2016年02月03日 (水)ピラミッド5段でも重大事故


規制の動きが進む組み体操で、大阪市や愛知県では、ピラミッドは5段以下、タワーは3段以下にするよう求めていますが、その段数であっても重大事故が起きています。
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【組み体操の練習中に】
去年9月、千葉県で組み体操の練習中に中学3年生の男の子が大ケガをしました。
5段ピラミッドの上から2段目から転落したのです。
男の子は「練習での失敗率が80%くらいでした。地震みたいに揺れていて、バランスが崩れて落ちてしまいました」と振り返ります。
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【思わぬ大けが】
診察の結果、右の太ももの骨を折って、手術を受けました。1年間は歩くのにも装具が必要で、走ることはできません。
20160624_5dan4.jpg男の子は「1年という長い間を通して治していかなければならないのは嫌ですし、組み体操は怖いという思いが今できました」と話します。
母親は「まさかこんなに大ケガになるとは思いませんでした。元の体に戻してほしいという思いが一番です。本当に人生が変わってしまうので、組み体操はやめてほしい」と訴えています。20160624_5dan6.jpg

【事故の実態は】
男の子が治療を受けた松戸市立病院救命救急センターの庄古知久センター長が、組み体操でケガをして、この病院の救命救急センターを受診した子どもを調べたところ、4年間に28人にのぼっていました。
事故の原因として最も多かったのは「タワー」で18件、次が「ピラミッド」で8件でした。
20160624_5dan7.jpgことしは、受診した5人のうち3人が、頭蓋内で出血するなど大けがを負っています。
庄古医師は「組み体操による事故は、軽傷のものであっても、首や腰、一歩間違えれば脊髄損傷や重大な後遺症を残すようなケガにつながりかねないものが多数見受けられます。高さ2メートルあれば、お子さんは重傷を負う可能性がありますので、高さ制限、段数制限だけでは、事故をなくすことができません」と話します。
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【組み体操対策を】
組み体操の危険性について警鐘を鳴らしてきた名古屋大学大学院の内田良准教授は、スポーツの現場で事故が後を絶たないことから、被害者の家族とともに事故の情報を集め、対策を打ち出すための協議会を、去年10月に作りました。
文部科学大臣に組み体操の規制を求める署名活動も始めています。

20160624_5dan11.jpg「事故の背景に、ケガはつきものだ、スポーツ中だからつきものだということで、それで全部終わってしまっている。でも被害者の声を集めて、どういう事故が起きているか調べて、問題提起していく、そういう活動をしていきたいと思っています」と話します。20160624_5dan12.jpg

【子どもたちの安全を】
毎年組み体操で、8000人以上の子供がけがをし、そのうち4分の1は骨折という深刻な事態が続いています。子どもたちの安全を守るために、伝統にとらわれることなく、運動会や体育祭の内容の見直すことが求められています。
【教師は事故を重く受け止めて】
事故から5カ月たった2月、ピラミッドから転落した男の子の母親は、今の現状について思いを寄せてくれました。
「今もけがやその後遺症、合併症に悩み続ける現実から、目をそらすことができない毎日に苦しんでいます。苦しみを背負うのは、けがをした本人と家族だけ。本当にやりきれないです。教育現場に携わる人は、たった一度の転落で、これほど不自由な生活を強いられること、これからの希望を絶たれてしまうことを、もっと重く受け止めるべきだと思います。」



 

投稿者:松岡康子 | 投稿時間:17時27分

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