2021年04月14日 (水)新型コロナ 月謝や学費 休業やオンラインでも満額?


※2020年5月15日にNHK News Up に掲載されました。

新型コロナウイルスの感染拡大で塾やスポーツ教室、学校に至るまで休校やオンラインなどの対応を余儀なくされています。外出自粛が続く中、ネット上では「月謝や学費」についてのつぶやきが相次いでいます。これまでと状況が違うのに、お金を全額払わなきゃいけないの?

ネットワーク報道部記者 高橋大地・加藤陽平・國仲真一郎

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習い事、返金なし?

shinnkoro.200515.2.jpg「そういえば、子どもの習い事って、どうなるんだろう。まとめて支払った月謝もあるよな…」

4月下旬、そんなことが気になった記者は、息子を通わせている東京都内の学習教室に電話で問い合わせてみました。

すると、「人数を抑えながら開いているので、来てもらっても大丈夫です。でも、心配という親御さんもいるので、振り替えの期間を特別に年内まで延長しています。返金は申し訳ないけれど、できません」という返答。

「え、やっているの?」というのが正直な反応ではあったのですが、やはり、今、通わせるのは不安。とりあえずは「また落ち着いたらお願いします」と言って電話を切りました。

新型コロナウイルスがいつ終息するかわからないので、できれば返金してほしい。でも、息子がいつも喜んで通っていて、お世話になっている教室とトラブルになるの嫌だし…。いったいどうしたらいいのだろう。

SNS上にも不満が続々

同じような思いを持っている保護者はいないのか。SNS上で調べてみました。すると…。
「コロナ落ち着くまで子どもの習い事(英語)も一度ストップしようかな…休講続いてるのに減額や返金はしません、という強気なお知らせ来た」

「子どもの習い事のスイミングは休みになった。でも、返金ではなく、振り替え授業。行けない習い事に月謝を払う。共働きだから、振り替えも簡単ではない」
こんなツイートがたくさん見つかりました。

再開するの? そもそも再開しても不安…

「月謝だけでも返金してほしくて、相談したけど返金対応不可。なんか不信感しかない…」

shinnkoro.200515.3.jpgそうツイートしていた大阪府に住む30代の女性に話を聞くことができました。女性は、3人の子どもを英会話教室に通わせていて、1人毎月9500円弱の月謝を払っています。

夫と相談して3月中旬から子どもたちを通わせることを見合わせていますが、休んでいる間も「休講料」として一定額の費用を支払うよう求められました。

女性
「いったん退会して、月謝として支払った分は返金してもらえないのか、先生に電話をしました。すると、振替期間を9月まで延長できるが、返金はできないという話で。みんな同じ対応なら予約もとれるかわからない。とはいえ、お世話になっている先生にいくらいってもしかたないし。本当に困りました」

その後、緊急事態宣言などを受けて英会話教室は5月いっぱいまで閉鎖することを決めました。

すでに4・5月分として支払った6万円弱の月謝については、それぞれ6月分と7月分に割りふられることになったということです。

ただ、大阪では新しい感染者の数は減ってきているものの、6月から教室が始まるのかは見通せません。

女性
「教室が始まったとしても、窓などがないところで、感染しないか心配です。夫は『子どもたちの命には代えられないし、もうお金はいいんじゃないか』と言っています。確かにそうですが、6万円というとちょっと高額。やはり払った分だけでも戻ってきたらいいのですが」

教室にも事情が…

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一方で、習い事を提供する側にも事情がありました。首都圏を中心に展開する大手学習塾のSAPIXに聞きました。この塾では、すでに5月31日まで対面での授業の中止を決めていますが、授業料の返金はしない方針です。

対面授業ができなくなって以降、これまで校舎で渡していた教材を郵送で各家庭に送ったうえで、新たに授業の動画を配信し、さらにビデオ会議のシステムを使ってオンラインで質問などができる仕組みも整えました。

これまでオンラインの対応は全くしていなかったため、講師が在籍する校舎のインターネット回線の整備やタブレット端末の配備など、新たな費用が発生したということです。

また、会員には授業以外に過去の入試データなど情報提供もして、要望に応えようとしています。

担当者は「授業料については、厳しいご意見もいただいていますが、月謝にみあったサービスを提供していきたいと考えています」と話しています。

減額の訴え 学費でも

本来の学びの環境を得られず減額を求める声は、キャンパスで授業を受けられない大学生からも相次いでいます。

shinnkoro.200515.5.jpgみずからも劇団を主宰する川村智基さん

ことし大阪芸術大学に入学した川村智基さん。舞台芸術を専攻しています。4月22日から始めた署名活動は卒業生や元教員という人たちも含め、3週間ほどで800人を超える賛同者を集めています。

