2018年01月23日 (火)乳幼児と帰省 どんな事故に注意


※2017年12月28日にNHK News Up に掲載されました。

きょうは仕事納め。このあと実家で年末年始を過ごす人も多いのではないでしょうか。休み中はつい気が緩みがちですが、実家はふだんの自宅と環境が違い、子どもの事故に一層気をつけなくてはいけません。ボタン電池や薬に手を伸ばしたり、いつの間にかいなくなっていたり。ヒヤッとしたことはありませんか?
乳幼児を連れた帰省、どんな点に注意が必要なのでしょうか。

ネットワーク報道部記者 野町かずみ

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<電気ケトルでやけど>
冬場、手軽にお湯が沸かせる「電気ケトル」。便利だからと使っている家庭も多いと思います。ちょっと待ってください、大人の便利は子どもの危険!

nyu171228.2.jpg電気ケトルが倒れてこぼれた熱湯で子どもがやけどをするケースは後を絶ちません。ことし6月には、テーブルに置いていた電気ケトルのコードを0歳の子どもが引っ張り、ケトルが倒れて腕や背中などに重いやけどをしました。
消費者庁が、ことし10月までのおよそ7年間に「医療機関ネットワーク事業」に参画している全国の23の病院から寄せられた情報をもとに分析した結果、電気ケトルなどが原因のやけどの事故は241件。このうち、2歳以下の乳幼児が75%を占めています。

nyu171228.3.jpg電気ケトルのお湯でやけどをした赤ちゃん
電気ケトルの事故は、重いやけどになりやすく、入院を要する中等症・重症の割合を見ても、2歳以下の乳幼児が9割を占めていました。
電気ケトルは、最近は倒れてもお湯が漏れないよう対策をとった商品も販売されていますが、事故が後を絶たないことから、消費者庁は今月、文書で注意を呼びかけました。
お湯が入っているのに床にそのまま置いていたり、高い場所に置いてコードが垂れ下がっていると危険です。実家に帰ったら電気ケトルの置き場所はチェックしましょう。


<最も危険 ボタン電池の誤飲>

nyu171228.4.jpg何でも口に入れたがる乳幼児。大人だけで暮らす実家では、はさみや薬がすぐ手の届く場所にあって、思わずヒヤッとすることも。
実は、誤飲して最も危険と専門家が口をそろえるのは、家電製品に広く使われているボタン電池です。飲み込んで体内で唾液や体液などに触れると電流が流れ、体内の組織を破壊します。

nyu171228.5.jpg生理食塩水の中に電池を入れる実験では、食塩水に入れた直後から泡が次々に発生して放電しているのがわかります。これと同じことが体内で起きるのです。


<食道に穴開く重症例15件も>

nyu171228.6.jpgX線写真:食道に引っかかったコイン電池
ボタン電池の被害の実態はどうなっているのか?電池の製造メーカーで作る社団法人「電池工業会」と東京慈恵会医科大学が、ことし初めて全国調査を実施しました。その結果、平成23年からおととしまでの5年間にボタン電池を子どもが誤飲した事故は939件に上りました。

nyu171228.7.jpg電池の誤飲で黒く傷ついた食道
このうち食道に電池が引っかかり電流が流れることで、組織が破壊され食道に穴が開くなど重症のケースも15件ありました。
特に危険なのは、ボタン電池の中でも一回り大きい「コイン型」と呼ばれる電池。食道に引っかかりやすく、電圧も高いためです。重症のケースはいずれもコイン型の電池でした。
調査を行った東京慈恵会医科大学・葛飾医療センターの小児外科医、大橋伸介さんは「件数は予想以上に多い。電池を飲み込んだ場合、2時間くらいで取り出さないと、食道の粘膜などを傷つけてしまうので、時間との勝負になります」と指摘します。

nyu171228.8.jpg東京慈恵会医科大学小児外科医 大橋伸介さん
そのうえで、「飲み込んだ可能性がある場合はX線写真を撮ればすぐにわかるので、設備を備えた大きな病院を受診してほしい」と話しています。
実家に帰ったらボタン電池が不用意に取り出せるようになっていないか、新しいボタン電池が子どもの手の届くところに置かれていないかチェックしましょう。


<風呂場で溺死 残り湯は捨てて!>
続いては、小児科の専門家が最も心配する事故の1つ、お風呂場での溺死です。危険度が高いのは、歩き始めた生後10か月から1歳くらいの子どもで、毎年のように事故は起きています。

nyu171228.9.jpgポイントは浴槽の高さと残り湯です。最近のお風呂は、高齢者がまたぎやすいように、浴槽の高さが低い場合も多く、子どもの事故に詳しい小児科医の山中龍宏さんは、実家でも注意が必要だと訴えています。

nyu171228.10.jpg小児科医 山中龍宏さん
「1歳の子の身長が約75センチくらいなので、50センチ以下ですと簡単に乗り越えられて危険です。そして、鼻と口を覆うほどの残り湯があれば、赤ちゃんはおぼれてしまいます。大人が話に夢中になっている間に赤ちゃんが1人で風呂場に行き、重大な事故につながりかねません」
対策としては、子どもが滞在する間だけでも、風呂の残り湯は捨ててもらうこと。さらに、鍵をかけるなど子どもが1人で風呂場に入れないように工夫してください。


<実家での車庫入れ事故にも注意>
楽しい帰省にするために、車にはさらに注意が必要です。祖父母の車に乗る際にも、チャイルドシートが必要なことはもちろんですが、家に着いてからも注意は必要です。

nyu171228.11.jpg自宅で車庫入れや車を出す際に、祖父母や親の車にはねられ、孫やわが子を死なせてしまう事故が毎年のように起こっています。
ことし2月には、静岡県掛川市で、自宅の駐車場で1歳の男の子が祖父の運転する車にひかれて、死亡しました。祖父が自宅の敷地内で、車をバックしようとした際に後ろにいた子どもに気付かなかったと見られています。
子どもの防犯や交通事故を研究しているセコムIS研究所の舟生岳夫さんは、こう指摘します。
「共通点は、『ここにはもういないはず』という思い込みで、車の前や後ろに子どもがいることに気付かないまま車を動かしてしまったということ。運転席から小さな子どもは見えにくい。死角が多いんです」


<子どもを先に降ろさないで>
対策には、子どもの居場所を「目視」で確認する癖を付けるとともに、車の乗り降りの順番を改めることが効果的だと言います。
「車庫入れするのに先に子どもを降ろす人が多いですが、これは危険です。車を止めて、大人が先に降りてから、子どもを降ろすようにしましょう。車庫から車を出す場合も同様です。できない場合は、車を動かす前に、子どもが安全な場所にいるか、必ず子どもの居場所を『目視』で確認しましょう」
同じように年末年始、多くの人でにぎわう商業施設の駐車場でも、子どもだけ先に車から降ろさないよう注意が必要です。


<目を離さないことは不可能 事故起きない環境作りを>
帰省するといつもは気が張っている親たちも緊張の糸がほどけ、親や親戚とのおしゃべりに夢中になって、大人は子どもから目を離しがちです。
子どもの事故を長年研究している山中龍宏医師は、「実家は、ふだんから子どもに事故が起こらないよう整えている自宅の環境とは大きく異なっています。帰省先でずっと目を離さずに子どもを見守ることは不可能です。子どもの見守り役を30分おきに決めておく、安全をチェックした子どもの遊び場所を決めるなど事前に事故の起きない環境を整えてほしい」と呼びかけています。

投稿者:野町かずみ | 投稿時間:17時10分

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