2018年01月29日 (月)子どもは聞いている


※2018年1月12日にNHK News Up に掲載されました。

子どもが幼いので理解していないと思っていた夫婦の何気ない会話。実は子どもが理解していてドキッとした経験、ないでしょうか。いまそんな子どもの行動を投稿したインターネット上のマンガが話題になっています。子どもは大人が思っている以上に、ふだんの会話がわかっているのです。ではどのようにして会話の内容をつかむのでしょうか。

ネットワーク報道部記者 戸田有紀・高橋大地・栗原岳史

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<顔を上げない子ども>

kod180112.2.jpg登場するのは食べ物をおう吐することがよくある3歳の女の子。吐いてしまった後始末で、母親は着ていた服を洗ったり、女の子をお風呂に入れたり。疲れてしまって、夫が帰宅するとひと言つぶやきます。

「大変だったよ-」

その時、ふと見ると…。離れた場所でおもちゃで遊んでいた娘は顔を上げません。名前を呼んでも答えず、すまなそうな顔でうつむくのです。


<大人が思っているよりずっと>

kod180112.3.jpg「聞かれてる!」
母親は慌てて駆け寄り、娘を抱きしめます。
kod180112.4.jpg「大丈夫だよ、吐いてもいいんだよ!」

やっと笑顔を見せる娘。“子どもは大人が思っているよりずっと大人の会話を理解している”。そんなセリフでマンガは終わります。


<反応続々と>
インターネット上でいま、このマンガへの反応が相次いで投稿されています。

「胸が痛くなりました。私はたくさん言ってしまったかもしれない」
「ものすごくよくわかる。(子どもも)子どもなりに気をつかっている」
「子どもは親が思っているよりも親が言うことを聞いている。よく覚えている。それは大人になっても影響する」

集まっているのは共感の声や自身の経験を反省する声です。

マンガを描いたのは2児の母のpocoさん。子育ての中のできごとを、ツイッターにマンガで投稿してきました。このできごとは去年の暮れに長女との間で起きたことだそうです。

「多くの人が幼い時の気持ちを忘れずに子どもとふれ合っていけますようにという思いを込めて描きました。自分が経験した寂しさや辛さがあるからこそ子どもの心を理解できる、そんな気持ちを大切にしたいと思っています」


<夫婦げんかもわかってる>

kod180112.5.jpg街で聞いてみても多くの人が同じような経験をしていました。30代の女性は夫婦げんかをした時につい口走った言葉を、5歳になる双子の長男が気にとめていたそうです。その言葉は「もう実家に帰る!」

ある日、帰省する予定もないのに、ママ友から「いつ帰省するの?」と聞かれた女性。何でそんなことを言うのかと尋ねると、子どもどうしで“(僕は)実家に帰る”という話をしていたことがわかりました。自分の子どもが話を理解しているとは思わなかった女性。

「子どもの前で夫婦げんかをするもんじゃないと身にしみて思いました」

そう話していました。

kod180112.6.jpgまた、40代の夫婦も最近、5歳になる男の子が突然、「いつ引っ越すの?」と尋ねてきて驚いたと話していました。実は転居を考えていて、その話は子どもが耳にしないように気を配りながらしていたつもりだったそうです。

「自分たちでは引っ越しの話は子どもがいないところで、していたつもりだった。でも親が気がつかないところで、子どもの耳に届いていたようです。子どもに隠し事はできないと実感しました」と話していました。


<雰囲気や感情読み取る力も>
子どもは大人の話を理解しているのでしょうか。
「2歳以上になると話せる言葉よりも、理解できる言葉のほうが多いんです」

kod180112.7.jpgそう話すのは乳幼児期の発達に詳しい東京学芸大学の岩立京子教授です。子どもは言葉を理解するほうが、話せるよりも先。ふだん、口にしない言葉でも、その意味をわかっていることがあります。

さらに周囲に雑音があっても母親や父親、保育園の先生など、その関係がよく、自分が信頼している人の話は、しっかりと聞いているそうです。誰の言葉に耳を傾ければいいのか、子どもは知っているのです。

さらに言葉本来の意味がわからなくても別の力で内容を理解するといいます。

「“その場の雰囲気や、感情を読み取る力”もあるんです。そうした『情動』と『言葉』の理解で大人が思っている以上に会話の内容をつかんでいるんです」


<プラスの言葉がプラスに>
では子どもがいる時の会話では、どんなことに気をつければいいのでしょうか。岩立さんは注意点を2つあげてくれました。

1つはよく言われていることですが、ネガティブな言葉を避けることです。

「ネガティブな言葉は自己評価も低くなり、『優しいね』といったプラスの言葉をかければ、思いやりのある行動をとるようになります」

そしてもう1つ、大人どうしの会話を大人だけのものと考えないことだといいます。

「特に4、5歳にもなると、周りのできごとや社会のできごとに関心がでてきます。言葉や状況の理解が進んでくるんです。自己評価にも子どもは敏感です。それを自覚して、子どもがいる場所での会話に気をつけてほしいです」


<泣き出した2歳児>

kod180112.8.jpgわが家でも長女が2歳の時、夫婦で食卓のテーブルを囲みながら、夫の単身赴任の話をしていたところ、その時には後ろを向いて遊んでいた子どもが、翌日になってから急に「保育園に行きたくない、パパとママと一緒にいる」と泣きだしたことがありました。

それが数日間続いて、保育園の先生に「実は転勤話が持ち上がり、夫婦で話していたんです」と相談したところ、「まだ2歳で言葉はわからないと思っていても、話の内容はわかっているんですよ」と言われ、はっとしたことを覚えています。先生は経験上、子どもの理解力を知っていたのです。

親は、大人の会話は子どもには理解できないなどと思いがちです。おもちゃに熱中しているように見えている時でも、子どもは一生懸命、それこそ全身全力で話を聞き取ろうとしているようです。子どもを子ども扱いしない、大人の都合や目線で話をしない、そう深く反省をしながら2人で手をつないで家に向かいました。

投稿者:戸田 有紀 | 投稿時間:17時33分

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