2017年05月25日 (木)学習机 今こんな風になっています


※2017年4月20日にNHK WEB特集に掲載されました。

小学校入学のお祝いに学習机!自分だけの机が手に入り、うれしかった方、多いのではないでしょうか。しかし、時代は移り変わります。
日本オフィス家具協会の調査では学習机を新入学時に購入する新1年生は年々少なくなっていて去年、48.7%です。
子どもたちはどこで勉強しているのでしょうか?

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<机の代わりは…>
都内に住む北田真理さんの家でも小学校に入学したばかりの娘は学習机で勉強をしていません。宿題をするために向かうのは母親がいるリビングです。ワークブックを持って家族が食事するキッチンカウンターの席に座ります。
カウンターの向こうでは北田さんが食事の準備をします。

living170420.2.jpg大学の講師としてフルタイムで働いている北田さんにとって1日の中で、子どもと過ごせる時間は限られているため、子ども部屋でなくリビングの一角で勉強させることにしたそうです。
さらにリビングの壁にはホワイトボードを準備し、家事の合間などにこれを使って勉強を教えていました。

living170420.3.jpg北田さんは「私も働いているため子どもと過ごせる時間が限られています。でもリビングでの学習なら、帰宅した夕方6時ごろから7時半までの時間に家事や食事の支度をしながら子どもとのコミュニケーションが取れるんです」と話していました。


<街では?中学生は?>
街で下校中の新1年生の親に聞いてみても「親が宿題をみる必要があるのでリビングのダイニングテーブルで学習させています」とか、「小学5年生の兄と2人でリビングで勉強しています。家族で一緒に勉強するという形がいちばんだと思うので、今後も個室は与えず、
学習机を買う予定もありません」などと話していました。

ベネッセ教育総合研究所の調査でもリビング学習の広がりが伺えます。リビング学習をしている割合は、小学4年生で9割近く、さらに中学2年生でも6割以上にのぼりました。

living170420.4.jpgベネッセ教育総合研究所初等中等教育研究室邵勤風室長はその背景について「親子のつながりが密になっていて、子どもがどのように勉強しているのかを把握したいという親の思いもあるのでは」
と話していました。


<学習机は時代とともに>
学習机が登場したのは、今からおよそ60年前、高度経済成長期でした。住宅の欧米化が進み、子ども専用の部屋ができ、そこに学習用の机を置くようになったのです。1962年に登場した初代の学習机は、オフィス用の机を高さが調節できるようにして子ども向けに売り出した簡素なものでした。

living170420.5.jpgその後、学習机は、新入学のお祝いに欠かせないものとして定着し、70年代には、「温度計」「万年カレンダー」、「電動鉛筆削り用のコンセント」などさまざまな機能が付いた「デラックス机」が主流になってきます。各メーカーが競うように付属品を取り付けたのです。

living170420.6.jpgその後80年代は子どもの好きなキャラクターをあしらったものが人気に、さらに90年代後半には、デスクトップの大きなパソコンを置くことができる学習机が販売されました。


<今の学習机はコンパクト&シンプル>
しかし今、リビング学習の広がりを受け、各メーカーはリビングにも置ける学習机の開発に力を入れています。先月千葉県で開かれた学習机のフェアでは、かつてと違いコンパクトでシンプルな机が主流になっていました。
例えばリビングに置いても場所を取らない奥行きが45センチの机。

living170420.7.jpgさらに親が横に座って、
勉強を教えられるスペースを設けた机もありました。
一方、学習机を買わない人に人気なのがランドセルや教科書など学用品が収まるラックです。机メーカーもこのラックをきっかけに必要になってから、机や棚を買い足ししてもらう、いわば机の「バラ売り」作戦も進めていました。


<子どもの様子もよくわかる>
リビング用の学習机を利用している吉野則子さんのお宅を見せてもらうと、オープンになったキッチンカウンターの向かいに、壁向きに学習机を置いていました。学習机はダイニングテーブルや本棚の家具と色合いが同じでリビングの一部として部屋に溶け込んでいる印象です。

この机で勉強するのは小学3年生の長女、弘子ちゃんで、学校から帰ると早速勉強を始めました。解けない問題も、お母さんがすぐそばにあるダイニングテーブルの椅子に座って教えてくれます。

living170420.8.jpg弘子ちゃんは「ここに机があるとわからないところがでてきた時に、
お母さんにすぐ教えてもらえるところがいいです」と話してくれました。
一方、吉野さんは、「本を読む時間も勉強をする時間も共有することできる。さらに勉強の合間に自然に会話が生まれるので、学校での様子がよくわかります」と話していました。

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<リビング学習=学力は向上?>
ところでリビング学習をすると勉強ができるようになるのか、
保護者にとっては気になるところだと思います。

ベネッセ教育総合研究所の邵室長に聞いたところ、「子どもがリビングで学習するだけで学力が向上するのではない。親が近くにいるためわからない問題をすぐに教えることができたり、親子の会話が増えて学校でのつまずきをつかめたり。そうした結果が学力向上につながることもあるのではないか」と話していました。リビングにいることそのものよりも、やはり親のかかわり方が大切だという指摘です。
また親の立場からすると、子どもが早い時期から携帯やスマホを持つようになり、個室で勉強するようになると様子がわからず不安だという思いもあります。リビング学習の背景には子どもの様子がつかめるという親側の安心感もあるのではないかと感じました。

ランドセルと並んで、長く子どもの近くにあるものが学習机。取材をするとどの世代の人も学習机にさまざまな思い出がありました。
時代とともにこれからどんな変化を遂げていくのでしょうか。

投稿者:中川 早織 | 投稿時間:10時28分

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