりの大人に見せれば、分かるようになっています。
食物アレルギーの子どもが避難所で親とはぐれてしまった時に備えて携帯するよう呼びかけています。

 

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:13時50分

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