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自室でサックスの練習、隣室ではオペラの発声

どうして活動を始めたのか? 川村さんに聞くと、芸術大学ならではの理由を話してくれました。

川村さん
「私が専攻する舞台芸術だと、大学にある劇場施設が使えなかったり、鏡のあるレッスン室が使えなかったりという影響が出ています。照明や音響を専攻している学生も自宅にはそんな設備はなく、学びの機会がほぼ完全に失われています」

入学したばかりの川村さんは、まだ1度もキャンパスでの授業を受けられていません。5月8日からはオンライン授業が始まったものの、思わぬ事態が起きていると言います。

川村さん
「サックスの練習をする同級生からは、『隣の部屋でオペラの発声練習をしているので、もはや授業にならない』という声を聞きました」

教員1人が数十人、数百人を相手にするのとは違い、1対1で授業が行われるケースも少なくない芸術大学。画面越しでは細かなニュアンスなどが伝わらないばかりか、教員と直接のつながりを築くことができず、描いていた期待がしぼんでいると話してくれました。

学生をさらに追い詰めているのが、経済的な負担です。川村さんの大学の場合、学科による差はあるものの、授業料は年間で85万円から117万円。これに加えて「施設設備費」が必要です。最も高い音楽を専攻する学科では65万円を納めることになっています。

川村さん
「多くの学生が地域の劇団やコンサートなどでアルバイトをして学費や生活費を稼ぎながら学んでいました。しかし、今はこうした活動がすべてストップしていて、学費どころか生活を維持するのが精いっぱいという学生もいます」

4月下旬、500人分の署名が集まり、川村さんはメールで大学側に学費の減額などについての要望を伝えました。今は大学側からの返事を待っていますが、柔軟な対応を訴えています。

川村さん
「前例のない状況なので、新学期の授業開始を遅らせるといった大学側の対応は適切だと思います。ただ、通常の学びができないのに、同じ学費を納めなければならないのは受け入れがたいとも感じています。こうした声が多くあるということを受け止めてほしいと思います」

川村さんが通う大阪芸術大学は、私たちの取材に対し「学費に関する問い合わせは、ほかにも複数の学生から届いています。いまは自治体や他大学の動きなどを見ているところです」と回答しています。

「減額しません」 大学の見解とは

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こうした学生の声に大学はどう対応しているのか。5月5日に早稲田大学がホームページに掲載した声明が注目を集めました。

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「早稲田大学の学費に関する考え方について」と題した田中愛治総長名の文章。学費の減額を求める声が相次いでいるとしたうえで「早稲田大学は、学費および実験実習料の減額をいたしません」と明言しています。

その理由について「大学の学費は、4年間もしくは2年間・3~6年間の教育に対して、必要とされる総額を年数で等分して納めていただいているものなのです」などとしています。

一方、感染拡大で影響を受けた学生に向けた支援金などを設けるとしました。これについて、ネット上ではさまざまな意見が見られました。

「莫大な固定費がかかるから学費の減額はできないっての分かる」
「これぞ説明責任を果たすということ」
「施設利用も教室授業も実習もできないのに何故それらの費用を“全額”払わなければならないのか?」
「その言い訳は普通のサービス業では通用しないと思うけどな」

私たちの取材に対し、早稲田大学は「図書館では今も書籍の購入を続けているほか、既存施設の維持や数年前からオンライン授業にも対応できるシステム改修を進め、ことし4月から本格稼働しています。そうしたものにかかる費用を平準化して納めてもらうという学費の性質上、どの年度に入学した人でも同じようにいただいています」としています。

そのうえで「今年度が特殊な状況であることは理解していますが、学生を感染の危険から守ったうえで、すべての学生が教育を受ける機会を持てるための準備だとして、理解してほしいと思っています」と回答しています。

まず確認 納得できなければ相談を

国民生活センターには月謝や学費などをめぐる相談が相次いでいるということですが、担当者は「内容は理解できるものばかりで、消費者に落ち度があるわけではないけれど、事業者側だけに一方的に非があるわけでもない」といいます。

そのうえで、費用などについて、まずは規約の有無を含め契約などをしっかり確認することが大切だと言います。

そして、「受けた説明にどうしても納得がいかなかったり、そもそも話し合いにも応じなかったりといった場合は、『消費者ホットライン』188に電話をかけて相談してみてください」と話していました。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、経験したことのない時間を過ごす異例の事態が続いています。取材を通して、置かれた状況や求める内容はそれぞれ違っても、誰もが早く収束して本来の学びの再開を求めているんだと実感しました。

投稿者:高橋大地 | 投稿時間:11時03分

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