2017年11月20日 (月)絵本で防ぐ気道異物事故
※2017年10月31日にNHK東海NewsWebに掲載されました。
津市の耳鼻咽喉科の医師が企画、監修した色鮮やかなかわいらしい絵本が、11月1日に発行されました。
テーマは、幼い子どもが食べ物などをのどや気管支に詰まらせる「気道異物事故」です。
絵本に託した思いを名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。
<絵本「つぶっこちゃん」>
「もりのおくで つぶっこちゃんたちが うたっています ちびっこ つぶっこ
つるつるかりり ポリリンカリカリ おいしいおとを ちいさなおくばで ならしておくれ」
リズミカルな文章で始まる、この物語。
妖精の「つぶっこちゃん」たちが、幼い子どもたちのようすを見守っています。
男の子がトマトを丸ごと食べようとした、そのとき!
「ペチン! アタック プチトマト おくちに まるごと いれちゃだめ! のどにつまったらたいへんよ!」
「ちいさな こどもに ひとくふう カット カット はんぶんカット」
絵本の中の妖精は、のどに詰まらせないように、小さな子どもには、半分に切って食べさせるよう促します。
<絵本の企画監修は津市の耳鼻咽喉科医>
絵本を企画、監修した津市の耳鼻咽喉科医・坂井田麻祐子さんです。
坂井田さんは、大学病院に勤めていたとき、食べ物が気管支に詰まった子どもの緊急手術にあたった経験があります。
<子どもの窒息事故5年間で103件>
食べ物によって子どもが窒息し死亡する事故は、消費者庁の調査で平成26年までの5年間に103件報告されています。
坂井田さんは、3人の娘を育てる中でも、身近な食べ物で起こる「気道異物事故」を防ぐ大切さを感じてきました。
坂井田さんは「幼稚園などの行事で、節分の豆まきの時に豆をたくさんの子どもたちと、わいわいやりながら食べるような行事があったりとか、お祭りにあめ玉を配られていたりとか、気道異物の原因として、わりと代表的な食べ物が子どもたちに配布される現状を見たりしていると、これはあまり知られていないなと実感する」と話しています。
<事故の予防を訴える>
坂井田さんは、幼稚園の先生や保護者などが集まる場に出向き、気道異物事故の予防を訴え続けてきました。
<絵本画家に制作を依頼>
そして、より多くの人にその危険性を知ってもらうため、津市の絵本作家、つつみあれいさんに絵本の制作を依頼し、半年かけて完成させました。
<豆類が気管支に入る危険性も>
絵本の中で坂井田さんは、のどに食べ物を詰まらせる事故に加え、ピーナッツなどの豆類が誤って気管支に入る危険性も盛り込みました。
坂井田さんは「豆類は口の中でかみ砕いて小さなかけら状になったものを吸い込んでしまって、気管支に詰まらせてしまうという事故が多いんです」と話しています。
絵本に出てくる、男の子がピーナッツが入ったチョコレートを食べる場面。
犬の鳴き声に驚き、ピーナッツのかけらが、誤って気管支に入ってしまいます。
お母さんが、慌てて背中を叩きます。
小さなかけらが、気管支に入り込んでいく様子を忠実に描くことで、その危険性や怖さを、印象づけようとしています。
坂井田さんは「奥まで入っているので、叩いても出ないんですよね。だから全身麻酔で手術をしないと助からない。そのあたりを分かってもらえたら」と話しています。
絵本では、節分の日も食べるのは固い豆ではなく、ご飯と炊いた柔らかい豆がいいと呼びかけます。
「まぁるいものと つぶのもの つまるとあぶない きをつけて かみかみ もぐもぐ よくかんで」
<絵本に託す思い>
命に関わる気道異物事故から子どもたちを守りたい。
坂井田さんは、その思いを絵本に託しています。
坂井田さんは「知識を持っていれば、子どもに与えるときに、ちょっと一工夫したりとか、危ないと知っている物は与えないということで、事故の予防はできますので。子どもさんに関わるすべての方々に読んでいただければと思います」と話しています。
<豆類は3歳くらいまで与えない>
坂井田さんによりますと、奥歯でしっかりすりつぶせるようになる3歳くらいまでは、豆類は与えないでほしいということです。
また、お餅はよく知られていますが、パンやカステラのように、もそもそパサパサした食べ物も、のどに詰まらせてしまうことがあるということで、小さくしてからあげてほしいということです。
そして、絵本の中にあったミニトマトやぶどうのように、つるっとした丸いものは、うっかり飲み込みやすいため、しっかりかめるように「半分にカット」することが大切です。
この絵本「つぶっこちゃん」は、インターネットや全国の書店で購入できるということです。
投稿者:松岡康子 | 投稿時間:15時42分