2015年07月15日 (水)"春の憂うつ"PTA どう臨む?


子どもたちが入学や進級など、新たな門出に心弾ませる春。一方で、保護者の中には「この時期がゆううつ」と考える人もいます。その理由は「PTA」。PTAについてどのような思いを抱く人が多いのか、また、どうすればみんなが納得して参加できるようになるのか、取材しました。pta1.jpg

【PTAへのイメージは?】
ことし4月、都内で開かれた小学校の入学式で、新入生の保護者の皆さんにPTAに対するイメージを聞いてみました。
「忙しいそう、大変そうだというイメージでできれば参加したくない」
「働いているので、平日、休みをとって学校に行かなければいけないのではないかということを一番心配しています」pta2.jpg皆さん、あまり良い印象を持っていないようです。

【不安や疑問も】
PTAの活動は、入学式や運動会といった学校のイベントの手伝い、
登下校の見守りなど防犯・安全活動、備品を購入するためのベルマーク集めなど多岐にのぼります。しかし、今、こうした活動や組織のあり方に不安や疑問の声も出ています。
インターネットでツイッターやブログを検索してみるとさまざまな意見が書かれています。pta3.jpg例えば、「マニュアルもない、引き継ぎ書もあるようなないような」「実態が分からない」など、活動の内容や負担感が事前に分からないという不安。
委員のなり手がいないとくじ引きやじゃんけんで決めたり、時にはいない人に割り当てられる欠席裁判になったりすることも。pta5.jpg都内でフルタイムで働くある女性は、3年連続、くじ引きでPTAの委員を任されました。女性のスケジュール帳を見せてもらうと至るところにPTAの予定。pta7.jpg日中に開かれる会合に参加するため1年に15回も有給休暇を取得しました。しかし、誰のため、何のために行われているのかよく分からない活動が多かったと言います。
女性は「集まることに意義がある、『みんなで話し合って決定したよね』という決定事項するために集まっていた感じです。一年間、何事もなく終わればいいかな、それしか考えていなかったです」と話していました。pta8.jpg【なぜ敬遠される?】
PTAが敬遠される理由の一つは、あらかじめ仕事の具体的な内容や、どの程度大変かが分からない、ということがあります。共働きの家族が増える中、日中の活動が多いPTAに負担感を抱く人は多く、なり手が決まらないという悪循環も生まれています。さらに、PTAは企業などと違って、多くが1年ごとに役員や委員を決め動いているので、長期的な視点が持ちにくいという特徴もあります。pta9.jpgPTAのあり方や内容に疑問を示して自分の負担を増やすよりも、先ほどの女性のように「1年なんとか波風たてずに乗り切ろう」という気持ちになりがちです。
PTA活動に参加した経験のある東京大学の瀬地山角教授は「中長期的にデザインする人が誰もいないことが一番の問題で、3年後のPTAをどうするべきかというのは誰も考えていないわけです。しかも前例を踏襲することが一番コストがかからない構造になっているのが、最も大きな問題」と指摘していました。pta10.jpg【立候補続出のPTA?】
こうしたPTAを、より参加しやすい形に変えようとする動きが出てきています。
東京・大田区にある雪谷小学校でPTAの委員決めの様子を見せてもらいました。
まず、役員の女性が、委員の仕事を説明します。ポイントは、その情報の詳しさです。例えば、学級代表委員については「クラスの保護者のまとめ役、当番表の作成ですね、校庭開放、パトロールなど、いずれも年1回」と1年間の仕事内容、集まる頻度などを明らかにします。pta12.jpgその上で、「図書委員になりたい人はいますか」などと問いかけると、複数の人が手を挙げ、立候補するケースも出てきました。手を挙げた保護者は「仕事の内容がわかると立候補しようという気持ちになります」とか、「最初に仕事が分かっていると、自分の予定が立てやすいです」などと話していました。pta14.jpg【改革のポイントは?】
この学校で委員に立候補する人が現れるほどになった理由は、2年前に始めた改革にあります。当時の役員9人のうち6人がフルタイムで働く母親。頻繁に開かれる日中の会議など、今までのやり方では活動が続かないと活動に乗り出したのです。
PTA会長の平川理恵さんは「PTA活動そのものが組織疲労を起こしていた。なんだか分からない中で、ずっと行われてきたが、改めて精査すべきだと思い改革を始めました」と振り返りました。pta16.jpg改革の柱の一つは「業務の見える化」です。それぞれの仕事内容やスケジュールを洗い出して、いつ、何をするのかマニュアルを作り、誰にでも分かるようにしました。pta17.jpgもう一つは「業務のスリム化」です。負担だった業務を見直し、子どもと直接関係のない業務、例えば、地域のお祭りやコーラス、ママさんバレーの手伝いなどを廃止しました。pta18.jpgさらに会議の回数も半分以下に減らしました。
改革メンバーの1人で、役員を務める村上好さんは、働きながら3人の子どもを育てています。pta20.jpg以前も役員の経験があり、多い時は週4回、学校に行くこともありました。しかし、今、会合は月に1回あるかないか。以前集まって行っていた活動報告などはインターネット上で共有するようにしたためです。PTAのために会社を休むことも減り、活動に前向きになったそうです。村上さんは「PTA活動をすると楽しいですし、学校が身近に感じられるという利点もあります。みんなが一緒になってみんなで子育てをしていく、それがPTA活動の醍醐味だと思います」と話していました。pta22.jpg【取材後記】
PTAが作られたのは戦後まもない昭和20年代。GHQが教育の民主化の一環として、学校に家庭を参加させようと始めたのがきっかけでした。
その後、核家族化や少子化が進んだり、働く女性が増えたりと社会が大きく変わっていく一方、PTAの組織や活動は戦後70年、あまり変わることなく続いてきました。
今回、取材をして驚いたのは、働く女性が増え、子育てに積極的な「イクメン」も現れているのに、多くの学校でPTAの運営が女性だけで進められていること。また、企業や組織であれば当然のように行われている業務の引き継ぎや効率化が、これまでされてこなかったことです。

PTAはあくまで「任意加入の団体」で、本来は入退会が自由だとされています。しかし、多くの学校でPTAはあり続け、「子ども1人につき、1回は何らかの委員、役員を担う」など“暗黙の了解”ができているのが現実です。
「PTAが必要か、不要か」という議論もありますが、今回は、今あるPTAをどうしたら意義のある活動にできるかという点に注目して取材をしました。

子どものために何かしてあげたい、と思う保護者は多いと思います。PTA活動が本格的に始まる時期、「波風立てずに乗り切る」こともいいですが、、、社会の変化に合わせて保護者が運営しやすい形に変えていけば、より親しみを感じられる活動になるのではないかと感じました。

投稿者:清有美子 | 投稿時間:08時05分

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